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感想

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読んだ本の感想を書いていきます。 もしかすると読んでないかもしれません。 映画や演劇などに射程が伸びる可能性も拭えません。
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2019年2月の記事一覧

阿久津隆【読書の日記】

初台でfuzkue(フヅクエ)というブックカフェを営む店主の日記を一冊に纏めたもの。分厚い。読書に関する話題も多いがそれだけでなく、店主の店作りに対する葛藤とか何かを閃いた時の明るい気分、阿久津さんが生活で推し進める無軌道に見えて一貫している思考の垂れ流しもある。

え、ちょっとこんなに影響を受けちゃっていいのか自分、というくらいに、意識の有無は別にして影響を受けている気がする。言及されている本

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ヤマシタトモコ【違国日記】

小説家の槇生が、交通事故で両親を亡くした姪の朝を引き取るところから始まる話。槇生は、朝の母親=槇生の姉とかなり折合いが悪い様子。槇生も朝も女性。類型的にも思える粗筋だが、この作品の魅力は単純な筋にはない。

タイトルがまず不穏である。「異」国ではなく「違」国。前者より後者のほうが、その「国」が自分とはっきり隔たっている手触りがある。

が、内容は不穏一辺倒ではない。二人とも不器用ながら歩み寄ろ

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堀江敏幸【傍らにいた人】

堀江敏幸【傍らにいた人】

日経新聞に連載されていた書評を一冊にまとめた書評集。仏文学の印象も強い著者だが、語られるのは日本の古典である。日経新聞という相当に実利を重視するはずの新聞の片隅に、この生産性という概念から遠く離れた緩やかな散文が載せられていたということ自体が、何というか嬉しい。

「解釈の誘惑から離れて」「全体の流れや構造とは関係ない細部につまづくこと」を掲げ、要約すれば零れ落ちてしまう「傍ら」の描写に着目して丹

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