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この1年ベルフェイスが取り組んできたプロダクトマネジメントの一部をご紹介

はじめに


この記事は🎄bellFace Advent Calendar 2021🎄の20日目の内容です。

ベルフェイスがセールスカンパニーからプロダクトカンパニーにシフトし、プロダクト起点に価値提供していく組織となるためにこの1年間プロダクトグループが実践してきた取り組みの一部をご紹介したいと思います。

本記事で使う用語、表記について

本記事では表記の違いによって意味合いが変わる用語や表記の解釈が一般に複数解釈できる用語が頻出するため、本記事内の定義を簡単にご説明します。

■ベルフェイス:
 カタカナ表記の場合は toB 向け SaaS である bellFace を運営するベルフェイス株式会社のことを指します。
■bellFace :
 アルファベット表記の場合はベルフェイス株式会社が運営する toB 向け SaaS であるプロダクトを指します。
■PM:
 Product Manager を指します。PdM と同義です。
■OPMW:
 Open Product Management Workflow というプロダクトマネジメントにおけるフレームワークを指します。

自己紹介

改めまして、はじめまして。
ベルフェイスでプロダクトマネージャーをやっている大歳です。

今年の4月に入社し、早くも9ヶ月が過ぎようとしています。
社内では悪意愛情ある CTO/CPO や他の PM / EM にパリピだ何だとネタにされる日々です。最近は自組織外にも噂が広がっており情報操作の怖さを痛感しています。

ベルフェイス入社以前の経歴

前職は情報サービス系の会社でブライダル領域やHR領域のプロダクト企画や開発を担っておりました。実は前職でブライダル領域における toB 向けプロダクトを担当している頃に連携しようとしていた候補の一つとして bellFace があり、そこでベルフェイスのことを知ってはいたのですがその頃はまさか自分が入社することになるとは夢にも思わずでした。ご縁というのは不思議ですね笑

ベルフェイスで担当していること

ベルフェイスのID and API Platform という ID や API 基盤、他社サービスとの Integration 周りの機能を管掌するプロダクトライン※の PM をしています。
他にも組織横断で進めるプロジェクトを複数担当するなど幅広く関わらせてもらっていて、直近はそのうちの一つで先日プレスリリースを公開したリモートコントロール機能の一般提供β版の PM もしております。

※ベルフェイスでは bellFace というオンライン商談のプロダクトをプロダクトラインという管掌範囲に分け、それぞれに PM を立てています。下図を見ていただくとイメージがつきやすいかと思います。

2021年12月時点


本記事でご紹介する取り組み内容


ベルフェイスに取り入れてきたプロダクトマネジメントの概要は、13日目のエントリーで PM の岩本さん(通称もっち)が記載してくれているので説明は省きます。非常に詳しくかつ分かりやすくまとめてくれているので是非そちらのエントリーをご覧ください!

本記事では以下2つの取り組みに具体的な内容に踏み込んでご紹介します。

  • プロダクトビジョン及びプロダクトプリンシプルを CPO をはじめ PM 全員で策定したお話

  • OPMW における市場インタビューを実践したお話

プロダクトビジョンとプリンシプルの策定


まず最初にベルフェイスのプロダクトビジョンとプロダクトプリンシプルをご紹介します!どどん!

プロダクトビジョン

商談の数だけ世の中をしあわせに
なめらかに価値がつながる世界を実現する

プロダクトプリンシプル

より良い商談機会
売るべき商材が売られるべき人に届く商談機会を創り出す
より良い商談環境
準備からクロージングまで、手間なく商談を行うことができる
より良い商談遂行能力の獲得
使えば使うほど営業活動のパフォーマンスが最大化する

なぜ作るか?何のために作るか?

