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1990年代〜2020年の邦楽バンドの思い出を5つのジャンルで振り返る

以前、邦楽ロックの歴史について1950年から1980年代までまとめてみました。プレスリー旋風から、インディーズ〜渋谷系ブームくらいまでですね。

記事の終わりに、1990年代以降のバンドブームをちょろっと書いたんです。これが非常に多様化していて、もはや「つかみどころがなくてかけない」のが現状なんですね。

インターネットが発達したこともあって、いろんなカルチャーが同時多発的に誕生するわけだ。だからほとんどのメディアでは、渋谷系を終着点として歴史を語るのをやめているんです。

ただ1990年代から2021年まで生きている身として、よくよく思考を巻き戻してみると「なんらかのカルチャー」は確実に残っていた。

だが、多様化しすぎて、1つのラインでは到底追えないのである。そこで今回は「5つのジャンル」に分けながら1990年代〜2020年現在までの邦楽ロックの歴史について、あらためてみてみよう。

完全に音楽少年として同時期を生きてきた私の知ってる範囲で書いていきますので、もちろん漏れとか記憶違いもあるでしょう。ぜひそこはコメント欄で教えてください。みんなで作っていこう。

1990年〜2020年の邦楽バンド J-POP系ロックバンド

J-POP系ロックバンドってなんだよ。どっちだよ。と自分でも思うが、1950年代以降、日本のロックは歌謡曲に喰われてきたのを見ると、ロックとポップの境界なんて、もはやこの国ではあってないようなもんだ。 退廃的すぎるかしら。

このジャンルにおいて1992〜3年はかなりメモリアルな期間で、Mr.Children、ウルフルズ、スピッツなど、今もまだメジャーシーンで活躍するロックバンドが次々に出現した。もはやロックなのか? という論争は先述した通り、やり尽くした感があるので割愛する。

これらのバンドはモロメジャー志向だが、それぞれにカラーがあり、1990年代のチャートをガッツリ掻っ攫う。そしてこのジャンルの共通点として「メジャー志向すぎてバックグラウンドがよくわからない」という点がある。ではその系譜をちょっと並べてみよう。

2000年代に入ってBUMP OF CHICKEN、RADWIMPSをはじめとするいわゆる「歌詞系」のバンドがオリコンを席巻する時代が到来。みんなラッドの歌詞をjimdoで作った個人サイトのトップ画にしていたのはいい思い出です。

またオレンジレンジ、ロードオブメジャー、HY、レミオロメン、Aqua Timesなどもこの「いまいちバックグラウンドがわからないメジャーバンド」の系譜な気がする。

この時代ではリップスライムやケツメイシなどのラップミュージックが流行ったこともあり、メジャー系バンドも曲中にラップを入れ込むのが通常だったように感じる。後述するが、ミクスチャーロック(ラップロック)もこの時期に流行った。

2010年代に入ると、それまでのJ-POP系ロックバンドの系譜は、かなり少なくなった印象だ。[Alexandros]、クリープハイプ、ゲスの極み乙女、UNISON SQUARE GARDEN、などがJ-POP系バンドの代表格だろう。

少し過激化した歌詞世界のなか、back numberのヒットは個人的に「おぉ、なんかミスチル・スピッツの世界観が戻ってきた」と思った。ちょっと歌詞がナヨナヨしてる感じとか。その後でいうとMrs.Green Apple、sumika、マカロニえんぴつ 、Official髭男dismも、個人的にはイマイチバックグラウンドがわからない。しかしメジャーシーンでも、いまだにバンドが残っているのは嬉しい限りだ。

1990年〜2020年の邦楽バンド 〜ヴィジュアル系〜

1980年代にX JAPANが始めたビジュアル系。ビジュアル系という言葉はhideが作ったものだ。1990年代初めにはSHAZNA、MALICE MIZER、FANATIC◇CRISIS、La'cryma Christiがヴィジュアル系四天王といわれ、なかでもSHAZNAのボーカルIZAMは女形をはじめた人として知られる。

このムーブメントがメジャーまで浸透するのは、YOSHKIプロデュースのGLAY、そしてL'Arc〜en〜Cielや黒夢のデビューだろう。もっともラルクに関しては、NHKの番組でヴィジュアル系に括られることに怒った、というエピソードがあり本人たちとしてこの括りに入れられることは望んでいないのかもしれない。

そしてこうした1990年代前半からのブームを受けて、2000年代初頭には、ネオヴィジュアル系という流行があった。Gazette、ナイトメア、プラスチックツリー、シド、アンカフェなどのバンドが出てきて、V系専門誌が売れに売れ、VバコというV系専門のライブハウスが流行る。NHKではネオヴィジュアル系のみの番組まであった。

このブームが冷めた後から、ヴィジュアル系は冬の時代に突入するが、近年だとゴールデン・ボンバーのデビューは久々にV系が表舞台に出てきた、といってもいいホットなニュースだ。バンドといっていいかは分からんが。

1990年〜2020年の邦楽バンド 〜ギターロックの系譜〜

1990年代にその後の多くの邦楽バンドに影響を与えるグループとしてナンバーガール、eastern youth、the pillows、スーパーカーなどのギターロックバンドが生まれる。

これらのバンドの影響はかなり大きく、2000年代にはギターロックブームもあったのは間違いない。モロに影響を受けているアジカンをはじめ、ART-SCHOOL、BURGER NUDS、チャットモンチー、ストレイテナー、ACIDMAN、さらに先述したBUMP OF CHICKENもこちらに括ってもいいだろう。

