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【連載小説】雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう

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毎日、自分に関する周囲の記憶がリセットされる男の話。自分の記憶だけは変わらない。
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#連載小説

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【24】

海の近くに住んだことはあるだろうか。 電車や車なんて使わなくても、歩いてすぐのところに海…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【23】

明代の存在を否定されて、僕は途方に暮れていた。 僕と明代の記憶は何だったのだろう。 明代…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【21】

リリー・マルレーンは2回目だった。 真由美という名前の子猫は、街角にはいなかった。 だか…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【20】

「ここのコーヒーは美味しいですな」 本庄氏はコーヒーを飲むと、椅子に深く腰掛けた。 「そ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【19】

記憶というのは、想像のひとつだと聞いたことがある。 断片を繋ぎ合わせて、事実を作る創造だ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【15】

ふるさとは 遠きにありて思ふもの そして 悲しくうたふもの 室生犀星の小景異情詩を、何故…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【12】

店は細長く、赤い天板のカウンターと赤いファブリックの丸い椅子が鮮やかだった。ひんやりとした空気の中に、音楽が流れていた。 カウンターの端にレコードプレーヤーがあって、レコードがかかっていた。 カウンターの向こうに、背の高い女性がいて、煙草を燻らせていた。 「いらっしゃい」 壁にウィスキーやジンやラムなどの洋酒が並んでいた。 僕は適当に座った。 僕に声をかけた子猫のような女は、カウンターの向こうに入って、僕の前に立った。 「何にする?」 「ウィスキー」 手慣れた仕

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【10】

図書館が閉館になる頃は、辺りはすっかりと暗くなっていた。 僕は図書館前の緩やかなスロープ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【9】

昨日の話をしよう。 昔のことではなく、1年前のことでもなく。 できれば一昨日、理想的なのは…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【8】

一番古い記憶は何だろう。 僕は目を閉じて思い出す。 岩の上だ。 海の中に立っている岩。 …

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【7】

子供の頃の話をしようと思う。 僕には姉がいたように思う。 いたように、というのは予防線だ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【6】

葉子が作って来てくれたサンドイッチを囲んで、お昼を取った。 「このキュウリのサンドイッチ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【5】

僕は、井の頭通りの、だらだらとした坂道を登っていた。 坂の途中から、前方にモスクの玉ねぎ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【4】

仕事が休みの時は、図書館に行くことが多かった。 人の記憶はリセットされても、僕の図書カードはリセットされないことを知ってから、時間があれば、図書館に行くことが多くなった。 マンションから歩いて10分程のところに、公立の図書館がある。 中央図書館と違って、こじんまりとした図書館なのも気に入っていた。 図書館では、決まって百科事典や図鑑を読んで過ごしていた。 子供の頃の記憶は、あまり思い出したくないが、家の書架に百科事典があって、それを読むのが好きだった思い出がある。