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税務調査の話 その6 〜国税総合管理システム〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回は、国税総合管理システム(KSK)の現状と展望を記事にします。

これまでの記事


国税総合管理システム(KSK)とは

全国の納税者が提出した確定申告書については、全てデータ化され、一つのシステムに集約されます。このシステムを国税総合管理システム(KSK)といいます。

以下、以前の記事にも書きましたので、既にお読みいただいている方は、次の項目まで読み飛ばしてください。

申告書の形式的な誤りについては、システムに入力した時点でエラーとして吐き出され、職員が目視で確認し、速やかに是正されます(机上処理)。また、内容の確認が必要で、多額の修正申告が見込まれる場合は実地調査が行われます。

このほか、調査選定にも活用されます。例えば、勘定科目内訳書に記載されている外注先について、KSKで検索し、当該外注先の課税事績と比較して、架空・水増しの当たりを付けます。

KSKの歴史

2001年に導入されましたので、およそ20年経ちます。筆者はこの数年後に国税局に採用されたので、黎明期から知っていますが、導入当初は専用端末からアクセスする方式でした。なので、他の職員が使っていると自分が使えず不便でした。

また、ユーザーインターフェース(UI)が最悪で、入力エラーが多発、しかも何を修正すれば良いのかも分かりにくい設計でした。

このシステムは、課税事績を管理しているので、修正申告等についても入力する必要があるんですね。調査が終わると、決議書という決裁文書を作成するのですが、このKSKに入力して作成します。なので、決裁文書を作るのに大変イライラさせられました。

筆者が退職した2007年頃には、各職員の端末からアクセスが可能となり、UIもだいぶ改善されて使い勝手が良くなりました。今はもっと使いやすいのではないかと思います。現役職員としては不満も多いでしょうが。

ちなみに国税庁が開発委託をしたのは文房具屋さんで、しかも随意契約でした。莫大な費用を投じてこんなお粗末なシステムなのかと内外から批判されていました。

余談

KSKでは、全納税者の課税事績を見ることが可能です。それこそ芸能人から政治家まで職員であれば誰でも。

筆者は税務署1年目のとき、やる気を出して調査先の取引先の課税事績を検索しまくっていたら、副署長室に呼び出されてしまいました。

当時は、旧社会保険庁の年金記録覗き見問題があったときです。大量の懲戒処分者を出し、社会保険庁は解体、日本年金機構として出直すことになったきっかけでもあります。

このため、筆者も興味本位で除き見しているのではないかと疑われてしまいました。幸いなことに(?)検索していたのは一般人だけでしたので、特段処分はありませんでした。当たり前ですけど…。

ただ、副署長はパンチパーマの強面だったので、しばらくトラウマになりましたね(笑)

念のため、調査と関係のない有名人の課税事績は見たことないですよ。

今後のKSK

今週号(11月9日号)の『税務通信』にKSKが次世代型に移行されるという記事がありました。

例えば,過去の申告・調査事績,法定・法定外資料の情報のほか,民間情報機関や外国政府から入手する情報などをBAツール(蓄積された情報を分析して将来を予測・実施するツール)等を用いた上で調査対象者の選定を行うことにより,業種間や地域間等における調査対象者の比較・分析などといった様々なバリエーションで,より細やか,柔軟に調査対象者の選定が行えるよう検討が進められているようだ。

KSKシステムの次世代化に伴うこれら施策は,令和8事務年度からの実施が想定されているという

これにより脱税をより見つけやすくなるのでしょうね。ちょっとこれだけでは心許ない気もしますが、将来的には機械学習により、脱税スコアを算定して、一定以上のスコアの者だけを調査するということになるのかもしれません。

ちなみに、この『税務通信』の記事に法人部門の職員は、個人の課税事績は見られないといった記述がありますが、筆者がいたときは個人も見られたので(?)です。

おわりに

今回はあまり知られていない話を取り上げてみました。次回もお楽しみに!

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