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【ブックセレクト】出会いについて感じさせてくれる本は?

今年は一体どんな出会いがあるかな?
人生は何歳になってもわくわくです。
人との出会い。
新しい趣味との出会い。
新しく開拓するレストラン。
初めて食べる料理。
まだ読んでない本との出会い。

ところで、出会いについて
改めて考えさせてくれる本て何だろう?
うん、あれ、本は、物語は基本的に
誰かと誰かが出会っていく。
出会いがない物語はないですね。

なかでも、出会いについて取り分け
感じさせてくれる本というのが
ある気がします。

真っ先に思い浮かぶのは
レイモンド・カーヴァー『大聖堂』です。
ある男がいます。彼には妻がいます。
ある日、突然、妻が昔仲良くしていた
年老いた盲人が、家にくることになる。
男は人生で初めて盲人と接することに
とても困惑し、早く妻よ来てくれと
心中深くでは願いながらも、
妻はなかなか合流できず、
盲人と何時間も過ごすことになり…?

人が人とまっさらな状態で出会い、
関係性を築くってこんなことだろうか?
という発見をくれる短編です。

考えてみれば、物語、文学って
誰かの人生が書かれてる訳だから、
普通に主人公はどんどん他人と
出会っていくのは当たり前です。
恋愛小説、お仕事小説、
家族小説、冒険小説、ミステリー、
どれも人間一人では進みませんね。

でも、出会いを余り重視しなかった
型破りというか不思議な作家がいます。
『砂の女』や『壁』『他人の顔』を
書いた安部公房です。
彼の作品では、主人公が人と出会っても
その心は孤独です。
安部公房は孤独を書き続けた作家
だったかもしれません。
「人生は出会いが大切だよなあ」なんて
薄っぺらい感動を表現するつもりは
毛頭なかったようです。

さて、かなり脱線してしまいました。
出会いの重要さを書いた本は
他にどんなものがあるでしょうか?

これも海外ものになりますが、
パッと浮かぶのは、
20世紀アメリカを代表するミステリー
『ロング・グッドバイ』。
レイモンド・チャンドラー作。
タフさと繊細さを併せもつ探偵
フィリップ・マーロウと
奇妙な大富豪の出会いから始まる
『ロング・グッドバイ』は
ミステリーの枠に収まらない
美しい小説です。

あら、これは偶然ですが、
『大聖堂』も『ロング・グッドバイ』も
村上春樹が翻訳していますね。

出会いといえば、
ある老作家と子猫との出会いを
愛しさたっぷりに書いた作品があります。
内田百間『ノラや』です。
猫文学の最高傑作でもあります。
内田百間の庭にある時から
親子猫が住み始め、可愛く思った百間は
家に入れて飼うことにしたんです。
ワンマンで不遜な強面キャラですが、
この猫を相手にする時だけは、
もう言葉通り、猫可愛がりをする様は
読んでるこっちはニヤけてしまうほど。
ネタバレは避けたいので、あまり多くは
言えませんが、『ノラや』は
何度でも読める傑作です。

出会いといえば、そうそう、
漫画『ブラックジャック』も、
毎回色々な患者との出会いがありますね。
それなのに、ブラックジャックの心には
ずっと孤独さが溢れているようでした。
あの孤独感には、手塚治虫の孤独が
密かに反映されているような…。

それから、出会いについて
最もシンプルに語ってくれる名作を
忘れていました。『風の又三郎』です。
宮沢賢治の代表作ですね。
お読みの方々も多いと思いますが、
この物語も、最後はむしょうな寂しさで
心がキュンとしますね。
出会いと孤独はどこかつながってる
のでしょうか?

出会いについて感じさせてくれる本の
セレクトは、こんな感じでしょうか。

『大聖堂』レイモンド・カーヴァー
『ロング・グッドバイ』
レイモンド・チャンドラー
『ノラや』内田百間
『ブラックジャック』手塚治虫
『風の又三郎』宮沢賢治

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