中高生の皆さんへ〜オプションBのススメ〜
先日、全中、インターハイの中止が発表されました。全国の舞台を目指して必死に努力されていた方、汗を流した仲間たちとの集大成の場にしようとしていた方、今回を最後に競技を引退しようと考えていた方、君達のやるせない思いは、僕にはとても想像がつきません。
それに、君達が影響を受けるのは部活動に限ったことではないのでしょう。何気ない日常の授業、文化祭や体育祭や修学旅行などの行事にも影響を及ぼす可能性は高いと思います。二度と来ない学生生活を理不尽に奪い取られたと感じる人もいるでしょう。「いまが全て」の君達にとって、この状況を受け入れることはとても難しいと想像します。
そんな君達に、僕たちが伝えられることなんて本当は何も無いのかもしれません。でも、僕なりに頑張って考えました。考えた末に、僕は君達に1冊の本を紹介したいと思います。
それは『OPTION B』(シェリル・サンドバーグ著)という本です。
僕自身、本書と出会って人生が変わったと言ってもいいくらいの良著なので、ぜひ手に取って読んでほしいです。ですが、なかなかそんな時間も無いと思うので、今回はざっくりとした本の内容と僕の感想をお伝えしたいと思います。
大まかな流れとしては、
①本書の説明
②結論(作者の言いたいこと)
③本書の要約
④中高生の君たちに伝えたいポイント
⑤まとめ
といった形で進めていきたいと思います。
それではどうぞ!
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①本書「OPTION B」の説明
本書は、Facebook社で女性初のCOO(最高執行責任者)となったシェリル・サンドバーグ氏と心理学者であるアダム・グラント氏の二人が自身の経験を通じて、「人生における喪失や困難への向き合い方、逆境の乗り越え方」を描いた自伝作品です。
タイトルにもある「オプションB」には、
「最良の選択肢(=オプションA)が叶わないのなら、我々は次善の選択肢(=オプションB)を使い倒すしかない」
という著者の強いメッセージが込められています。
②本書の結論
早速ですが、本書の結論をご紹介したいと思います。
それは、
レジリエンス=『逆境や挫折に対して、力強く、すばやく立ち直る力』を高めましょう。
ということです。
著者は、レジリエンスについて、元々備わっている能力ではなく、自分で鍛えることが出来る能力であると強く語っています。
③本書の要約
シェリル(著者)は夫と二人の幼い息子たちと幸せな家庭生活を送っていた。しかし、突然悲劇が訪れる。最愛の夫が不慮の事故で亡くなったのだ。
シェリルは子供たちのためにも、気丈に振る舞い、今まで通りに生活をしようとする。しかし、不意に亡き夫の事を思い出し、感情が溢れ出してしまう。そんな中、友人であり共著者のアダム・グラントが彼女にこう言う。
『闇はいつか必ず明けるが、自分でもその後押しをしなくてはいけない。人生最悪の悲劇に見舞われようと、その影響を多少でもコントロールすることは出来るはずだ。』
シェリルは、アダムの力を借り、様々な手段を使ってレジリエンスを高め、悲しみを乗り越えようとする。まず、様々な逆境や挫折(離婚、ケガ、病気、失敗、失望、喪失など)から立ち直るための研究を調べ、それに基づく心理学のテクニックを試した。それから、実際に逆境や挫折から回復した人たちから話を聞いた。
そうして彼女なりの「逆境に向き合う方法」を模索するうちに、シェリルは「レジリエンスを身につけることは、生涯にわたるプロジェクトだ」と思うようになる。そう考えたシェリルは、息子たちにもレジリエンスを教えていく。時には、成長した息子たちからシェリル自身が教わりながら。
そうしてシェリルは自分の感情と格闘しながらも、オプションBを精一杯活かそうとする。
④中高生の君たちに伝えたいポイント
本書の一番の魅力は、シェリルが立ち直る過程をありのままに伝えようとしている点にあると僕は思います。
その中で「シェリルが実際に役に立った心理学のテクニック」や、「逆境や挫折から回復した人たちのエピソード」にページの大部分を割いています。そこで今回は、そのうち、中高生の君たちにも関係すると思われる2つを抜粋してお伝えしたいと思います。
心理学テクニック「ジャーナリング」
