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シリーズ『四軒長屋』

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四軒長屋に住む、伊織と舞の姉妹。そして友人の荒川和三による、不可思議でちょっぴり怖い一話完結の短編小説シリーズ。
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記事一覧

『赤子』

『赤子』

 舞は泣いていた。

「ウェディングドレス、綺麗だったね」

「さっきも聞いたわ」

「あの子、本当に幸せそうだったね」

「それも何回も聞いたわ」

 舞と伊織は結婚式場から二次会に出席するため、一旦家へと帰るタクシーのなかにいた。
 今日は舞の幼馴染みの結婚式だった。

 舞とその幼馴染みはとても仲のよい姉妹のように育った。姉妹というよりも、むしろ双子と言った方が合っているかもしれない。

 

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『その先に見えるもの』

『その先に見えるもの』

 荒川和三は山間にある老舗の温泉旅館に来ていた。といっても旅行に来ている訳ではない。仕事でだ。

 荒川は土産物の卸売りをしていた。
 しかし彼にとってそれはあくまで腰掛けで、自分ではウッドカービング作家だと思っている。なかでもバードカービングの腕前は中々のものだと自負していた。

 その緻密な造形と彩色は仲間の作家達からも一目置かれていた。しかし、手間と時間がかけられたそれらの作品は値段もそれな

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『割れたグラス』

『割れたグラス』

「やっぱり枯れちゃったか。ごめん、見苦しいわね」

 その夜、彼女はそう言って観葉植物だったと思しき小ぶりの鉢植えを片付けはじめた。

 決して広いとは云えない部屋。そこには長屋の端だからこそ取り付けられたのか、表に出られるくらいのガラス戸と、それにともない一際大きな薄緑色のカーテンが掛けられていた。

 その布に身を寄せるように脇に追いやられた小さな木製のフラワースタンドは、どこか所在なさげで寂

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