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『文字を1文字削れば10万円』 合理主義のITコンサルタントが”言葉”の意味を考える
1文字削れば10万円
スライドのヘッドメッセージを1文字削ることに、10万円の価値があると思え!
ITコンサルの仕事を始めて数ヶ月、上司のスーパーコンサルタントに言われた言葉だ。
彼が言いたかったことは、経営層向けの資料では如何に短い言葉でわかりやすく説明するかが重要だということだ。
経営層は忙しい。端的に伝えられなければ聞いてもらえないし、理解もしてもらえない。
ITコンサルタントの言葉への拘り
ITコンサルタントの仕事をしていると特に思うが、言葉の一意化、簡略化への拘りがすごい。
そもそもITの人間は、表記揺れ(異音同義語)に苦慮したことがあったり、大規模プロジェクトにおいて個々人の認識の齟齬が大きな問題につながることがあったりするので慎重に言葉を選ぶ(人が多い気がする)。そこにさらにコンサルタントという職種を掛け合わせれば、”言葉一意化人間の権化”が完成だ。
業務の性質上これはしょうがないことなのかもしれないが、私は少し寂しくも思う。
言葉の画一化を招き、遊びがなくなってしまうからだ。
言葉について再考する
突然だが、百人一首でこんな句がある。
『あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む』
上の句のすべてが長々しにかかる序詞になっており、とにかくあなたに会えないで一人で寝る夜は長いと伝えたいのだ。即ち上の句は"長い"ということを強調するためだけに存在しており、伝えたい内容を端的に言うならば不要な言葉なのだ。
これをコンサルタントに見せたら、きっと、上の句は全て削って、
『長々し夜をひとりかも寝む』にしろ!それで150万の価値がある(上の句15文字×10万円)と言われるだろう。
作者の柿本人麻呂もびっくりであろう。情緒もへったくれもない。
少し極端な例で説明したが、意味がなさそうな言葉にも情緒的なニュアンスがあったり、人の心を動かす効果があるのだ。
合理性を追求していくことは、言葉の魅力を失わせかねない。
私が主張したいことはコンサルタントの業務において余計な言葉を追加したいということではない。
ITやコンサルといったテクノロジーや論理を重視しがちな業界、職種において、言葉というものが軽視されているのではないかということに懸念を示しているのである。(言葉だけではなく、文学、芸術等の合理性とは関係が薄いものたち全般)
昨今、AIやクラウド、自動運転、5Gのようにテクノロジーで世の中がぐっとよくなるといった風潮、空気感が全面に出てきているような印象を受ける(日本では以前からそうであるが)。メーカーやIT業界にいる(いた)私にとってその印象は尚のこと強い。
効率や論理の追求だけではなく、一見無駄にも見える情緒的な部分、遊びの部分にも光を当てていくことが大切なのではないか。
そこにこそ人の深みに繋がる要素があるのではないか、私はそう思う。
こういった文脈からデザインシンキングとかがコンサルでモテはやされているのだろうか。。。とか最近よく考えている。
潤吉
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