そもそもプロダクトビジョンってなぜ作るのでしょうか?ビジョンという言葉を調べてみると以下のとおりです。

ビジョン(vision)とは、「見る」「見通す」といった意味合いをもつ英語由来の表現であり、日本語としては主に「将来の見通し」「未来像」「構想」といった意味で用いられる語。

Weblio辞書

つまりプロダクトビジョンとは、プロダクトを通じて創り出したい未来像や構想となります。

これを指針として言語化することで、プロダクト開発に携わる人が全ての人が共通認識を持って目指すべき目的と方向性をぶらすことなく動けることが最大の効果です。また社外に向けてはこのビジョンについて共感してくれる方と縁が繋がる可能性があることも一つの効果になると思います。

なお、必ずしもプロダクトビジョンを作るべきというわけではありません。作るかどうかは会社の状況に応じて判断するのが良いと思います。結局は目的に応じて適切な粒度で指針を示すものなので、コーポレートビジョン = プロダクトビジョンとして設定する場合もあれば、コーポレートビジョンを実現するためにプロダクトで創り出したい未来像や構想の指針として一段階具体性を増したものとしてプロダクトビジョン設定する場合もあると思います。ベルフェイスでは後者の位置付けで作成しており、その理由は以下となります。

  • プロダクトとしてどういう状態を目指すかの方向性を定めた指針がなく、誰の何の問題を解決するために存在するプロダクトなのか、が曖昧な状態だった(コーポレートビジョンでは抽象度が高すぎるので解釈がバラバラになってしまい、その状態のまま Why が抜け落ちて How から機能開発をスタートする、いわゆる How 思考。アウトプット偏重になり、この本で言うところのビルドトラップに陥る)

  • それに加えてコロナによる急激な市場環境の変化があり、上記の誰の何の問題を解決するべきなのかの再定義を余儀なくされた

  • これを解消していくべきプロダクト組織を管掌する CPO をはじめ、PM 陣のほとんどがベルフェイスに参画して日が浅かったため、それぞれ培ってきた経験や思考に違いがあり bellFace に対する解釈に、よりばらつきが出る可能性がある状況だった

このため下図のような概念構造でプロダクトビジョンを作成し、そこからさらにプロダクトプリンシプルを設定してプロダクトがどこに向かうのか、どういう状態をあるべきと置くのかを決めていきました。

せっかくの機会なのでベルフェイスのコーポレートビジョンも紹介しておきます。

どうやって作っていったか

一番大事にしたのが CPO を含め全 PM がフルコミットし、0から作っていくという PM 全員参加型の策定過程を踏むことでした。
何もよりもまず PM 全員の納得感が得られるビジョンであることが重要だと考えたためです。

実は CPO 中心に一部の限定的なメンバーでプロダクトビジョンを策定する動きは4月頃から動いていました。その際は CPO 以外の PM 陣は関与していない状態で、新規参入の PM ばかりの中、言語化されたビジョンメッセージだけ受け取って各々の主管するプロダクトラインの意思決定をしていくのは非常にまずいと強く感じ、 CPO に一緒に策定させてほしいと訴えかけ巻き込んでもらった経緯があります。
余談ですが、このとき他の PM もみんな同じ気持ちで、このメンバーでプロダクト作りが出来ることを心強く感じた瞬間でした。

ここにそれだけの工数をかけるべきか?という疑問を持たれる方も多いかと思いますし、効率性という観点は度外視する方法であったと思います。プロダクトビジョンをどのタイミングで作るかによりますが、創業者が PM を兼ねてプロダクト作りをするフェーズで作成する場合はトップダウンで決めるのもありだと思います。ただ、ベルフェイスではプロダクトビジョンを作成した理由に記載したとおり CPO の ZIGOROu さんが2020年の12月にベルフェイスに参画し、CPO という役割を担ったのが2021年2月、そこから5月までの間に外部から順次 PM が参画してという状況であったため、PM 陣で解釈が大きくズレないように各自の考えや解釈を一つ一つ丁寧にすり合わせていくことを重視しました。10回程度は MTG をアレンジし喧々諤々議論したことを鮮明に覚えています。

さて、具体的にどうやってビジョンを策定していったかですが、完全にリモートワークな状況だったので miro の sticky note を使い、いくつかのフレームワークを活用しながらそれぞれの考えを細かくすり合わせながら決めていきました。記載内容までは出せないので解像度が粗い画像で恐縮ですが下図が実際の miro です。
この解像度でもハッキリと分かる「KUMA」の文字が、クマ系 PM である吉本さんが社内でいかに愛されているかが良く分かりますね!笑
そんな吉本さんの記事はこちら

これだとイメージが沸かないと思うのでもう少し検討プロセスを説明していきます。

【Step1】
まずは Product Vision Board のフレームを活用し、誰のどんな問題を解決するプロダクトなのかについて言語化していきました。

  • 以下を miro 上で各自の解釈、意見を sticky note で可視化とグルーピング

    1. bellFace を作る目的とそれによって市場にどんな変化をもたらしたいか?

