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食材あれやこれや

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旬の食材や気になる食材を、いつもと少し違う視点で見てみたい。そんなエッセイ。
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結び湯葉

結び湯葉

神饌物の「御飾り昆布」を買いに乾物問屋へ久しぶりに出かけた。

「おはようございまあす」

「おう、事務所入ってくれぇ、暑いけど」

暑い?意味がよく分からなかったが、中から声がしたのでドアを開けて事務所に入る。

確かに暑い。というか暑すぎる。見れば石油ファンヒーターがついている。どうりで暑いわけだ。
梅雨の早朝は肌寒い日もあるが、今朝はファンヒーターをつけるほどではない。

「大将、あついね」

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味が落ちるとすぐわかる

味が落ちるとすぐわかる

先日、一本の電話がありました。
内容はこうです。

「このあいだ食べたうなぎの蒲焼きがとても美味しくて、孫にも食べさせたいので是非またお願いしたい」と。(ちょっと簡単ですが概ねこんな感じです)

おお、そうですか、そうですか。
それは大変うれしいかぎりです。
そう思っていただくために日々努力しているのです。
お口にあって何より。

ひととき、そんな幸せな時間をすごします。
ほんのひとときです。

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トマトをどう食べますか?

トマトをどう食べますか?

「あのう、トマトどうやって食べますう?」

そう唐突に友人に尋ねられたことがある。

「輪切りにしたトマトをソースとマヨネーズと砂糖を混ぜたものにつけて食べるよ。」

そう答えると友人はうげっと変な声をあげていた。

質問の真意は聞かなかったが、目玉焼きはソース派か醤油派か程度のことだったのだろう。

その時はそれ以上トマトの食べ方について話題は膨らまなかったように思う。

まあその友人のことはと

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春の宝石『桜鱒』

春の宝石『桜鱒』

「サクラマス」とは、

いつもは河川にすんでいる「ヤマメ」のうち、生存競争のなかで比較的、餌が取れない弱い個体が海へ下って、大型化し再び遡上してくるもの。などといわれています。

「桜鱒」が今、旬を迎えています。

市場では、本当のマスという意味で「本ます」という呼ばれかたもします。
4月から6月頃の遡上を目前に控えたこの時季は、エネルギーをたっぷり蓄えた状態、つまり「あぶら」の乗った状態で沿岸の

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魚へんに春というけれど

魚へんに春というけれど

魚へんに春と書いて「さわら」という魚がいます。
スーパーの鮮魚コーナーや、食卓でもしばしば見かけるポピュラーな魚です。

この「さわら」冬場は深場で暮らしていますが、春から初夏の産卵期にかけて沿岸部に寄ってくるため、漁獲量が増えます。当然お目にかかる機会も多くなります。例年だと…

というわけで「鰆」

春に産卵期をむかえる魚のご多分にもれず、味と言う意味での、旬は、11月から2月にかけての、やは

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