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トマトをどう食べますか?

「あのう、トマトどうやって食べますう?」

そう唐突に友人に尋ねられたことがある。

「輪切りにしたトマトをソースとマヨネーズと砂糖を混ぜたものにつけて食べるよ。」

そう答えると友人はうげっと変な声をあげていた。

質問の真意は聞かなかったが、目玉焼きはソース派か醤油派か程度のことだったのだろう。

その時はそれ以上トマトの食べ方について話題は膨らまなかったように思う。

まあその友人のことはともかく、先の特製ソースについて少し説明をすると、マヨネーズと砂糖は、ほぼ同じ割合でそこにウスターソースをロールケーキのコーヒークリームくらいの色になるまで入れて混ぜる。

ただそれだけ。

あまりソースを入れすぎないのがポイントで、結構どろっとさせて、砂糖は口のなかでジャリジャリするくらいがちょうどよい。

こうして文字にしてみると、少しうげっとなる気持ちが分からなくもない。


私の実家では昔からトマトを栽培していて出荷もしている。子供の頃はシーズンにもなると毎日のように食卓にトマトが出されたものだ。

今日も明日も明後日も…ほぼ毎日である。
そのトマトを美味しく大量に食べるための特製ソースなのだ。
どろっとしたソースに仕上げるのは、トマトの水分ですぐに水っぽくなってしまうからだ。
あらかじめ濃いめのものを作っておく。
このソースだと、ドレッシングやマヨネーズ以上に結構な量が食べられる。

ちなみに、この食べ方を誰かに説明して「美味しそう!やってみたい!」と言われたことは、ない。

それにしてもトマトという野菜は本当にいろいろな食べ方があるなと思う。

そのまま生で食べるにしても、いろいろなものをかけたりする。
塩 マヨネーズ ドレッシング オリーブオイル ウスターソース また醤油がメジャーな地域もある。

モッツァレラチーズとバジルの組み合わせは見た目にも鮮やかでいかにも美味しそうだし、スライスした玉ねぎと一緒にマリネ液に漬け込んで冷やして食べてもいい。

もちろん煮込み料理や、焼きトマトなんかも好きだし、変わったものでは天ぷらもある。これもなかなかいける。


ところで、日本人が野菜のなかで最もお金を使うのがトマトだそうだ。
キュウリと比べると約2倍くらいをトマトに使っている。

トマトを知らない人はごく少数派だと思うのだが、少しトマトの説明をしてみたい。

原産地は南アフリカのアンデス山脈高原地帯で、ナス科ナス属の植物。

畑で栽培する場合は、交配による品質の劣化を避けるためナスは勿論、ジャガイモの近くにも植えない方がなにかと良い。

栽培という意味での旬は、6月から8月なのだが原産地の気候と比べると高温多湿のこの時期はトマトにとってはちょっと苦手な季節。乾燥していた方が甘味も増して美味しくなるとされ、ハウス栽培では水分量もしっかりと管理されている。

一方、味の旬は初夏と秋の2回。個人的には10月のトマトが一番美味しいと思っている。

品種に関しては、大玉トマトなども細かく云えばいろいろあるのだけれど「桃太郎」という名前の品種が有名で栽培品種の約7割を占めている。
なぜ「桃太郎」かというと、みんなが知っている知名度が高い名前だからだそうだ。

他にも美味しい品種がたくさん栽培されていて、名前が素敵なのでいくつか紹介してみる。

アナ アリシア クラウディア ジーナ パトリシア ララなど、どれも主役もしくは準主役級のいかにも美しく、美味しそう?な名前だ。

大きさは、よく見る大玉、ミディトマト、ミニトマトの他にマイクロトマトという直径が5~7㎜位のものもある。
このマイクロトマトは小さくてもしっかりトマトの味がして美味しい。しかし名前とは反対にお値段はマクロなのでお料理のあしらいに使われることが多い。

トマトの色は赤色が定番だがバリエーションが結構あって、定番の赤の他にも黄に橙、茶、茶と緑のゼブラもある。
珍しいところだと、熟果なのに緑色のものや、白というかなりレアなものもある。

形も長細いスウィーティアやハート型のトマトベリーなど近年増えてきている。

栄養素としてはやはり「リコピン」が有名で、カロテノイドのなかでもリコピンの抗酸化作用はビタミンEの100倍以上と特に高い。

一方で、茎や葉、未熟果には「トマチン」という毒性のアルカロイド配糖体が含まれている。
緑色の未熟果はもったいないと思っても決して食べてはいけない。
まあ半致死量には100gくらいのトマトを30個以上は食べなくてはいけないらしいが、個人差もあるから食べないにこしたことはない。
同じアルカロイド配糖体としては、ジャガイモのソラニンやソラマメのビシンが代表的だ。

専門外なので詳しくはふれないが、トマチンには有用性も幾つか認められていて、実際に活用されている。
毒と薬は紙一重というやつだ。

というわけで、トマトの説明を軽くしてみたが、トマトひとつを挙げてもいろいろあって実に興味深い。身近な野菜にもそれぞれに物語があるものだ。


最後に先ほどの特製ソースにうげっとなった方のために、もうひとつオススメのトマトレシピを紹介しておこう。

これもいたって簡単。
まずは、食べる前日にトマト1個を用意する。
これを冷凍庫に入れて、カチカチに凍らせる。
当日になったら、冷凍庫から出して、上から水を少しかけてあげる。
すると、皮が簡単に剥けるので、この皮を剥いた凍ったトマトをそのままガリガリとすりおろす。
後は、オリーブオイルと塩を少々かけて、スプーンでいただく。以上。

簡単である。味付けはお好みでアレンジするとさらに楽しめる。暑い季節にぴったりの一品だ。

トマトに限らず世の中の事象はまさに多種多様で、三者三様、十人十色、百人百様、千差万別、そして十人十口なのだ。
食べ物の嗜好も人それぞれだし、またそれがとても良いと思う。

トマトに聞いたら異論はあるかもしれないが、トマトくらいは好きなように、自由に食べたいものだ。

あなたはどんなふうにトマトを食べているのだろうか?

私は、ソースとマヨネーズと砂糖を……もういいか(笑)


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