    2. どの市場、または市場セグメントに対応する製品なのか?対象となるお客様やユーザーは誰か?

    3. 製品がどのような問題を解決するのか?どのような利益をもたらすのか?

    4. どのような製品か?何が優れているのか?その製品を開発することは可能なのか?

    5. その製品は、会社にどのような利益をもたらすのか?ビジネスゴールは何か?

Roman Pichler 氏の製品ビジョンボード


【Step2】
次に Product Vision Board で揃えた大枠を元に、各自で Product Vision Templete に書き出して、細かい認識の Fit & Gap を実施し、それぞれに対して全てを取り入れる or 一部取り入れる or 表現の置き換えを繰り返していきました。前段で大枠を揃えたつもりでも、この時点では細かい認識の差が多くあったことを覚えています。

Geoffry Moore 氏の製品ビジョンテンプレート

【Step3】
ここまでで一定のレベル感までは解釈が揃ってきたので、次にビジョンステートメントとして、どれくらいの期間を想定するか?どれくらいの粒度で記載するか?のすり合わせを実施しました。結果として我々は5年以上先を見据える方針としています。

【Step4】
期間や粒度も揃ったので、各自で改めてプロダクトビジョンとプリンシプルをとして必要な要素や表現を考えたうえで意見を持ち寄り議論を深めました。ここではビジョンやプリンシプルに入れる要素や表現を何度も何度も会話して、全員の納得感が得られる形で冒頭ご紹介した内容に決定しました。

プロダクトビジョンの策定を通して感じたこと

ビジネスのフェーズが一定進んでいる状況でのビジョン策定は目指すべき状態の定義と現状のバランスを取って設定していく必要があるため、PM 陣で徹底的に解釈を合わせながら策定していけたことは改めて良かったなと感じていますし、手前味噌ながらとても良いビジョンとプリンシプルになったんじゃないかな、と思っています。
あとはこのビジョンが形骸化しないよう組織内に浸透させ、プロダクトビジョンを実現するためのプロダクトづくりが各現場で機能していくことが超大事だと思うので(そしてそれがとても難しい)、PM 陣で協力してそこを推進していきたいと思います。

市場インタビューの実施


さて、話は変わりますが、ビジョンとプリンシプルが策定できたので、下図の赤枠に該当する市場インタビューと問題の特定、ターゲットユーザーやペルソナの特定、シナリオの識別へと取り組みを進めています。こちらも簡単にご紹介したいと思います。

プロダクト組織として市場の事実を把握できていなかった問題

この取り組みの発端は、ベルフェイスが元々セールスカンパニー色が強く、社内受託感のある開発スタイルだったため、プロダクト組織側に市場や顧客についての接点や知見がない状況だったことにあります。プロダクトカンパニーとしてプロダクト主導型組織に変わっていくためには市場や顧客のことを知らないこの状況はまずいと強い危機感を感じ、市場インタビューの実施に向けた活動をスタートしました。

インタビュー実施のプロセス設計と実行

まず、OPMW の定義では顧客のタイプは、潜在顧客、評価顧客、既存顧客の3種類に分類されます。このうち既存顧客を、他社、自社、自社のロイヤルと3分割して整理すると下図のようになります。

当時の状況でいうと、セールスやカスタマーサクセス経由では既存顧客へのアプローチを取れていたためその情報を獲得することは出来たものの、潜在顧客や評価顧客へのアプローチは相対的に少なく、下図のように情報源のバランスが悪い状況になってしまっていました。なお、OPMW によるとこの状況はオーバーエンジニアリングとなる典型的な代表例とされています。

