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だから「映画」はやめられない

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「映画」は人生の清涼剤に違いありません。 でも、なんでこんなに惹かれているのか、自分でもよくわかっていません。その理由が知りたくて、時々考えたりしてもいますが、やっぱりよくわかり…
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妄想SF映画「御先祖様万歳」(ネタバレあり)

 映画化を試みることにした。  原作は54年前に書かれた小松左京氏の短編SF「御先祖様万歳」。  主人公の木村三平は、失業し田舎に帰ってくる。「神隠しの山」とよばれる裏山で、不思議な洞穴を見つける。なにげなく中に入り、出てきたのは入口と同じ風景。ぐるりと回ったらしい。が、よくよくみると微妙に違っている。出た側は1863年。文久3年、いわゆる幕末である。「神隠し山」の洞穴は、タイムトンネルだったわけだ。  これはいい。  ハリウッドばりのとてつもないセットもVFXも必要もない

今度のエルビスさん

 エルビスさんは今も世界中にいて、どんな小さな催し物にも出てくれて、集まった人たちを楽しませてくれる。  今度のエルビスさんは、それはそれはもう気合い十分、世界中のエルビスさんのなかでもトップクラスだとは思う。  スクリーンの中の新しいエルビスさんは、それまで彼のことをあまり知らなかった僕にも自分がどんな人間だったかを教えてくれた。ラストシーンでは、思わず目頭が熱くなってしまうほどだった。  スクリーンの中ではエルビスさんはずいぶんまえに亡くなったというけれど、数年前に

わずか一言、短文の名手か!?

 日に日に、そいつの存在が気になりだした。  思い切って、向かい合うことにした。 「こ、これは…!?」  たいそうに構えたけれど、なんということはない。  某日記サイトのページ間にときおりあらわれる一行広告のこと。  前々からぼくは、このわずか一行の言葉が妙に気にかかっていた。それでクリックした。  跳んだ先は、アマゾンのサイト。  つまり一行広告はアマゾンで販売している映画のDVDやビデオの宣伝文だったわけ。  まるで映画のタイトルあてクイズみたいで、面白くなってしま

ドレスコードの悪夢

 サラリーマンであれば、とりあえずはスーツにネクタイ、革靴。  これが恐ろしいことに、どこでも通用する。ラフにしたい時は上着を脱ぎ、ネクタイを外せばいい。便利だ。  ただし、日本に限る。海外では行き先やその場、仕事にあわせたドレスコードが存在する。 「日本人はいつでもスーツだから堅苦しく、つきあいにくい」  と、云われたことがある。  ビジネスの場においても、スーツを着ているのは経営陣やファイナンス関係者であって、ぼくらのような自由業は絶無に等しい。  来週からロスに行

カウボーイからの、ウルトラマン

 先週、「シン・ウルトラマン」観に行きました。  庵野監督と同世代の人間としては、ウルトラマンがまさにウルトラマンで、初めてテレビで見た子どもの頃の感情と好奇心が蘇り、実によかったです。震えましたねえ。  翌日、DVDですが「真夜中のカーボーイ」(あえて邦題は”カウボーイ”ではないそうです)を観ました。  1969年のアメリカ映画で、アンジーのお父さんであるジョン・ボイドとダスティン・ホフマンが主演をしています。この映画はそれまでの勧善懲悪、道徳善的英雄的主人公像、ハッピ

海の外に吹く風まかせ

 明日なにが起こるかわからない。  拙作映画「フローレンスは眠る」が突然、海を渡ることになった。
   来月(2017年5月)、ロサンゼルスで開かれる映画祭に、正式出品作として選ばれた。  『New Filmmakers Los Angeles Monthly Film Festival』  という映画祭。日本ではまったく知られていない。ぼくも知らなかった。  実はエントリーされていたことさえまったく知らず、いきなり「Congratulations!」とメールを頂いた。

今日だけは語らせて「七人の侍」

 俳優の前田吟さんと拙作映画でご一緒させていただいた時、撮影待ちのあいだ黒澤監督の映画「七人の侍」の話で盛り上がった。 「ボクはね、高校生の時『七人の侍』を観て、俳優になろうと思ったんだ」  また、山本學さんも、 「志村喬さん、よかったよなあ」  と、志村さん演じた勘兵衛のように頭をさする真似をした。  大ベテランの俳優さんは事細かにシーンやセリフを覚えていて、きっと何度もご覧になられたのだろう、心から楽しそうに語ってくれる眼は子どものようだった。  ぼくも、弟の健二

