三末和男

筑波大学システム情報系教授/情報可視化、視覚的インタフェース、グラフ自動描画などの研究…

三末和男

筑波大学システム情報系教授/情報可視化、視覚的インタフェース、グラフ自動描画などの研究に取り組んでいます。

最近の記事

Dagstuhlに行ってきた (3) 復路

Dagstuhlセミナーに参加してきました。ここでは、復路について報告します。復路は往路ほどの緊張はありませんが、それでも帰国便の選択に影響します。今回はフランクフルト近郊に一泊しましたが、おそらく問題なく金曜日の夜の便に乗れます。 復路復路は往路ほどの緊張はありませんが、それでも帰りの飛行機の便に影響します。当初はバスと電車でフランクフルトに戻ることを考えていました。解散が金曜日の13時とのことでしたので、13:45発のバスに乗って、St. Wendelで電車に乗り換えて

    • Dagstuhlに行ってきた (2) ホテルと食事

      Dagstuhlセミナーに参加してきました。セミナーの会場はホテル施設が併設されています。Dagstuhlのホテルとしての様子と、食事、COVID-19感染対策について紹介します。 チェックイン日曜日は15時までは無人です。我々は15時少し前に到着したので、まだスタッフはいませんでした。建物には事前に知らされていたパスコードでNewbau(新館)に入館します。入口近くのテーブルに名札が並べられているので、自分の名札と「Welcom to Schloss Dagstuhl」と

      • Dagstuhlに行ってきた (1) 概要・往路

        Dagstuhlセミナーに(はじめて)参加してきました。参加したセミナーのテーマは「Perception in Network Visualization(ネットワーク可視化における知覚)」だったのですが、ここでは、セミナーの中身ではなく、「外側」をメモとして残しておきます。まずは、Dagstuhlセミナーと行き方から。 Dagstuhlセミナードイツの ザールラント州 ヴァーダーン市(Oktavie-Allee, 66687 Wadern, Saarland)にある、Sc

        • モーフィングエッジ描画のスケジューリングを改善した話

          ネットワークの可視化にはしばしば連結図が用いられますが、ノードやエッジが少し多くなると連結図ではエッジの交差がたくさん発生し、読みにくい図になってしまいます。そのような問題への対策のひとつに「部分エッジ描画」と名付けられた手法があります。エッジの一部を描かないことで、見かけ上の混雑を減らすものです。混雑は減りますが、描かれない部分を推測する必要があります。「モーフィングエッジ描画」は、描かれたエッジの一部(スタブ)をアニメーションで伸縮させることで、視覚的な混雑を抑えつつ、推

        Dagstuhlに行ってきた (3) 復路

          ぱくりを可視化する

          高校生向けの研究室紹介ビデオをつくるにあたり、可視化研究の一分野である視覚的データ分析支援を紹介することを考えました。高校生にも分りやすい題材として考えたのが「ぱくりを可視化する」です。(紹介しているデータは実在のものではありません。) 大学の授業ではレポート課題を課すことがよくあります。COVID-19の影響で、オンライン授業が増えたこともあり、期末試験ではなくレポート課題で成績を付ける機会が増えました。学生には、課題に沿って自分自身でいろいろと調べ、自分の考えとともにレ

          ぱくりを可視化する

          情報可視化: ステレオタイプと闘うか? 利用するか?

          上の図は、タイタニック号の客室等級ごとの男女別生存率を表したグラフです。ものごとをステレオタイプで捉えることはしばしば否定的に見られます。その一方で、視覚的な表現を設計する際に、読み手の慣習に背くことは必ずしも得策ではありません。「情報可視化入門」に書いた慣習による意味付け(5.2)について、少し補足しておきます。 先日、青とピンクで塗られたつぶつぶ表現を紹介しました。 元々、青とピンクで塗っていたものを、2色刷りにする関係で、ピンクをグレーに置き換えたという話を書きまし

          情報可視化: ステレオタイプと闘うか? 利用するか?

          視覚的表現の表現規則における「凖じる」について

          「情報可視化入門」の元になった授業「情報可視化」では、視覚的表現を描くための規則「表現規則」を明示することにし、紹介する視覚的表現(いわゆるチャート)ほぼすべてについて、表現規則を示しています。この表現規則の記述において使用している「凖じる」という表現について、補足しておきます。 視覚的表現の表現規則のことは、「『情報可視化入門』執筆の裏話」と題して少し書きました。 視覚的表現(いわゆるチャート)について理解するためには、それぞれの視覚的表現が、何(データ)を(視覚的に)