OPMW の Interview Market における Typical sources for information from companies の図

以下はバランス良く3種類の顧客タイプと会話できている情報源の最適な分布図です。

OPMW の Interview Market における The optimal distribution of the sources of information の図

まずは、会社としてあまりアプローチが出来ていない潜在顧客や評価顧客へのインタビューを実行する目的と手法の整理、それに掛かる予算の見積りを行い、社内的な承認を得て定期的なインタビュー機会の獲得を行いました。
この際、インタビューの Step を段階で分けて設計し、1st Step の目的としては顧客の事実をありのまま把握し解像度を高めることにフォーカスしています。

顧客の事実把握において、本来であれば行動観察を行うアプローチがあると思いますが、コロナ禍かつ緊急事態宣言発令の状況だったためビジネスプロセス×観点のフレームを作成し、オンラインインタビューにて把握するプロセスを取っています。

インタビューから得られた事実をもとにした問題特定

インタビューによって一定量の事実が得られた後はその事実を集約し、初期仮説見立てとして顧客のペインやゲインに紐付く問題の特定と対象となるペルソナ及びユースケースシナリオの分類を実施しました。OPMW でいうところの Identify Problems のフェーズになります。
ここで見立てた初期仮説の確度を高めるために 2nd Step として、より bellFace のターゲットユーザーとなる層でインタビューの母集団形成を行い見立ての精度を高めていきました。

プロダクト戦略や企画開発プロジェクトへの適応

ここまでで見立てた問題については、主にプロダクト戦略の評価と修正各プロダクトラインの企画開発への適応に活かしており概要は以下のとおりです。

  • プロダクト戦略の評価と修正

    • ベルフェイスにも当然プロダクト戦略は存在していますが、前述のとおり既存顧客に偏った情報源での策定となってしまっていたため、残り2種類の顧客タイプからの情報を元に現在の戦略が問題ないかの評価に活用

  • 各プロダクトラインの企画開発への適応

    • 足元で開発する機能に対して Why や What の解像度を高めていくためのインプットとして活用

この先やっていくこと

これまではインタビューという手法にフォーカスして顧客の情報を獲得していましたが、今後はアンケートなどを用いて定性情報の定量化を図りながら仮説の確度を高めることをしていきたいと思っています。
また、獲得した情報を組織として適切に管理し、組織知として整備していく動きも徐々にスタートしています。

おわりに


入社後、約9ヶ月間駆け抜けてみて

毎日が目まぐるしくとにかく濃かった、に尽きます笑
スタートアップに挑戦することを決めた時点である程度の忙しさやカオスな環境であることは覚悟していましたがそれ以上でした笑
だけどそれを圧倒的に上回るくらいまなびが大きく、日々良くなっていくプロダクトや組織、プロダクトマネジメントプロセスを実感できますし、プロダクトカンパニーへの変革は着実に進んでいると思います。沢山の優秀なメンバーと顧客に価値あるものを届けるにはどうしたらいいかを毎日議論していける環境も凄く刺激的でワクワクの連続でした。
もちろん、まだまだこれから改善していかなければならないところが圧倒的に多いのも事実です。さらに一定規模まで組織が拡大し、会社としてのこれまでのやり方や業務を遂行するメンバーが数多くいる状況下での変革は一足飛びには出来ません。理想と現実のバランスを上手く取りながらプロダクトとして成果を出しつつ非連続的な成長をしていくために、どういう時間軸で変化させていくか柔軟に設計しながら進めていく必要があると感じています。とはいえそういったことも含めて白地だらけなので、どんどん改善に向かって取り組んでいけることが今から楽しみです。

一緒に働きませんか?

ベルフェイスでは一緒にプロダクトの価値創出をしてくれるメンバーを募集しています。事業としてもプロダクトしても変革の真っ只中であり、日々、進化を実感できる非常に面白いタイミングだと思いますので、ちょっとでも興味を持ったら下記のリンクからお気軽にご連絡ください!

明日のエントリー

明日は PM 兼釣り系 Youtuber 岩本さんの記事第二弾が公開されます。数々の Startup を渡り歩いてきた彼がプロダクトマネジメントにおける開発部分にフォーカスした良質な記事を書いてくれておりますのでご期待ください!

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