小説「きみの手、ばりきれい」#2
古来より、あらゆる人間科学において、「人間の手」というのは限りなく高尚な研究テーマの一つである。この世には、およそヒトの手とは思えないほど美しい手を持った人間がいるという。それは数世紀に一度、我々の世界へ顕現すると言われ、昔の偉い研究家によって「神の手を持つ人」と名付けられた。砂漠地帯に突如として現れる朝陽のように眩く、真夏の太陽を照り返す碧海のような、言葉ではとても言い表せないほどの美しさを備えた手。古今東西、津々浦々、遍く探し歩いても見つけられないとされる幻の存在。