マガジンのカバー画像

小説

22
鏑木が執筆した小説(主に、短編と掌編)をまとめました。
運営しているクリエイター

#短編小説

【短編小説】 僕らの生命線

 あいつと出会ったのはいつだったか、思い出せないくらい前から一緒にいた。  20代も半ばを…

鏑木澪
10日前
17

【短編小説】 怒鳴り声

「ゴミは? 誰が出しに行くの」 「あなたが行ってよ、私はご飯作ったんだから」  朝食の席…

鏑木澪
1か月前
11

【短編小説】 シーグラスは輝いて

 僕は普段、電車には乗らない。  都会では分刻みに電車が来るらしいが、田舎では平気で1時…

鏑木澪
7か月前
11

【短編小説】 彼と、中華料理屋の1時間

 待ち合わせに、閉店1時間前の中華料理屋を選んだのは、私の間違えだったと思う。  彼とは…

鏑木澪
8か月前
9

【掌編小説】 誰かと話したい

 本当に小さな出来事。  私の両親は「話したい人がいるなら会って話せばいいじゃないか」と…

鏑木澪
9か月前
49

【短編小説】 翼の生えた妹

「鳥の頭を食べたら、翼が生えるって本当?」  僕の妹は、時々、変わったことを言う。 「そ…

鏑木澪
1年前
21

【短編小説】 ”友達機能”

 友達ができた。  彼女と暮らし始めて、もうすぐ2ヶ月が経つ。  大学生になり、私は寮に入った。  選択肢に2人部屋、4人部屋もあったが、人付き合いの苦手な私は1人部屋を選択した。  入居日。  指定された部屋のドアを開くとベットの端に女の子が腰掛けていた。 「……すみません、部屋を間違えました!」  きょとんとした表情を浮かべて口を開こうとする彼女を視界から追い出すように、私は勢いよくドアを閉めた。  やってしまった。  資料を取り出して、自分の部屋の番号を

【短編小説】 墓参りのハンバーグ屋さん

 一度も会ったことのない祖父の墓参りも、もう何度目だろうか。  墓参りの意味もわからない…

鏑木澪
1年前
17

【短編小説】 召喚してみた?

 召喚術。  いや、厨二病か。  我ながら、全力で自分の腹にツッコミを入れたいが、満腹時…

鏑木澪
1年前
5

【短編小説】 降って湧いた15万円

「もう叩き返しても、あの人にはわからないから」  母が自分の父親、僕から見れば祖父と仲が…

鏑木澪
1年前
31

【短編小説】 水たまりとおしゃべり

 晴れた日の水たまりが好きだ。  乾き始めた地面に残された水が、アスファルトの色を濃くし…

鏑木澪
1年前
11

【短編小説】 夜行性な僕らは

「なにが、いけなかったんですかね?」  頭をボリボリと掻きながら口元を緩めた彼の姿を見て…

鏑木澪
1年前
13

【短編小説】 べらだらい

僕には日課がある。 毎朝、散歩がてら近所のうどん屋さんに行って朝食を食べるのだ。 握りし…

鏑木澪
2年前
103

【短編小説】 甘さがほしい。

久しぶりに、朝食を作ってみた。 目玉焼き二つにベーコン。 ジャガイモのポタージュにクルトンを浮かべた。 コールスローもある。 チンッ。 パンが焼きあがったようだ。 実家にいた頃はパン作りが趣味の時期もあったが、社会人になってからはずっと焼いていなかった。 レシピなんて、もうすっかり忘れたと思っていたが、意外と雰囲気で作れてしまった。 体は作り方を覚えていたらしい。 家にいる”だけ”と思われているんじゃないか。 あの頃、家族の誰も、毎日、”家にいるだけの私”を責めはし