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国税関係

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元国税職員による税務調査の記事や税務職員になるための情報を掲載しています。
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2020年11月の記事一覧

税務調査の話 その1 〜調査官のノルマ〜

元国税職員による税務調査のあれこれを記事にしていきます。初回は調査官のノルマについて。 ノルマはあるのか結論から言うとありません。 ただし、目標数値があるので、これを実質的にノルマと考える職員も多いと思います。 目標数値は、国税局の主務課(法人課税課、個人課税課等)が定め、各税務署に割り当てていきます。法人課税部門でいうと、調査件数、増差所得、不正所得、不正発見割合等を目標管理しており、主に対前年比でこれらの数値を算定しています。 なお、増差所得とは、申告所得額に対し

税務調査の話 その2 〜調査の種類①〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第2回は、調査の種類を整理します。 前回の記事 強制力による分類意外に思われるかもしれませんが、税務調査には、理由もなく拒否できるという意味での純粋な任意調査はありません。全て強制力を伴います。 間接強制調査 国税通則法第74条の2等に規定される質問検査権の行使による調査で、ほとんどの税務調査はこちらです。詳しく知りたい方は↓を参照 一般的には任意調査と呼ばれますが、同法第128条第2号により、調査を忌避した場合は、1年以下の懲役

税務調査の話 その3 〜調査の種類②〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第3回は、調査の種類の整理の続きです。 前回の記事 今回は調査の段階による分類です。 納税者の事業所に臨場して行う調査を実地調査といいます。その前段階として行う調査を準備調査といいます。 準備調査主に提出された確定申告書とその添付書類である決算書に基づき調査を行います。前回の記事でご説明した内観調査・外観調査も準備調査に含まれます。ここでは、書面による準備調査をご説明します。 申告書審理 申告書に誤りがないかチェックします。提出さ

税務調査の話 その4 〜調査の種類③〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第4回も調査の種類の整理の続きです。 前回の記事 今回は取引先の調査です。 反面調査調査の対象となっている納税者から見た売上先、仕入先、外注先等に臨場し、取引の実在性(除外、架空計上がないか)、取引金額の整合性(一部除外、水増しがないか)について確認する調査を反面調査といいます。 仕入や外注費については、帳簿に記載されているので容易に反面調査先の把握が可能ですが、売上については、除外したものは帳簿に記載されていないので、事前に資料せ

税務調査の話 その5 〜調査選定〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第5回は、どのような法人が調査対象として選ばれるのかについて記事にします。 これまでの記事 ※本記事で登場する用語については↑の記事も併せてご参照ください。 脱税してそうなとこ選ぶんでしょ?脱税をしていそうな者を選ぶというのは、皆さんが想像しているところだと思います。ただ、税務署が把握している情報だけでは、明らかに怪しいという者はかなり少ないです。そういった調査だけなら、第1回の記事に書いたような、是認続きで号泣してしまう職員は出ない

税務調査の話 その6 〜国税総合管理システム〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回は、国税総合管理システム(KSK)の現状と展望を記事にします。 これまでの記事 国税総合管理システム(KSK)とは全国の納税者が提出した確定申告書については、全てデータ化され、一つのシステムに集約されます。このシステムを国税総合管理システム(KSK)といいます。 以下、以前の記事にも書きましたので、既にお読みいただいている方は、次の項目まで読み飛ばしてください。 申告書の形式的な誤りについては、システムに入力した時点でエラーとし

税務調査の話 その7 〜非違事項別解説① 売掛金〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回から非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。いよいよ筆者の経験をお披露目するシリーズとなります。初回は売掛金について。 これまでの記事(税務調査の話その○) 売掛金の調査は基本中の基本駆け出しの国税職員(事務官)が最初に見方を覚えるのが売掛金の計上漏れです。 売上は、商品を引渡した時やサービスを提供したときなどに計上することなになっています。請求書をお客さんに送付しているかどうかは関係ありません。 小規模企

