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嘘の連鎖と村社会『ノイズ』

角野 信彦

水の中に一滴のインクを落としてその色素が広がっていくように、地方の寒村に犯罪者が入り込み、負の連鎖が続いていく物語。ヤングマガジンで全3巻で完結した筒井哲也さんのサスペンスマンガが原作になっている。

柏木ハルコ『花園メリーゴーランド』とか、二宮正明『ガンニバル』のような閉じられた村社会の異形を描いたマンガで、古くは横溝正史の『八ツ墓村』や『犬神家の一族』とも共通するような気味悪さがある。

ミステリーとかサスペンスは「閉じられた世界」でストーリーが進まないと、犯人の可能性が無限に広がってしまうので、物語に結末を付けやすくするための工夫もあるが、「閉ざされれた村社会」というのは殺人事件の舞台としては不思議な現実感がある。映画の映像に関しては、『犬神家の一族』の市川崑さんみたいに逆光も使われず、見えないほどの暗さもなく、むしろすごく明るく撮られている。

実は、最初のノイズとして描かれる、殺人犯の男の「気持ち悪さ」は映画ではだいぶ省かれている。そのかわり、いい大人が「いちごミルク」をがぶ飲みしながら歩いてたり、映像で違和感を作り出そうとしている。映像でマンガの表現をそのままやるのがちょっと難しかったという面があるのかもしれないが、原作にあった「殺されてもしょうがないな」というまでの最初のノイズ(殺人犯)の「悪意」の描き方が薄かったかな。これならノイズを殺したことを隠す必要ないかも、っていう感情が少し湧き上がってしまった。

ストーリーはマンガと映画では結末が違っていて、マンガでは閉ざされた街の人間たちの共同体としての強さを感じさせたけれど、映画の結末はよりダークなものになっている。当然、マンガのように終わると思っていた僕としては、結構な驚きだったので、マンガを既読の人も楽しんで観ることができると思う。そして、豪華な俳優陣、藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、永瀬正敏、柄本明、余貴美子の相互作用としての演技を楽しむ映画だと思う。若いときよりも表情に険を宿している永瀬正敏さんの刑事がとても良かったと思う。

筒井哲也では『マンホール』も

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