肉体を帯びる言葉を探して

 映画を観る楽しみの一つに、セリフがあります。  名セリフっていうやつです。出会えると、チョコボールで金のくちばしが当たったときのように興奮します。  逆にそれを書くというのは至難の技。書きたくてもなかなか書けません。  映画にはシナリオという本があります。  演劇では「戯曲」といいます。  映画を作る前ぼくは劇団を持ち、演出兼座付き作家を担当していたので、戯曲を書くことが仕事でした。  故・井上ひさしさんは小説家で、劇作家でもありましたが、井上さんの描かれる世界は、年齢

10年に一度の迷言 

 開口一番かならず、  「どうして、兄弟そんなに仲がいいんですか?」  これまでお会いしたすべての方からはほぼ全員にそう聞かれ、あげくのはてには、  「気持ち悪い」  と、始終いわれております。  その気持はわかる気もする。  美しい姉妹ならいざしらず、いい年したオッサン兄弟の仲がいいって、たしかに気持ち悪い。  日本では兄弟の映画監督は珍しいそうですが、海外ではコーエン兄弟、ウォシャウスキー姉妹をはじめ、兄弟姉妹での映画監督はたくさんいます。  これは監督に限らず

マントは心のともしび

 MA-1、ことし(2016年)流行ってるんですってね。  このアメリカ軍のフライトジャンパーが、なんでまた今頃?と不思議な気がしますけど。  MA-1といえば、ボクにとっては映画「ハンター」。  癌となって余命を宣告されたスティーブ・マックィーンが、遺作として主演した映画です。ぼくは彼の最高傑作と思う映画ですが、その理由のひとつが、全編通して彼が着ているMA-1。  これが、とにかくカッコよかった。  映画のせいもあったのか、当時すごく流行りまして、もちろんボクもソッ

ポルコは乗せて。

 ぼくは宮崎駿監督の「紅の豚」が大好きです。  数ある宮崎駿監督の作品のなかで、「紅の豚」はいっぷう変わった作品でしょう。  宮崎駿監督の映画作りにかける姿勢は、およそ子どもから大人まで楽しめる作品をつくることで、それは「千と千尋の神隠し」が興行収入300億円という日本歴代興収No.1を記録し、いまだに破られていないこと(2016年現在)が証明しております。  そんな中で「紅の豚」は、子どもと女性を意識しないで作られたとしか思えません。  もともとプラモデル雑誌に連載され

ホラーはトイレに中に

 低予算で映画を作るとなると、外せないジャンルがホラー映画。  ストーリーやキャストよりも、いかに新しい手法でお客さんを怖がらせるか。これがホラー映画のミソだときいた。  ホラー映画には「とにかくホラーと名付けば、全部見る」という熱狂的なファンがたくさんいて、数百万円の低予算でつくっても、当たれば興行収入何億円と大化けするのだそうだ。それがお化け映画といわれるゆえんか。  つくればいいのに、となんどか勧められた。  しかし、ぼくはホラーとかオカルト映画はいっさい作りません。

映画は✖️✖️を孕んでいる

 映像と映像をつなぐことを『編集』といいます。  撮影現場は映画製作でも一番わかりやすいところですが、「編集」はあまり知られていない作業かもしれません。しかし映画が映画になる瞬間、とでもいいましょうか。編集作業はほかのゲージュツにはないプロセス、一番特徴のある部分です。  ぼくはこの編集作業が一番好きです。ちなみに一番キライな作業はシナリオ執筆です。まぢキライ。  編集には編集者という専門職の方がいますが、自分でやりたいという監督もたくさんいます。黒澤明監督は、  「

ボギー、俺も男だ

 愛した人との別れから、二度と女性に関わらないときめた。  女性からの誘いも、あえて嫌われるようきっぱり断る。  「きのうはなにしてたの?」  「そんな昔のことは覚えていない」  「今夜は逢える?」  「そんな先のことはわからない」  粋なセリフじゃありませんか。  名作「カサブランカ」(1942)は全編名セリフのオンパレードの、大人の恋愛映画でありましょう。  『ルイ、これが美しい友情の始まりだな』  『君と幸せだったパリの思い出があるさ』  『君の瞳に