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【作家の本棚】開高健は読書人として、貪欲でした。

開高健は好きな作家ベスト5には
入る大好きな人です。
彼には幾つか特徴があります。
(1)ドストエフスキーが苦手。
長編作家が苦手。短い作品を
愛好してました。親近感が湧きます。
(2)知識人的になることを嫌った。
同時代作家で知識人志向の
大江健三郎とは微妙な仲でした。
開高はあくまで行動する作家でした。
(3)日本文学の「伝統」である
私小説を嫌い、打破しようとし、
なのに、ベトナム戦争従軍以降、
「私」語りが増えて、
私小説的な作品を書きました。
開高健は自らの私小説作家的な傾向と
どう折り合いをつけるかに
作家人生をかけた人でした。

開高健には
『開高健の文学論』(中公文庫)という
文学エッセイ集があります。
もともとは違うタイトルでした。
『衣食足りて文学は忘れられた!?』。
このなかには、開高健が好きな
作品がたくさん紹介されています。
ざっと書き出してみます。

シャーウッド・アンダソン
『オハイオ州ワインズバーグ』
チェーホフ・ユーモア短編集
吉行淳之介『星と月は天の穴』
『寝台の舟』
遠藤周作『沈黙』
きだみのる『気違い部落周遊紀行』
ヘミングウェイ「殺人者」
深沢七郎『楢山節考』
ロアルド・ダール『あなたに似た人』
リルケ『マルテの手記』
武田泰淳『蝮のすえ』
大岡昇平『俘虜記』
レマルク『西部戦線異状なし』
金子光晴『マレー蘭印紀行』「鮫」
中島敦『かめれおん日記』
『光と風と夢』「文字禍」
スウィフト『ガリバー旅行記』
チェーホフ『退屈な話』『六号室』
『サハリン紀行』
山本周五郎『さぶ』『青べか物語』
サルトル『嘔吐』
小田実『何でも見てやろう』
夏目漱石『吾輩は猫である』
太宰治『ロマネスク』
坂口安吾『風博士』
安岡章太郎『ソビエト感情旅行』

本をパラパラみながら
開高健の愛読書を書き写してて
つくづくわかったのは、
読書の達人だということでした。

中途半端なインテリにならぬよう、
滑稽なユーモア小説を大切にし、
山椒のような批評精神を楽しみ、
一芸に秀でた作家を称賛しました。

文学的な権威よりは
土から生まれたような作品を
愛しました。達人、名人、玄人。

飽きるまで本をかじり尽くし、
舐め尽くし、しゃぶり尽くした
あくなき読書人だったような。
貪欲な知性が人の形になったら
それが開高健だったような…
そんな人でした。

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