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視覚的表現の表現規則における「凖じる」について

「情報可視化入門」の元になった授業「情報可視化」では、視覚的表現を描くための規則「表現規則」を明示することにし、紹介する視覚的表現(いわゆるチャート)ほぼすべてについて、表現規則を示しています。この表現規則の記述において使用している「凖じる」という表現について、補足しておきます。

視覚的表現の表現規則のことは、「『情報可視化入門』執筆の裏話」と題して少し書きました。

視覚的表現(いわゆるチャート)について理解するためには、それぞれの視覚的表現が、何(データ)を(視覚的に)何で表すか、ということについて意識することが重要です。表現規則は、何(データ)を(視覚的に)何で表すかを整理したものと言うこともできます。視覚的表現を描くための規則と書きましたが、実際には描き手だけでなく、その一部は読み手も理解しておく必要があります。描き手と読み手の両方が理解しておく(合意しておく)必要がある部分を「基本規則」と名付けています。

視覚的表現には様々なものがありますが、それらの中には、元の視覚的表現とその拡張の関係にあるものがあります。たとえば、「バブルチャート」と呼ばれる視覚的表現は、散布図の拡張です。散布図では、配置する点の位置(横方向の位置と縦方向の位置)で2変量を表すのに対して、バブルチャートでは、点(円)の大きさで第3の変量を表します。このような関係にある場合には、拡張した視覚的表現の表現規則には「○○に凖じる」と書いている場合があります。

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このような書き方をするメリットは二つあります。ひとつは、元の視覚的表現と拡張の差が分りやすいということです。両方の表現規則を「○○に凖じる」という表現を使用せずに書いた場合には、その違いを把握するために、二つの表現規則を見比べる必要があります。これは時にはかなり面倒な作業です。もうひとつは、拡張の説明において、同じ記述を繰り返さなくてすむため、文字数(つまりはページ数)を節約できるということです。

少し話が逸れますが、これは、オブジェクト指向プログラミングでいうところの、クラスの継承だと考えることもできます。散布図を描くクラスがあれば、バブルチャートを描くクラスを、散布図のクラスを継承するサブクラスとして効率的につくることができます。表現規則だけでなく、可視化のためのプログラムでも同様の書き方ができるということです。

視覚的表現を読み手に説明する場合にも、同様の表現を使うことがあります。よく知られているチャートを拡張したチャートを利用する場合や、先に紹介したチャートを拡張したチャートを利用する場合などです。そのような場合には、このチャートの読み方は「○○に凖じます、ただし△△で□□を表しています」のような説明をすることで、説明を簡略化できます。

ただし、授業ではこのあたりの意図がうまく伝わらないこともあり苦労します。ある視覚的表現の表現規則を書きなさいというような課題を出すと、出題側としては、よく知られている散布図だろうが棒グラフだろうが、表現規則を丁寧に書いてくることを期待しているにも関わらず、授業資料をまねて「○○に凖じる」とだけ書いたものがでてきます。ということで、課題の際には「○○に凖じる」は禁止にすることにしています。

データの出典: 気象庁(ここで紹介した図のデータ(気温と湿度)の出典は気象庁ホームページです)


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