「ジャーナリング」とは、自分の考えを思いつくままにひたすら書き出すという心理学の手法です。感情を言葉に置き換えることで、その感情を「自分がコントロール」しているという感覚が得られます。ネガティブな感情には、「サイテー」という曖昧なものよりも「試合に出られなくてムカつく」といった具体的なものの方が感情を処理しやすいと言われています。ジャーナリングの治療効果は、100を超える実験で実証されています。
シェリルは、「自分への手紙」という形で約150日間毎日ジャーナリングを続けました。彼女は、やり場のない感情や、次から次へと浮かんでくる後悔をジャーナリングのおかげで処理することが出来たと語っています。
「コロナの影響で辛いのは自分だけではないから」と、自分の気持ちを誰にも言わずに押し隠してはいませんか?もし、ネガティブな感情を自分の中だけでは処理しきれないのであれば、ジャーナリングを試してみるのもいいと思います。
逆境エピソード「アンデス墜落事故」
1972年、ウルグアイからチリに向けて飛び立った1機の飛行機が、アンデス山脈に激突した。機体は真っ二つに割れ、険しい雪山を滑り落ちた。飛行機の乗客45人の大半は、試合に向かう10代後半から20代前半のラグビー選手だった。
墜落直後の生存者は28人。その後の72日間、彼らは凍傷、雪崩、飢餓などの様々な困難と戦った。9日目で食料が底をつき、10日目には「捜索が打ち切られた」というラジオ放送を聞いた。それでも彼らは救助が来ることを祈り続けた。
いつ終わるか分からない生活に神経をすり減らす日々。「このまま待っていても救助は来ない」。とうとう彼らは救助を求めに遠征に出る。50キロメートル以上におよぶ足場の悪い地形を踏破し、4500メートルの山頂を越えた。そして、出発から10日後に救助される。生還者は16名だった。
彼らのレジリエンスを高めるきっかけになったものは「救助が来る」という希望でした。少なくても希望があれば、絶望に屈させずにいられます。彼らは希望を持ち、お互いを信頼し続けました。その結果、ひとりでは持てない力を得られました。生還者たちは、あれから数十年経った今でも親密な付き合いを続けているそうです。
ある研究によれば、希望が生まれ、持続するのは、「人々のコミュニティが新たな可能性を思い描くとき」だそうです。レジリエンスは個人の中で育まれるだけではありません。チームや学校や町や国で、育むことができます。
人々が一緒にレジリエンスを育めば、コミュニティとして、ともに障害を乗り越えることが出来ます。そして、集団のレジリエンスを育むには、たんに希望を分かち合うだけでなく、本人のストーリーを分かち合うことがカギとなる、と著者は語っています。
君たちは「同じ目標に向かっていたチーム」というコミュニティだけではなく、「やるせない思いをした選手全員」という、ある種の特殊な巨大なコミュニティを持つことになります。
その特殊なコミュニティで、自分たちの素直な心象風景を共有することが出来れば、その集団の力(レジリエンス)は必ず育まれるはずです。また、君たちのように、「目標としていた大会に全員が出られないこと」は、戦後では誰も経験していません。つまり、君たちにしか得られない力(レジリエンス)を得られるはずなのです。
今はまだ先の見えない状況です。いつ、どのような形で部活動や試合が再開されるかも分かりません。希望も見えないかもしれません。ですが、敢えてこのエピソードを紹介させて頂きました。君たちの次の目標や希望はいずれ必ず見つかります。その時、今回得られる力がきっと役に立つはずだから。
⑤まとめ
著者のシェリルは文末にこう述べています。
「私はこの本を書き、人生の意味を見出そうとしたが、悲しみを追い払うことは出来なかった。でも悲嘆は波のように押し寄せる一方で、潮のように引いていく。そして、潮が引いてみると、ただ生き延びただけでなく、ある面では、前より強くなっていることに気づく。たとえ、オプションBでも私たちには選択肢がある。」
コロナウイルスが流行しなかったオプションAは、残念ながらもうありません。ですが、我々にはオプションBという選択肢があります。今回の逆境を乗り越えれば、君たちや、君たちのチームはレジリエンスを高め、必ず強くなります。だから今は、ひたすらに自分の気持ちと素直に向き合いましょう。そして、自分なりのオプションBを使い倒しましょう。
このnoteが君たちの力に少しでもなってくれたらと願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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