2010年代に入ると、9mm Parabellum Balletなどを擁するインディーズレーベル・残響レコードが軽いムーブメントを起こし、前衛音楽を広めていく。PEOPLE IN THE BOX、cinema staffなどのバンドが出てきた。さらに相対性理論をはじめ、パスピエなどの「少女性バンド」も躍進。

さらにアジカンのコンペで入賞してデビューするKANA-BOON、KEYTALKなどが「4つうち文化」を流行らせた。このころ一時期、どのバンドも4つ打ちだった。

4つ打ちが止んだ後は、またエイトビートにテレキャスターをかき鳴らす音楽性が戻ってくる。アルカラ、andymori、BaseBallBear、最近ではキュウソネコカミ、The ORAL CIGALLETS、ポルカドットスティングレイ、リーガルリリーなどはこの系譜だろうか。

1990年〜2020年の邦楽バンド 〜パンクムーブメント〜

1980年代からアメリカで流行していたハードコアパンク、メロディックハードコアなどのジャンルを日本に持ち込んだのはHi-STANDARDに違いない。

彼らは1990年台後半に日米でミリオンを達成。さらに「AIR JAM」という自主企画での音楽フェスを1997年に立ち上げた。BRAHMAN、BACK DROP BOMB、KEMURIなどのバンドが1990年代中ごろから一緒にこのブームを盛り上げていく。

さらに2000年代から台頭するその子世代は、いわゆるAIR JAM世代といわれる。10-FEET、HAWAIIAN 6、OVER ARM THROW、locofrank、ELLEGARDENなどの子世代が出てきて、このシーンをどんどん盛り上げていった。

さらにAIR JAM世代のなかから、GOING STEADYをはじめとする「青春パンク」が同時期に日本語パンクを歌い始める。175R、ガガガSPなどはメジャーシーンでも活躍しはじめた。

また特に多様化するのがこのジャンルの特徴。2000年代にはBACK DROP BOMB、KEMURIなどのスカ、レゲエに加えてラップを取り入れたミクスチャーロック(ラップロック)がブームとなり、Aqua Timezやオレンジレンジのほか、Dragon Ash、RIZE、SHAKALABITTS、マキシマムザホルモンなどが出てくる。

また2010年代からはメロコアブームから派生して、スケートロック、スクリーモなどのジャンルが生まれはじめ、Coldrain、Pay money to my pain、SIMなどが台頭。ミクスチャーロックでいうとMAN WIT H A MISSIONなども出てくる。

ハードコアからメロコア、スカ、ミクスチャー、青春パンク、スケートロックと、ものすごく多様化するパンクムーブメントは、いまだに各地のライブハウスで愛され続けるジャンルだ。2020年現在、King gnuはミクスチャーロックアーティストといっていいだろう。

1990年代〜2020年代の邦楽バンド 〜おしゃんてぃ系〜

一方で、ロックと最もかけ離れたバンド文化でいうと力の抜けたユーモラスでおしゃれなバンドも代々続いているものだ。

1980年代の山下達郎、大瀧詠一などによるシティポップ、また渋谷系カルチャーを経てデビューするのがフィッシュマンズ、サニーデイ・サービス、クラムボン、オリジナルラブ、キリンジ、SUPER BUTTER DOG、Cymbalなどのバンドである。1990年代からこれらのバンドは、ポップスを主体に、心地の良いグッドミュージックを提供していた。

2000年代に入り、このジャンルにはインストバンドがよく入ってくる。toe、SPECIAL OTHERS、SAKEROCKといったバンドが本格的に活動を開始した。

その後2010年代の後半からシティポップブームが再燃したのは記憶に新しいところ。cero、Suchmosの二大巨頭を先駆けに、D.A.N、never young beach、Yogee New Waves、踊ってばかりの国などのバンドが流行り始め、ファンクやジャズを取り入れた楽曲を披露することになった。

音楽は多様化フェスの時代に

さて、私の知っているところで言うと、こんな感じでしょうか。もちろん、ここで紹介したバンドに限らず、あらゆるムーブメントがあったのは間違い無いだろうし、いろんなジャンルの特徴をまぜこぜにしたバンドも現れた。

しかしおもしろいのは、現在「音楽はみんなで楽しむもの」という考えに戻っていることだ。もともとダンスフロアで踊っていたプレスリーの時代にはウォークマンもプレーヤーもなかったので、音楽を聴くためにはディスコにいく必要があった。だから必然的に音楽はみんなで聴くものだったんですね。

しかし今はこれだけ機器類が溢れているが、フェス乱立時代だ。フジロックやロックインジャパンなどの総合的なフェスはもちろん、メロコア勢を集めた10-FEET主催の「京都大作戦」グッドミュージックを集めた「CIRCLE」「森、道、市場」など、ジャンルに偏ったイベントも増えている。

また音楽は一周して「一人で楽しむもの」から「みんなで楽しむもの」に変わってきている。これはとても興味深いですよね。

そんななか、シーンを支えるバンドたちは凄まじく大変だ。その大変さは、5年ほどライブハウスで働いていた私はよく分かっているつもりである。

なので、コロナは綺麗事抜きで苦しかった。しかし2021年、ようやく各地のフェスが開催されそうな空気に変わってきているのは、とても嬉しい。

今年はぜひ、みんなでフェスを楽しもうではないか。そしてバンドの生音で、いろんな思い出を振り返ってみてはいかがでしょう。

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