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【小説論】理想の小説って?太宰と安吾は上手い?下手?

作家、小説家で、
小説を書いていたのに、
なぜかエッセイの方が上手い人がいる。
小説の方はなぜか、
「小説」の型にはめよう、はめようと
ぎこちないのが坂口安吾だ。
いや、文豪相手に申し訳ないけれど、
安吾の小説は、
汗を必死にかきかき、ギクシャク
なんとか形にしようとしてるようだ。

安吾はエッセイや論考がすごい。
「堕落論」「日本文化私観」
「文学のふるさと」「教祖の文学」
「特攻隊に捧ぐ」などなどは
何度読んでも刺さります。

そのほとんどは、
戦争から生まれている気がします。
戦争がなかったら、
「堕落論」も
生まれなかったにちがいない。
「日本文化私観」も
生まれなかったにちがいない。

こんなにも、
日本とは何か?
日本人とは何か?
日本はなぜ戦争をしたのか?
ほとんどその生涯を通して、
安吾は考え抜いていました…。

特徴は、その割に、
ネチネチしていない。
カラリとしてるところがいい。
辛気臭くない。
陰陰滅滅としていないのが良い。
深刻ぶるところがない。

安吾の日本論や戦争論が
いつになっても、
親しみやすく読めるのは、
安吾のキャラクターが
カラリと乾いてるからかも?

それにしても、
安吾の小説は、
無理してがんばって、
ギクシャクしてる。
小説めいた小説を書こうとしてる。
自然さがない。素人みたいだ(笑)。
作家志望の、まだ熟してない。

作家志望の方は、よかったら、
現代を舞台にした安吾の小説
「白痴」「戦争と一人の女」
「青鬼の褌を洗う女」などを
読んでみて欲しいと思う。
どう感じるか教えて欲しいな。

安吾の小説の中では、
随所に刺さる言葉が出てくる。
いい文章をたくさん読める。
でも、展開がない。
ドラマがない。
山なし、谷なし。
構成が平たいんです。
ナレーションで
安吾がよく顔を出してくる。

いや、でも、
これもまた小説なのかもしれない。
山あり谷ありする作品だけが
小説の理想だというのが
そもそも私の狭い了見だろうか?
もしかしたら安吾は
そんな説を命を削って
訴えていたのだろうか。

あれ?そういえば、同じ
戦中・戦後のデカダンス作家と
呼ばれた太宰治も、
構成が上手い訳ではない。
太宰もプロットが上手い人では
なかった。

小説の随所随所に、
太宰が顔を出して
人間を語り、人生を語り、
恋を語り、死を語るところが 
妙味なんですよね。

構成、プロット、展開だけが
小説の良さではないらしい。
読ませるチカラがあるならば。

もしかして、安吾風の作品の方が
ドラマチックな小説より、
スキルが高いとも言えそうだ。
小説(散文)はそもそも、
規則が一切ないのがその決まりであり、
魅力でしたね? 

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