【ブックセレクト】宗教・神様に関するオススメ本は?

またやります、妄想ブックセレクト。
今回はクリスマスも近いし、
宗教、神様について考えたくなる本を
何冊か欲しいと、40代の女性から
依頼があったと仮定します。

宗教について、日本人は
抵抗がある人も多いですね。
私は20代には随分と
街頭勧誘や友人の勧めに
何度も一線を越えかけた事があります。
信者から見たら、私はよほど、
放って置けなかったのでしょうか。
高田馬場の真光さん、
横浜のユダヤ教、
新大久保のキリスト教、
知人の創価学会、
まだまだ、声をかけられた団体は
いっぱいありました。

生きるヒントや指針は欲しい。
神様は欲しい。
でも、その割りには、
ルールや決まりごとが多い。
それに、既に誰かによって
作られた神というのが、
納得できませんでした。
私の、私による、私のための
神が欲しかったから、
結局はどの宗教にも
入ることはなかったです。

でも、今でも宗教には
ずっと強い関心がありますね。

さて1冊めは
司馬遼太郎『空海の風景』上下巻。
中公文庫、755円、817円。
弘法大師でお馴染み
空海の青春放浪期から、
中国に渡って密教を学ぶ時期、
日本に帰って以降が伝記として
存分に描かれています。

ただ、青年空海が多量の性欲を
持ち合わせていたこと、
ライバル最澄と弟子を取り合ったこと、
(今のボーイズラブです)
朝廷に取り入るための駆引きも
あまり濁さずに司馬さんは
書いているから、最初は
西日本出身の私はびっくりでした。
人間空海はこうだったのでしょう。
ただ、弘法大師として今も
西日本では崇められているから、
敬虔な真言宗の方は、お読みに
ならない方がいいかもしれない。

でも、人間空海のリアルに迫るには
また、宗教が誕生する過程を知るには
最適の一冊です。

日本の仏教では、空海と負けず劣らず
大きな存在が親鸞でしょうか。
結婚もしたし、肉も食べたし
でもお寺は立てず、門徒ももたなかった。
ある意味、非常にアナーキーな
仏教徒だった親鸞は、
悪人も善人も同じように
成仏できると教えを説いた。
私はこの「悪人正機」説が
今もすんなりとは理解できていない。
でも、ずっとそこに関心がある…
親鸞は疑問が多い、奥行きの深い
哲学者だったかもしれません。
そんな親鸞についてわかりやすく
教えてくれるのが、吉本隆明、
『最後の親鸞』ちくま学芸文庫、
1341円。

もう一冊は遠藤周作『イエスの生涯』
新潮文庫、605円。
この本には、去年からブレイク中の
ブレイディみかこさんが
こんなオビ推薦を寄せている。
「イエスは奇蹟なんか起こせなかった。
つらい目にあい、泣いている人たちに
寄り添っただけだ。高校生だった私は
号泣した。そんなイエスなら
信じられると思った。」

この本もまた、人間イエスの実像に
迫る伝記というスタイルです。
「神様」「神の子」と決め付けず、
イエスは生きていた間、何を感じ、
何をなそうとしたか?
遠藤周作の関心はそこにあります。
病人を手をかざして治したとか
そんな奇蹟はなかったと書いてある。
だから、あまりに敬虔な信者や
学者からは発表当時、遠藤周作に
かなり非難が集まったらしい。
でも、よーく読めば、遠藤さんは
イエスを侮辱する気持ちなど毛頭なく、
敬っていることがわかります。
イエスってどんな人だったんだろう?
ただ、そうした無垢な関心で
この本をお読みになることを
オススメしたい。

最後にもう1冊、
上の本たちとは真逆な本をご紹介
したいと思います。
オウム真理教がサリン事件を
起こした後、現信者、元信者に
インタビューをして、
なぜあなたたちはオウムを
信じるようになったかを描いた
インタビュー集があります。
インタビューしたのは村上春樹。
所々、村上春樹が信者の
無邪気な意見や回答に
苛立ちや批判を向ける場面は
空気がぴりつくといいますか
インタビューの現場にいるような
迫力があります。
読んだ人間は色んなことを
考えさせられることと思います。
村上春樹『約束された場所で』
文春文庫、737円。

神様について、宗教について、
考えさせてくれる本。
今回はこの4冊でいかがでしょうか?

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