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【作家】生誕100年作家なら、安部公房より吉行淳之介が好き!!

今年、生誕100年を迎える作家に
安部公房と吉行淳之介がいます。

今、書店をまわると、
安部公房は、明らかに推されてますね。

それに比べて、
吉行淳之介は、地味な扱いだ。
第三の新人と言われた作家の一人。
安岡章太郎や遠藤周作らと
同世代の作家でした。

その吉行淳之介が
どうも扱いが今ひとつだと
思ってしまうのは、
私が個人的に、吉行淳之介を
好きだからでしょう。
吉行淳之介にだって、
安部公房より凄い作品が
何作品もあるのになあ!と
歯がゆく考えてしまうからか?

吉行淳之介は
今年生誕100年で企画復刊された
と思われる本はまだ1冊だけ。
『吉行淳之介掌編小説集』。
中公文庫。

なぜ吉行は復刻されにくいのか?
それは、赤線で働く娼婦と
親しくなっていく話だとか、
うら若き女性との奇妙な関係性など、
男女の儚く温もりある機微を
さらりと描かれていくんです。

性ビジネスに就く女性との話や
うら若き女性との関係性の話は、
今のフェミニズム時代にあっては、
明らかに吉行淳之介は
不利だろう?
出すには出版社も英断が必要か?

昭和戦後に栄えた?赤線を
吉行淳之介はよく舞台にしたから、
それだけで、
ミソジニー扱いされてしまうかな。

でも、まず、誤解を解きたいのは
吉行淳之介は
官能小説を描いた人ではありません。
性をめぐる精神と精神が
触れ合おうとする様子、
孤独な魂と魂が呼び合う様子を
描いた人なんです。

それに、
セックスなど出てこない
不思議な人間のドラマの短編も
たくさんあります。

また、吉行淳之介は、
「子供」「少年」をテーマに
小説をよく書きました。
まだまだ、これからの、
未熟な、やがて次第に成熟していく
精神について、好んで描いた人だ。

それから、
軽妙洒脱なエッセイを読むと、
さすが文壇の中心であった人らしく
社交的で、かつ、かっこいい。

あの、意固地な村上春樹、
文壇嫌いな村上春樹が
唯一、慕った先輩作家が
吉行淳之介だったことからも
そのクールな人徳は察しがつく。

吉行淳之介は
他人との距離の取り方が
絶妙に上手だったのでしょう。

奥さんがいながら、
宮城まりという女優さんと
添い遂げたその生涯は、
これまた、フェミニズム勢には
女性を軽んじた男としか
映らないにちがいない、、、か。

あ、そう言えば、
安部公房も、劇団を主宰し、
女優の山口果林さんと
愛人関係を続けた人だ。
あ、話がそれましたね。
閑話休題。

私みたいな野暮な人間には
憧れてしまう吉行淳之介。
一言で言うなら、
何事にも「絶対」を求めない姿!
でしょうか。

せめては古本屋さんで、
昔に読み漁っていた本を
買い求めるしかない。

別に、生誕100年だろうと
何か企画されないとしても
気にしないで構わないよ、
吉行淳之介さんなら、
きっと、そう言うでしょうね。

ああ、私は
安部公房のシュールさより
吉行淳之介のはかなさに
惹かれてしまいます。

ちなみに、最短で
吉行作品にアクセスするなら
新潮文庫『驟雨』がオススメです。
ちなみに「驟雨」は芥川賞作品。

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