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バレンタインの勇気。

今日はバレンタインだったんですね。
気がついたらそうなっていて驚き。
というのも私はいわゆる高級チョコレートと言われるものが全般的に苦手で、全くあの美味しさが分からない人。
よってバレンタインはチロルチョコか、キットカット、不二家のパラソルチョコレートを所望する。
高級チョコランキング(そんなもんあるんかな?)でいうならばmerryのチョコレートまでにして欲しいと切実に思うタチ。
merry以上に高級ですと、全く美味しく感じなくてもはや悲しくなりますし、そのお金でケーキ買いたい!!と絶望するほどだからだ。
そうやって導き出された結論は、

不二家のパラソルチョコレートが1番好き

ということに他ならないので、とにかくバレンタインという日は、

パラソルチョコレートをたくさん買い込みたい日

なのである。多分。

バレンタインといえば、友チョコとか、家族からとか、好きな人にあげるとか色々ありますが、私も昔、さまざまな経緯でチョコをもらった事がある。
その中でも印象に残っているのは、10歳のころにクラスメイトからもらったチョコレートだ。

私の今現在の年齢は、中井貴一扮したage35に限りなく近い。つまり不倫のゴールデンエイジに達してしまったのである。
瀬戸朝香のシャワーシーン、中井貴一の煮え切らない態度、そしてシャ乱Q。みんな変わってしまったようだけど、瀬戸朝香と中井貴一はあまり変わらない不思議。90年代のねっとりとしたセピア色ロマンス。あれはそんな時代だった。

ともかくそんな頃にだ。
約25年前、私はクラスメイトの男の子からチョコレートを受け取った。
好きです、と言われながら、集会室の中で、他の同級生ににやにやと見つめられ、ヒューヒューされながらそれを受け取った。
ありがとう、と言いながら、ドキドキしながらそれをカバンにしまう。
可愛らしい包装紙に包まれたそれは、チョコと一緒に、当時流行していたキャラクターの描かれたシャープペンシルが入っていた。

今みたいにジェンダーレスとか男も女も関係ない時代ではない頃、あの男の子は、自分から好きな女の子にチョコレートをプレゼントした。
当時も私はその勇気をすごいと思ったけど、今この歳になったからこそ、改めてその勇気をすごいと思う。

当時は女性の社会進出が進み始めたころで、女も男に負けない!と頑張る風潮があったように思う。少なくとも子どもの頃はそう思っていた。
だが、その傍ら男性というのは常に殻を破りにくいイメージがあった。
今よりももっと、男はこう、と決まったイメージがあり、それを破れば女々しいと揶揄される時代。
進んでいく女性達(というか男性のように振る舞う事、男性に近づくくとを良しとした時代にも感じる)とは対照的に、あくまでも男らしく生きなければならなかった男たち。
そんな中、女性特有だったイベントを利用した10歳の彼は、なかなか革新的で大胆だった。

その後彼とは、ただのクラスメイトとして過ごした。でもホワイトデーのお返しを渡せずに終業式を迎えてしまい、私は困り果ててしまったのだ。

私はやむなく、母に事情を話した。
そりゃあ何か渡さないとね、と母はキチンと対応してくれた。
お返しの品の買い物に付き合ってもらい、隣町の店でミニーマウスの絵のついたクッキー缶を買ってもらった。彼の家の住所もママ友ネットワークをフルに使い突き止めた。そして母に彼の家まで送ってもらい、まさに母パワーフルコースで少し遅れたホワイトデーを迎えたのだった。

その日、玄関のチャイムを鳴らすと、彼のお母さんが出てきてくれた。シゲアキ君いますか?バレンタインのチョコのお返しを渡しにきました、というと驚いた顔をしながらシゲアキを呼んでくれた。
ミニーちゃんのチョコを渡すと、嬉しそうに照れていた。シゲアキは何も話さなかった。
母親同士がぺこぺこと挨拶をする。
何も喋らなかった私たちとは対照的に、母たちは短い時間に必要な事を早口で話していた。
その日は雨が降っていた気がする。
なんとなくそんな匂いの記憶。

すべての用事が済むと、私は母の運転する車に乗り込んだ。
シゲアキの母が手を振ってくる。
私もそれに合わせて手を振った。
シゲアキはクッキー缶を抱えながら、私の方をじっと見ていた。

私たちは付き合ったりはしなかったけど、翌年の筆箱にはもらったシャープペンシルを入れた。
筆圧が強すぎて使う事をためらっていたけれど、案外すぐに慣れて、つかいやすくて重宝した。

彼がどうやってバレンタインのチョコを選び、シャープペンシルを選んだのだろう。
彼もお母さんと一緒に買い物したのだろうか。
それとも双子の兄と一緒に買い物に行ったのだろうか。
でもそれは、あの時笑っていた男の子達には絶対真似できない事なのだ。
そんな勇気と思いの詰まったチョコレートをいただくことができ、私は素直に嬉しかった。
そして誇りに思った。

今彼はどうしているのだろうか。
かれは決して優等生ではなかったし、スポーツもできるわけじゃなかった。それは私も同じだからこそ、その勇気がカッコよかった。
冷やかされても(あの時の男児たちのヒューヒューには、応援の割合も多かったが)決してめげずにやり遂げたのは、今だからこそすごいと思うのだ。

とにかく男も女も関係なく、良いバレンタインを過ごして欲しい。
私は高級チョコは苦手だけど、こういうカッコいいチョコレートは好きだ。
あの頃のシャープペンシルも、きっと実家に残っている。

あの頃は、逆バレンタインもらったー!!と有頂天になっていた。
5年後もそう思う自分がいた。
10年経っても少しそう感じる自分がいた。
それは大きな幼い間違いで、本当にすごい事をしたのはシゲアキなのだ。
それに気がつくのに、私は随分と長い時間を要した。

バレンタインには必ず、シゲアキの事を思い出したいとおもった。
あんなに素敵なチョコレートを、私はもらったのだから。
この思い出を忘れたくないなと思う。
ずっとずっと、忘れたくないなと思うのだ。


※ちょっとだけ加筆修正しました。
書くことによって、思い出が深まり分析できて面白い。みんなも楽しい思い出をつくってね。

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