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キルギス通信Vol.22 2016年版 再発行

このキルギス通信は、筆者が2014年~2016年にJOCV(青年海外協力隊)のコミュニティ開発隊員として、キルギスのチョルポンアタ市役所で働いた際の日本の取引先や同僚に向けた月刊通信です。少し情報は古くはなりますが、キルギスらしさを十分感じていただける内容ですので、ご笑覧ください。

КЫРГЫЗ(キルギス)通信~大草原の小さな国から~ 2016.06.01発行

街中のカフェが営業開始!

いよいよ夏間近!人の通りも多くなり、わが町チョルポンアタの本領が発揮される季節に近づいております。しかし、そんな雰囲気とは裏腹に、ここ最近は天気が崩れ気味。晴れの日が年間平均320日あると言われているこの町ですが、今年は雨がとても多いです。こんな自然に囲まれたところでも異常気象を感じざるを得ません。
 そして、先日行われたシルクロードマラソンに今年も参戦しました!ハーフマラソンに再挑戦すべく、日々トレーニングを積んだ結果…なんとか最下位は免れました★
マラソン会場では、日本のマラソン事務局と共同で、焼きおにぎりとカレーうどんの屋台をオープン!焼きおにぎりに味がない…というキルギス人からの苦情はなんのその(彼らは濃い味好き)、今年も無事に日本との友好のイベントであるシルクロードマラソンは幕を閉じました。

夜8時のイシククル湖のビーチ。 夜でもまだ昼のようです。

 さて、話題は変わって今回は「誘拐(結)婚」の実態について特集します。もうないと思っていたのですが、実はまだまだ健在なんです…

誘拐婚=伝統!?

キルギス人と話していると、彼らのDNAに刻まれているがのごとく、同じ質問をしてきます。テンプレートはこちら…

①「どこから来たのか」
②「西暦何年生まれか(キルギスでは、年齢ではなく生まれ年を聞くのが一般的)」
③「何人兄弟か」→「結婚しているのか」→「子どもはいるのか」
さらに、その答えがどんなであれ…
④「キルギスで男の人を見つけて、残りなさい。」→日本で夫または彼氏が待っていると答えると…
⑤「誘拐婚されちゃうかもよ~(にやにや)」

 この会話だけでなく、キルギス人との会話の節々で感じるのは、「誘拐婚はキルギスの伝統である」という認識です。しかし、これは誤りで、誘拐婚が主流になったのは近代であり、前近代は、駆け落ちの手段としての誘拐婚が存在していただけです。
 そもそも、誘拐して無理矢理家に押し込み、強姦まがいのことをして結婚を強要するのは、立派な犯罪であり、人権侵害なんですが、誘拐婚をした男は男らしいと賞賛される風潮さえあります…。

誘拐婚の実態に迫る!!

実際に、どのくらいの割合で誘拐婚があるかはわかりませんが、少なくても、私は今までに5組以上の誘拐婚の新婚カップルを見てきています。
それでは、その詳細を一部ご紹介しましょう。

市役所同僚Tちゃん(24歳):2016年1月に誘拐婚
昔から知り合いだった近所のお兄ちゃん(27歳)と3度目のデート終了後、彼と彼の友達に夜中に呼び出されて誘拐された。
お互い知り合いであり、好意があったために逃げ出しはしなかったが、「なんでもっと正統なやり方で求婚してこないの!!」と憤慨。夫は仕事がなく、自身も薄給。けど、現在は幸せそうです。

友人の知人Aちゃん(26歳):2015年12月に誘拐婚
1度だけ話したことのある男性から誘われて、カフェに行ったら、その帰りにたくさんの車に囲まれて誘拐された。
彼女はもう26歳だったので結婚に焦っており、結婚できて安心!とは思いつつも、ど田舎に嫁がされたので、これからの生活が心配とのこと…。

別の誘拐婚カップルの披露宴。誘拐婚なのになんだか楽しそうな宴会

現時点では幸せな2人ですが、全くの他人に誘拐される場合や、結婚してからDVに悩まされて、離婚することも多々あります。なお、逃げ出す事もできますが、一度手を付けられた女性はもう結婚ができないと見なされるため、家族も泣く泣く嫁がせることが多いだとか。
ちなみに、誘拐婚は一応犯罪であり、被害者が訴えた場合は3年の禁固刑が課せられるのですが、家畜を盗んだ場合は、禁固11年…。(2016年当時)
家畜のほうが人間よりも価値が高いんかいっ!?と思わず突っ込みを入れたくなる、そんなキルギスの現状なのでした…。

コラム1 黒い背中 (Кара далы :カラ ダル)

ソ連初期のキルギス少女

映画のタイトル張りのこの言葉は20代後半以降の未婚の女性を形容する言葉です。キルギスでは、結婚こそが女性の幸せであると考えられていて、結婚をしていないと一人前の大人としても見られない傾向さえあります。
 古来からキルギスの未婚の女性は髪を長くし、それを15本の三つ編みに結っていました。そんな女性を後ろから見ると「黒い背中」に見えたために未婚の女性を形容する言葉になりましたが、現在は「売れ残りの女性」というマイナスのイメージがあります

コラム2 キルギスクイズの答え

クイズはこちら↓

正解は、2の「未完熟のくるみ」です!
キルギスはフルーツだけでなく、ナッツ類もよく採れます。その中でも、クルミは栄養価が高くて人気なのですが、未完熟のくるみを丸ごと茹でて、灰汁抜きし、コニャックと混ぜてジャムにするというなんとも斬新なジャムが下の写真。甲状腺の病気によくに効くとされ、すっきりとした甘みがロシア人などの観光客に大人気です!

実もおいしく食べられます

コラム4 大草原のひとりごと

先日、職場の慰安旅行に同行したのですが、「キルギスの大人は大きな子ども」だなとしみじみ思いました。精神的に未熟だとかそういうことではなく「やりたいことをとりあえずやる」「人になんと思われようと、私は今これをやりたい」という意思が強く、大人らしく我慢しよう、だとか、大人として恥ずかしからこれはしない、という思いが日本人に比べて格段に少ないのです。
例えば、皆で分けるお菓子を我先にと奪って行くだとか、子どもの前で堂々と嘘をついて、自分だけ得をするだとか。それが故に国の発展も期待できないのかもしれないなぁとなんとなくも思うも、自由に生きている姿を見て、その精神的自由さというか、世間体を気にしない生き方(彼らなりには気にしているのですが…)を少し分けて欲しいとも思うのでした…。

ダスビダーアニア!(それでは!露)

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