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映画『聖なる犯罪者』が、すごい!

なかなか映画館に行きづらい日々が続きますが、この作品はどうしてもすぐに観たかったやつです。(1月15日公開)
劇場の予告編で観た時から、もうこれ間違いなつじゃないかとめっちゃ期待してしまった映画。そのくらいこの作品から醸し出されるオーラがすごかった。

今回は、そんな映画『聖なる犯罪者』をネタバレなしで紹介したいと思います!


『聖なる犯罪者』

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2019年 ポーランド、フランス 116分
監督:ヤン・コマサ
出演:バルトシュ・ビィエレニア、エリーザ・リチェムブル、アレクサンドラ・コニェチュナ、トマシュ・ジェンテク

聖職者になることに憧れるダニエルは、少年院を出ると就職先の製材所に向かう途中の教会に立ち寄る。そこで自分は神父であるとつい嘘をつく。
そこから勘違いで、病気の司祭に代わりに実際に神父として振る舞い、その自由なやり方で徐々に村人の信頼を得てゆくのだが…

というお話しです。
少年院を出てるだけに見かけもとてもヤンチャな若者です。犯罪者であって聖職者ではないのですが、司祭の格好をしてそれらしく振舞うことで人々は彼を聖職者とみなし、やがて徐々に信頼を寄せていきます。

その辺りがこの映画の面白いところです。


海外版ポスター

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こちらの方が、司祭の服をきてタバコを吸う姿が写真一枚で両面性を表現できていて個人的には好きです。
でも映画を見てないとこの姿が司祭の服かどうか分からないかも。


本作の見どころ 

ここからはこの映画の見どころをいくつか取り上げていきたいと思います。

◎ハラハラドキドキな展開
少年院から出たばかりなのに嘘をついて神父だと言うものの、用意周到な計画などでは全くないためさっそくバレそうになります笑
とにかくいつバレるんじゃないかと結構ハラハラさせられます。

◎犯罪者は聖職につけない
そうなんです。少年院に入っていて犯罪者のダニエルはいくら憧れても聖職者になることは絶対にできません。
だけど嘘の神父ダニエルは人々の懺悔を聞き、村の課題を解決しようとしていきます。そして徐々に人々の信頼も得てゆく。

◎村で禁忌(タブー)のある事件
通りに複数人の慰霊があり、何か事故か事件があったことが窺える。
誰もそれについて話そうとはしないのだが、ダニエルはそこに踏み込んでゆく。

◎徐々に背景が分かるミステリー仕立て
物語が進むにつれて徐々に登場人物たちの背景や、人々の関係性、どういう事故だったのか、ダニエルの過去などが明らかになっていきます。
点と点が線になっていく感じ。この構成がとても巧い!

◎細かな演出
ダニエルが最初神父の家に案内される時、犬がめっちゃ吠えます。
それだけで何となく怪しい人間が家に来たという雰囲気にさせられる、このシーンは引きの画で一瞬なんですが、そういう細かな演出でこの作品の怪しげな世界観を作り上げています。

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本作を読み解くポイント

キリスト教のことをあまり知らないのでそこを分かっていればもっと理解が深まると思うのですが、この作品ではいろいろな対比が出てきます。

・犯罪者と聖職者
・本物と偽物
・善人と悪人

だけどそれらが一体だったり、どちらがいいのか分からなくなってきます。
ダニエルは偽の司祭だけど、前任の本物の司祭には問題がある。
我々は善人であるという村人たちも他人を攻撃する陰湿さがある。

事件の真相も見え隠れし、一方的な見方で判断できない様相を呈してきます。 この辺りの対比がひとつのポイントになってきます。

「信じるとはどういうことなのか」

なかなか深いテーマがありますし、考えさせられます。
キリスト教についての背景はパンフレットにコラムが書かれていますので、それがとても参考になります。ダニエルの名前の由来や聖書のエピソードなど、そうなのかーっていうことが知れます。


ポーランドでの実話

この映画の元ネタは、なんと実際にポーランドであった事件なんだそう。
ある少年が嘘をつき3ヶ月間も司祭として過ごしていたんだとか。
完全に神父の仕事に魅了されていて本当の神父になりたかった19歳の少年、彼がこの物語のベースとなっている。

そしてポーランドでは毎年のように偽司祭事件があって、決して珍しいことではないんだとか。なんだそりゃ。
司祭になることでなりたかった自分や、得たかったものが手に入ると思っている人がとても多いのでしょうか。


注目のヤン・コマサ監督

本作は、昨年のアカデミー賞で国際映画賞(外国語映画賞)にノミネートされていました。(受賞したのは『パラサイト 半地下の家族』!)
でもこの時は確かまだ原題だったしどんな作品か全然知らなかったけど、やっぱりチェックしておくべきですね。

監督のヤン・コマサは、本国ポーランドでヒット作を作り、現在ではNetflixで新作映画を作り、HBOでもTVシリーズ化が決まっているとかで、売り出し中の注目株です。


最新作がNetflixで配信中!

本作の脚本家マテウシュ・パツェヴィチと再びタッグを組んだ最新作『ヘイター』(20)がNetflixで配信中です!

フェイクニュースを題材にしたインターネットの闇を描く作品です。

ヘイター


他にも関連作品

本作のパンフレットでレビュー寄稿されているお二方がそれぞれ関連作品を挙げられていて興味深かったのでこちらでもピックアップします。

『偽牧師』 (チャーリー・チャップリン)
こちらは、國學院大學名誉教授の井上順孝さんが似たような題材として挙げられてました。


『ナサリン』 (ルイス・ブニュエル)
こちらは、映画誌・比較文学研究家の四方田犬彦さんが映画のテーマ性が似ているとして挙げられてました。


インスタでもアップ

最近インスタを始めまして、そこでも映画情報を発信してます。
インスタでは割とライトに気になった作品や面白かったものを随時気軽にアップしてます。


最後に

昨年は1月にパラサイトはじめ傑作ぞろいだったのに比べ、今年は大作もなくやや大人しめではありましたが、これは凄かったです。
観れて良かった。

今年は公開作品がちょっと少なくなるかもですが、できるだけたくさん観てここでも紹介していければと思います。


最後までありがとうございます。

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