【短歌】リアリティ、儚さ、悲しさ、笑いが31文字にギュ!

今日は短歌をご紹介します。

穂村弘『絶叫委員会』は
穂村さんが日常世界で
印象的に感じた言葉たちを
独特の自由さで集めたコラム集。
(『絶叫委員会』ちくま文庫)

中でもドキっとさせられたのは
次の歌のくだり。
詠んだのは、穂村弘さんの友人。

『「俺の靴どこ」が
最後の言葉って
お母さんは折れそうに笑って』

伴風花

この歌のお母さんは自宅で
塾をしていて、
玄関には、生徒たちの靴が
あっちこっちに散らかってる場面。
帰り際には、みんな、
自分の靴がどこかわからなく
なってるんでしょうね。

そう靴を探してた少年は
なんと、それから数日後には
死んでしまったらしい。

…となると、
お母さんが折れそうに
笑ってるのは、
単なるおかしさではないなあ。

よりによって、
最後に交わした言葉が
「俺の靴どこ」って、
悲しすぎる、笑えない、
でも靴がいっぱいの玄関で
必死に自分の靴をさがす少年は
まさか数日後には
自分が死んでしまうなんて
思いもしてなかったでしょうし、
それは「お母さん」もまた同じで、
あれが最後の言葉になるんなら
あの生徒と、
もっとマシな言葉を
交わしとけば良かったなあ、と
お母さんは何度も繰り返し、
玄関の場面をイメージしたでしょう。

飾らない言葉から
リアリティはまっすぐに
読むものを貫いてきます。
なのに、やり取りそのものは
余りにはかなく、切ない。

時々、穂村弘『絶叫委員会』を
取り出してきては
好きな箇所を読み返すんです。

穂村さんに紹介されている、
という最大の担保によって
紹介されてる名言が改めて
名作だなあと感じてしまう。

推薦人がリリーフランキーなら?
推薦人がブレイディみかこなら?
推薦人がジェーンスーなら?

いや、ここは、
穂村さん推薦!というのが一番、
この短歌の力を引き出しますね。

穂村さんのクールで柔らかな目線が
この歌の良さを引き立てる。
この歌人・穂村弘のように
言葉を骨の髄まで味わい尽くすには
クール?醒めた感覚?薄情さ?も
どうやら必要らしい。

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