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小説

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鏑木が執筆した小説(主に、短編と掌編)をまとめました。
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記事一覧

【掌編小説】 しゃっくり

「酢だ、酢!」  彼はそういって、コンロの下にある戸棚から酢をとりだした。  昼食後、プ…

鏑木澪
1か月前
10

【短編小説】 僕らの生命線

 あいつと出会ったのはいつだったか、思い出せないくらい前から一緒にいた。  20代も半ばを…

鏑木澪
2か月前
18

【短編小説】 怒鳴り声

「ゴミは? 誰が出しに行くの」 「あなたが行ってよ、私はご飯作ったんだから」  朝食の席…

鏑木澪
3か月前
11

【掌編小説】 こーれーぐーす

 沖縄そばを、ご存知だろうか。  私は、今日の昼、初めてお店で沖縄そばを食べた。  店以…

鏑木澪
8か月前
10

【短編小説】 シーグラスは輝いて

 僕は普段、電車には乗らない。  都会では分刻みに電車が来るらしいが、田舎では平気で1時…

鏑木澪
9か月前
11

【短編小説】 彼と、中華料理屋の1時間

 待ち合わせに、閉店1時間前の中華料理屋を選んだのは、私の間違えだったと思う。  彼とは…

鏑木澪
10か月前
9

【掌編小説】 誰かと話したい

 本当に小さな出来事。  私の両親は「話したい人がいるなら会って話せばいいじゃないか」と子供の私に言った。  会える人なら会って話すのがいいと、私も思う。  ただ、私が子供の頃には、すでにネットが発達していたから、10〜15分も、もしくはそれ以上離れたところに住んでいる友達の家だとか、公園だとかに集まって遊ぶより、通信で遊ぶのが主流だった。  集まったとしても、みんな端末を向け合って遊んでいる。  そのなかで、私はそんなもの持っていないから、一緒に遊べない。  私

【掌編小説】 天然たい焼き

 たい焼きに決まってんでしょうが!  今川焼きもたい焼きも同じようなもんじゃないかと友人…

鏑木澪
1年前
30

【短編小説】 翼の生えた妹

「鳥の頭を食べたら、翼が生えるって本当?」  僕の妹は、時々、変わったことを言う。 「そ…

鏑木澪
1年前
21

【短編小説】 ”友達機能”

 友達ができた。  彼女と暮らし始めて、もうすぐ2ヶ月が経つ。  大学生になり、私は寮に入…

鏑木澪
1年前
34

【短編小説】 墓参りのハンバーグ屋さん

 一度も会ったことのない祖父の墓参りも、もう何度目だろうか。  墓参りの意味もわからない…

鏑木澪
1年前
16

【短編小説】 召喚してみた?

 召喚術。  いや、厨二病か。  我ながら、全力で自分の腹にツッコミを入れたいが、満腹時…

鏑木澪
1年前
5

【短編小説】 降って湧いた15万円

「もう叩き返しても、あの人にはわからないから」  母が自分の父親、僕から見れば祖父と仲が…

鏑木澪
1年前
31

【短編小説】 水たまりとおしゃべり

 晴れた日の水たまりが好きだ。  乾き始めた地面に残された水が、アスファルトの色を濃くしている。  学校に行かなければ、と思うのだけれど、どうにもめんどくさくて、ハンドタオルを座布団がわりに腰掛けた公園のベンチに、私のお尻から生えた根がしっかりと根付いてしまったようだ。  もう、動けそうにない。  というより、動きたくない。  別に、学校で嫌なことなんてなかった。  成績も悪くないし、友達と呼べる人もいるし、親や先生に叱られることもない。  だから、ちょっとした出