税務調査の話 その8 〜非違事項別解説② 現金売上の除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである売上除外のうち、現金売上の除外を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 売上除外とは売上を意図的に帳簿上計上しないことを売上除外といいます。ただし、単に売上を計上しないだけでは、複式簿記を前提にすると、相手勘定の現金や預金(現預金)の残高と合わなくなってしまので、何らかの細工をしなければなりません。なお、売掛金や受取手形はいず

税務調査の話 その9 〜非違事項別解説③ 振込売上の除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである売上除外のうち、振込売上の除外を取り上げます。 今回の記事は長いですが、割と力を入れて書いたので最後までお読みいただけると嬉しいです。読むのが大変という方は、”筆者が経験した事案"という項目だけでもお読み下さい。 これまでの記事(税務調査の話その○) 振込売上の除外売上代金の回収手段として最も多いのが銀行振込です。社歴の浅い企業だと100

【公務員試験】国税専門官になろう! その1 〜出世と年収〜

このnoteをご覧になっている方の中には国税専門官志望の方もいると思うので、ここで一度国税専門官の魅力、職場の実態、試験内容等についてまとめてみたいと思います。 はじめに筆者は、国税専門官採用試験に合格し、3年9か月にわたって税務職員として勤務しました。その間、税務大学校専科研修をトップクラス(金時計)で卒業し、法人調査事績もなかなか良かったと思っています。この立場から発信している人は滅多にいないでしょうし、他のOBと見え方も違うはずです。他の方の記事と併せて参考にしてくだ

【公務員試験】国税専門官になろう! その2 〜仕事・事務系統〜

国税専門官を考えている方向けの記事です。前回は出世と年収について記事にしました。 今回は、仕事内容や事務系統についてご説明します。 国税専門官とは主に以下のお仕事を行う立場を総称して国税専門官といいます。 事務系統上記は職務(作業)に着目した分類です。実際には、職員は専門分野別の事務系統に分かれます。 法人課税 文字どおり法人(主に会社)の調査等に従事します。税目でいうと、法人税、消費税及び源泉所得税がメインになります。このほか、酒税や揮発油税・航空機燃料税等の間接税

【公務員試験】国税専門官になろう! その3 〜職場の雰囲気・キャリアとノンキャリア〜

国税専門官を考えている方向けの記事ですが、税務署や国税組織に興味があるという人もお読みいただければと思います。 前回は仕事の内容等をご紹介しました。 今回は、職場の雰囲気です。なろう!とは言いつつ、今回はネガティブな話が多いです…。 採用区分国税組織には、大卒対象の国税専門官試験採用者だけではなく、国家総合職で財務省に採用された人(省キャリ)及び国税庁に採用された人(庁キャリ)や高卒区分の税務職員採用試験で採用された人(普通科)がいます。 普通科とは税務大学校普通科課

【公務員試験】国税専門官になろう! その4 〜試験対策・その他〜

国税専門官志望者向けの記事もいったん最終回です。締め括りとして、試験対策のおさらいとこれまでの記事で書き漏らした点を取り上げます。 前回の記事 試験対策今更筆者が一から書くよりも、ビジネスとしてやられてる他サイトの方が質も量も圧倒的に上なので、そちらをご覧いただいた方が良いと思っています。 本稿では、筆者が目を通して、信頼できると思ったサイトをご紹介して、若干補足します。 こちらを熟読すれば下手な予備校講師より詳しくなれます(笑) かつて筆者はLECで公務員試験講座の

国税審判官になろう! 弁護士・公認会計士・税理士向け ~書類選考対策・面接対策~

筆者は、公募されている任期付の国税審判官の採用内定をいただいたことがあります。結局、内定は辞退しましたが、今でもやってみたかったなと思います。 そこで、国税審判官の仕事内容、処遇(年収)、採用されるには?といった点を記事にまとめました。書類選考対策(有料)・面接対策(無料)にもなり、また、どの程度の職務経歴なら合格できるのかというレベル感も分かる内容になっているかと思います。 国税審判官の年収(任期付の場合)皆さんが一番興味があると思うのは年収だと思うので、まずここから。

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