車に踏まれても潰れない、超絶硬い虫:その硬さの秘密を解き明かした研究
今回ご紹介する研究は、タイトルにある通り、車に踏み敷かれても、潰れない、死なない、めちゃくちゃ硬い虫のお話。
その名も"コブゴミムシダマシ"。読みづらいですねw。
この虫が、なぜこんなに硬いのか、その秘密は彼らの持つ羽の特殊な構造にあります。
その特殊な羽の構造は、自動車や航空産業で用いられる、工業用の接合材に利用できる可能性あり、実は大注目の虫です。
紹介論文
Toughening mechanisms of the elytra of the diabolical ironclad beetle
Nature volume 586, pages543–548(2020)
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2813-8
コブゴミムシダマシとは
コブゴミムシダマシ(Phloeodes diabolicus)は、主に北米の西海岸で見られる甲虫の一種です。
コブゴミムシダマシは、飛ぶ能力はないため、飛行して危険から逃れたりすることはできません。
しかし、この虫は、とても硬い翅(はね)を持ちます。
このとても硬い翅があるために、コブゴミムシダマシは車で踏み敷かれても潰れません。
また、飛べないけど、この硬い翅(はね)があるので、捕食者に噛み潰されたりすることがありません。
なので、飛べなくても、この自慢の硬い翅があるために、自然界の厳しい生存競争を生き延びることができます。
今回紹介する研究では、このめちゃくちゃ硬い羽の構造を明らかにし、その構造を模倣することで、強度が求められる工業製品の部品に応用しようとしています。
体重の約3万9000倍の力に耐える、硬い翅(はね)
今回の研究では、コブゴミムシダマシがなんと最大150ニュートン(体重の約3万9000倍)もの力に耐えることを明らかにしています。
またそれを可能する硬い翅(はね)の構造について、電子顕微鏡とCTスキャンによる観察で明らかにしています。
エビやカニなどの甲殻類は、鉱物(ミネラル)をたくさん含んだ甲羅に覆われているので、彼らの甲羅はとても硬いです。
ですが、コブゴミムシダマシの翅には、タンパク質がとても豊富ですが、実は鉱物はあまり多く含んでいません。
では、彼らの翅の硬さは一体何に起因しているのでしょう。
翅と翅のつなぎ目が、ジグソーパズル様であることが、硬さの秘密
コブゴミムシダマシの翅の中央部には、ジグソーパズルのピースのような形状でかみ合った接合部があります。
このジグソーパズルに似た形状の接合部が、羽にとてつもない強度をもたらしています。
翅と翅の"つなぎ"が、ジグソーパズルのようにがっちりと噛み合った構造をしているため、外部からとても強い圧力がかかっても、滅多なことでは変形しないのです。
今回の研究ではさらに、この翅のつなぎ目のジグソーパズル状構造を、カーボンファイバーで再現可能であることを示しています。
そして、その模倣した構造が、一般的に用いられる工業用接合材よりも、強い強度があることまで確かめています。
まとめ
✅ 車に踏まれても潰れない虫:コブゴミムシダマシ
✅ その秘密は、体重の約3万9000倍の力にも耐える、硬い翅(はね)にある
✅ 翅と翅のつなぎ目が、ジグソーパズル様であることが、硬さの秘密
今回紹介した研究は、自然界にある構造を模倣して工業製品などに応用する、バイオミメティクスという領域の研究になります。
自然に学び、自然界の構造や生態を模倣し、応用する学問。
自然がつくりだしたものには、とてつもない法則が隠されていますし、そこに着目した研究者の慧眼も素晴らしいです。
まさに自然に学べ、ですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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最後に、コブゴミムシダマシを紹介したYoutube動画もあるのでぜひ↓
コブゴミムシダマシがとてつもない圧力に耐えている映像もあります
今後も分かりやすい、簡潔な記事を心がけていきます🙇🏻♂️