          視覚的表現の表現規則における「凖じる」について

          つぶつぶ表現: 質的データのアトミックな可視化手法の意図とインタラクティブなツール

          「情報可視化入門」の第9章 多変量質的データの表現手法に登場するアトミックな表現は、実際には、仮想的な力学モデルを利用したインタラクティブなツールとして実装されています。「アトミックな表現」については、103ページのColumnで少し解説しました。 先日、本文が黒と青の2色刷りになった話を書きました。 タイタニック号の乗客の、客室クラス、性別、生死を可視化した図9.1(近接配置と色の併用による3変量質的データの表現例)も、元は下のように青とピンクを使用していますが、2色刷

          つぶつぶ表現: 質的データのアトミックな可視化手法の意図とインタラクティブなツール

          時刻データの線形性と周期性の両方に着目した可視化手法「スパイラルチャート」を3Dにする

          「スパイラルチャート」は時刻データの線形性と周期性の両方に着目した可視化手法のひとつです。スパイラルチャートを3次元空間に描いて、棒グラフと組み合せる方法を紹介します。 先日紹介したカレンダー表現の格子状バブルチャートは、カレンダー風のレイアウトにより、全体的な時間変化とともに、新型コロナウイルス関連のニュースでよく耳にする、「月曜日最多」とか、「先週の月曜日に比べて」というような特定の曜日に着目した変化も見たいという場合に便利です。その一方で、(日曜日を一番上にすると)土

          時刻データの線形性と周期性の両方に着目した可視化手法「スパイラルチャート」を3Dにする

          Horizonグラフ: 面グラフの変形で、空間効率良く時系列データを表現できる可視化手法

          「情報可視化入門」の第14章 時刻データの表現手法で紹介した「二色塗り分け擬似カラー」は、空間効率良く時系列データを表現できる可視化手法です。それに続いて紹介した「Horizonグラフ」はページの都合で例を掲載できませんでした。二色塗り分け擬似カラーに似た手法ですが、面グラフを重ねるという考え方が面白いので、ここに紹介しておきます。 「二色塗り分け擬似カラー」は、先日「新型コロナウイルスの感染状況を俯瞰するために、二色塗り分け擬似カラーで可視化した」としても紹介しました。空

          Horizonグラフ: 面グラフの変形で、空間効率良く時系列データを表現できる可視化手法

          新型コロナウイルスの日々の感染状況を、格子状バブルチャートでカレンダー風に可視化した

          この1週間も毎日のように感染拡大のニュースを聞きました。今週よく耳にしたのが、「月曜日最多」、「火曜日最多」という「曜日ごと」の最多を更新したというものです。報告される新規感染者数は曜日によって揺れがあることから、そのような表現が使われます。全体の傾向とともに、特定の曜日(たとえば月曜日)に着目した変化も見たいという場合には、カレンダー表現が便利です。 ちなみに、先日紹介した、二色塗り分け擬似カラーを使用したチャートでは、曜日による揺れを低減し、おおまかな増減を観察しやすく

          新型コロナウイルスの日々の感染状況を、格子状バブルチャートでカレンダー風に可視化した

          新型コロナウイルスの感染状況を俯瞰するために、二色塗り分け擬似カラーで可視化した

          「東京 感染『制御不能』」という見出し(2021年8月13日朝日新聞朝刊)に、ますます緊張感が高まります。テレビの報道で毎日のように見かけるのが、東京都の新規感染者数の日々の変化を棒グラフで可視化したものと、全国の新規感染者数を地図上に表したものです。感染には空間的な広がりと時間的な変化がありますが、東京都のデータは、「東京都」という場所の時間変化だけ、全国の地図は「その日」の空間的な分布だけを見せています。それに対して、全国規模の時間変化を見たいと思いました。 全国規模の

          新型コロナウイルスの感染状況を俯瞰するために、二色塗り分け擬似カラーで可視化した

          本文が2色刷りになったことについて

          「情報可視化入門」は本文が黒と青の2色刷りになりました。2色刷りはありがたい一方で、多少なりとも色を扱う本という観点では、ここにも苦労がありました。 ちなみに、ゲラ刷りの段階では、色はシアンだったのですが、最終的には青になりました。最終的な色は本になって初めて見たのですが、ノンブルや節番号のあたりの色は結構気に入っています。 黒と青の2色刷りになったことで、元の資料からは色を変えた部分が多々あります。色の3属性(図3.3)の右側(彩度と明度)は、元々は赤を使っていましたが

          本文が2色刷りになったことについて

          「情報可視化入門」執筆の裏話

          「情報可視化入門」という本を出版しました。本文に書けなかった裏話を少し紹介します。 授業科目「情報可視化」「情報可視化入門」という本は、筑波大学で学部3年生向けに行なっている「情報可視化」という授業の内容をまとめたものです。筑波大学の教育組織は、「学部・学科」ではなく、「学群・学類」ですが、その学群・学類を2007年に改組・再編しました。改組された学群の一つである情報学群に新設された情報メディア創成学類において、3年次科目として「情報可視化」が開講されることになりました。

          「情報可視化入門」執筆の裏話