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僕はいま……、|散文

ふと眼を覚ましたのはいつかの狭い部屋
おはよう、の声すらするわけでもなく
だけども確かに生活の音は心に聴こえる

なんだろう、この焦る気持ち……

ふと壁をみればそこには懐かしい制服
一気に追いたてられ僕の肩が跳ねあがる

……学校だ! やばい、新学期だ!

急いでいるのに自由にならないこの身体
古い部屋、ふたつ並べられた勉強つくえ
寂しくこちらを見ている赤いランドセル

僕のだ、だけども僕の物ではない……

僕はいま、何歳なのだろうかと首をおる
手を伸ばして掴んだ制服が暴れている
お前に着られてなるものか、無言の闘い

……なにをぐずぐずしている、急げ!

どこからともなく聴こえてきた僕の声
遅刻への心配? 否、なにかがちがう
いや違わないであろう新学期なのだから

階段を駆けおり母たちの姿は視界の片隅
視線こそ感じるがそこに命は感じない
自転車のすすめかたが、……わからない
走らないそれは気持ちと裏腹に高校の前

くつ箱、ひとり立ち尽くす僕の背中に
誰ひとり気づく事なく取り残されていく

僕はいま、なん年なん組だったっけ……

ふと眼を覚ましたのはいつもの広い部屋
おはよう、の声すらするわけでもなく
だけども確かに生活の音は心に聴こえる

LINEの通知に、涙がこぼれた……

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