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災害時情報流通のパラダイム・シフトに対応するために—生成AI時代の”情報災害”を防ぐ—


東日本大震災から13年が経ちました。今年は元日に能登半島地震が発生し、2ヶ月が経ったいまもなお、1万人を超える人々が避難所での生活を余儀なくされています。本稿では、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)におけるインターネットと災害の関係性や課題の変化と、JX通信社が取り組む対策について紹介します。

1.はじめに—3.11から13年。インターネットの情報空間はどのように変遷したか—

2008年に日本語版サービスが開始されたTwitter(現X)は、2010年にはユーザーが国内1,000万人を超えました。その翌年に発生した東日本大震災は、ポストSNS時代の最初の大災害だったと言えます。マスコミの情報だけでなく、SNS上で個々の被災者が被災情報や安否情報を直接発信し、「励ましあい」や「呼びかけあい」など、個人間のつながりも含めて、大きな力を発揮しました。

それから5年後の2016年、熊本地震では、ボランティアの連携や、自治体からの情報発信でも大いにSNSや無料通話アプリが活躍しました。他方、「地震によって動物園からライオンが逃げた」という偽情報に代表される、「災害時の偽情報」について問題意識が高まりました。この時点での「偽情報」は愉快犯的なものが主で、既存のインターネット上の画像を使いまわしたものなどがメインでもあり、「情報リテラシーを高めて、偽情報に騙されないようにしよう」という呼びかけが、対策の主体でした。

一方、2024年1月に発生した能登半島地震では、以前にこのnoteでもご紹介したとおり、生成AIを用いた「インプレゾンビ」やAI生成画像の拡散、「エコーチェンバー」と呼ばれる情報のタコツボ化現象の深刻化など、単なる情報リテラシーだけでは解決しない、SNS空間全体の汚染が広がる状況が顕在化しました。

災害時のSNSの活用については、この13年間でその活用可能性も、課題も、大きなパラダイムシフトを迎えました。デマ・フェイクニュースなどの偽情報は、”情報災害”といえる状況となっています。もはや個々人の注意だけでは解決せず、社会全体で対策の実装が必要な状態です。

2.生成AIによる”情報災害”の深刻化

”情報災害”が発生する背景には、大きく2つの要因があります。

偽情報の2つの要因。心理的な要因の解決は困難だが、技術的な要因は対応可能。

第一に、「心理的な要因」です。大昔から、社会不安に乗じて、噂などのかたちで偽情報が広まることは、歴史上も繰り返されてきました。中世の魔女狩りや、1940年代のアメリカにおける水道水フロリデーション陰謀論に見られるように、偽情報が広まることで、迫害やサービス提供の遅滞などの社会の不利益に繋がりました。

このような「心理的な要因」に対して、近年急速に脅威となっているのが「技術的な要因」による”情報災害”です。具体的には、生成AIによって、専門的なデザインやプログラミングなどの技能を持たない人でも、簡単にかつコストを掛けずに、リアリティのあるフェイク画像を用いた偽情報を作ることができるようになりました。こうして作られた偽情報は、一般の市民には真贋判定が極めて難しく、独自の分析技術や専門的な知見が必要となります。

生成AIにより作られた偽画像。人と建物のバランスの違和感や、不可解な建築構造から偽情報と判断できるが、一見するだけでは本当の画像と誤認しかねない。

真贋判定の難しい偽情報は、災害時には救助活動や復旧支援に大きな悪影響を与えます。実際に、能登半島地震の発生直後には、救助要請と誤認しうる偽情報を、当社も多数検知しています。

3.”情報災害”を防ぐために

前述した2つの要因のうち、「心理的な要因」は、人類の普遍的な課題であり、根本解決は困難です。他方、「技術的な要因」については、近年の急速なリスクの高まりに対する対応が必要です。

SNS上では、公的機関や報道機関のアカウントへ認証バッジの付与やユーザーによる通報、Twitter(現X)ではコミュニティノートと呼ばれるユーザー間による正確性の検証など、プラットフォーム上での対策が行われていますが、決定的な対策とはなっていません。

いま求められる対策は、生成AIなどを通じて量産されていく偽情報を上回る量で”確かな情報”を発信する仕組みです。生成AIを用いた偽情報は、人の手を介在しないため低コストで大量に発信されていきます。これに対抗するためには、"確かな情報"も、AIやさまざまな技術を活用して、なるべく人の手を介さず、素早く大量に発信していく必要があります。

4.JX通信社では「NewsDigest」と「FASTALERT」を通じて、情報災害の抑制を目指します

JX通信社では、市民参加型速報ニュースアプリ「NewsDigest」(ニュースダイジェスト)と法人・自治体等のプロフェッショナル向けAIリスク情報収集サービス「FASTALERT」(ファストアラート)を提供しています。
この2つのサービスを通じて、”確かな情報”を社会に発信していく仕組みを提供しています。

両サービスとも、インターネット上のリスク情報や、ユーザーの皆さんから寄せられた目撃情報を収集し、自社AIと専門スタッフによる監視で真贋判定を行い、”確かな情報”だけを発信しています。

JX通信社の情報発信の仕組み

市民参加型速報ニュースアプリ「NewsDigest」の詳しい使い方は以下の記事をご参照ください。

JX通信社は、インターネット上に溢れている情報から、AI技術を活用し、”確かな情報”だけを市民の皆様に提供します。そして、市民の皆様から”確かな情報”を提供いただき、更により多くの”確かな情報”を発信していく正のループを作っていきたいと考えています。偽情報を打ち消す”確かな情報”を発信し、”情報災害”による被害を防ぐため、引き続き取り組みを進めてまいります。

ぜひ「NewsDigest」をインストールいただき、身の回りのリスク情報をご確認ください。そして、”情報災害”を抑制するため、皆様からの”確かな情報”のご提供をお待ちしております!

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