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情報可視化: ステレオタイプと闘うか? 利用するか?

上の図は、タイタニック号の客室等級ごとの男女別生存率を表したグラフです。ものごとをステレオタイプで捉えることはしばしば否定的に見られます。その一方で、視覚的な表現を設計する際に、読み手の慣習に背くことは必ずしも得策ではありません。「情報可視化入門」に書いた慣習による意味付け(5.2)について、少し補足しておきます。

先日、青とピンクで塗られたつぶつぶ表現を紹介しました。

元々、青とピンクで塗っていたものを、2色刷りにする関係で、ピンクをグレーに置き換えたという話を書きました。紹介した元の図(下図)は、凡例がないのですが、多くの人には意味が分るのではないでしょうか(分ると期待しています)。それは慣習による意味付けの効果と言えます。

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慣習による意味付けはステレオタイプの利用と捉えることができます。男性は青(あるいは黒)、女性は赤といった、ステレオタイプとも言える思い込みは、言語的な解釈なしに、視覚的表現から値を読み取ることを可能にします。

筆者らは、そのように刷り込まれてきたわけですが、ものごとをステレオタイプで捉えることはしばしば否定的に見られます。しかし、ステレオタイプの善し悪しは置いておいて、ここで言いたいことは、直感的に値が読み取れるような効果的な可視化は、読み手の思い込みに背けないということです。

トイレの入口が、男性側が赤、女性側が青に塗られていたら、どうなるでしょう? 入口に「男性」、「女性」の文字があったとしても、女性なら赤の方に、男性なら青の方に入ってしまわないでしょうか。思い込みに反した表現を読もうとすると、どうしても解釈の時間が割り込んでしまいます。凡例があったとしても(つまり、入口に「男性」、「女性」の文字があったとしても)、間違う危険性があります。

タイタニック号の客室等級ごとの男女別生存率を表した下の二つのグラフはどう見えるでしょうか?

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筆者らが子供の頃のランドセルの色といえば、黒と赤だけで、男子は黒、女子は赤と決っていました。この慣習を使うと、下のようなグラフになります。

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それが今ではカラフルな品揃えで、青系のランドセルを背負った女の子もいるようです。この子達には黒は男性、赤は女性といった、ステレオタイプはないのかも知れません。機会があれば、凡例のないつぶつぶ表現の図がどのように見えるのかを聞いてみたいと思います。

慣習を利用する際に気をつけなければならないことは、他の人の思い込みが自分と同じとは限らないということです。文化によって色の意味が違うことは知られています。様々な文化における色の意味を教えてくれるツール「Interactive Colours in Culture」がありました。残念ながら今は動かないようでですが、その情報が読み取れる静止画がinformation is beautifulのサイトにあります。

データの出典: タイタニック号のデータを表した棒グラフには、Rに含まれるサンプルデータの数値を使用しています。


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