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【農業】マサチューセッツ州の「ローカルフード」運動

おはようございます。新小樽少年です。
今日は日曜日ですがあいにくの雨で、お出かけは出来なそうです。
最近はコロナウイルスの影響で出かけるのもままなりません。
Twitterなどを見てもイベントの中止だったり、
不満や怒りの投稿も見かけます。
私も3月10日の漫才ZANMAIというお笑いライブが中止になってしまったので、悲しい思いではありますが、他にも楽しいことは沢山あるので、前向きに行きたいと思います。(笑)

今回はマサチューセッツ州のローカル運動について取り組みになります。
この記事は連載記事の第2回なので第1回を読んでいない方は是非ご覧ください!(笑)

前回のおさらい

第1回の記事では「新自由主義」という風潮が、
農業に従事する人々の思いや、
農村コミュニティ家族経営の農家さんが貧困に追いやられている
という問題を指摘した上で、
こういったコミュニティが地域にもたらすメリットを挙げました。
(例えば、「農村景観の保全」や「自然資源の複合的管理」など)

そしてアグリビジネス、
つまり農家を資本とみなしているような企業に対して、
(第1回の記事では「農業の工業化」と表現)
自立的な農家、農村コミュニティが「貧困」や「環境悪化」といった問題への取り組みを紹介していくのが第2回目の記事です。
今回の記事ではマサチューセッツ州の「ローカルフード」運動を紹介します。

マサチューセッツ州の農業

マサチューセッツ州農業は、野菜や果実といった商業的作物生産の集約的農業が大きな特徴であり、酪農も発展もしている。(下図を参照)
また農場面積が小さい、都市近郊という強みを活かし、アメリカの中でも直接販売による収益性が高い
農家の収益のうち、直接販売による収益は全国平均6.4%に対し、マサチューセッツ州を含むニューイングランド地方は26.0%を占める。
農産物の総販売額4億7500万ドルになる。

あめりヴぁ

(引用:USDA 2017 State and County Profiles- Massachusetts)

「農業の工業化」と農場の二極分化

ここで大きく問題になっているのは、
農家の数でいえば圧倒的に小規模農家が多いが、
生産額でいえば大規模農家への集中が激しく、
大規模家族農場の経営数2.8%ですが、
販売額シェアの45.3%は大規模層への生産集中している。
持続的な農村再生には小規模農家の存在が不可欠であること、
また「農業の工業化」の問題点は第1回の記事で述べた。
(次節でも述べている)
「農薬などによる環境破壊」「安全で健康的な食料のアクセス
「農村コミュニティの衰退」などの課題も伴う。

ローカルフードシステム

直接販売やファーマーズマーケットなどに見られる、
食料生産者と消費者の距離を縮めることを「ローカルフードシステム」と呼ぶ。
地元の学校、市民農園に生産者から直接野菜の供給のことも含む。
明確な定義はない。
農業の工業化」のデメリットは、
グローバル・サプライチェーンによる環境負荷、農業労働者への健康負担
資本主義フードシステム環境コスト人的コストを度外視をしていることだった。
これに対し「ローカルフードシステム」は地理的近接度に多様性を含みつつ、短いサプライチェーンにより環境コスト人的コスト軽減していることが大きな特徴である。

貧困層の拡大と食料確保の問題

アメリカでは所得格差が社会問題となっており、
これらは貧困地域の拡大、栄養不足や肥満児の増加につながる。
またこれに伴い「フードデザート」、郊外のスーパーストアを利用できないといった課題が生じてくる。
なぜなら彼らは自家用車や公共交通機関を利用できないからだ。
フードデザート」とは生鮮食料品をはじめ栄養価のある食料を入手することが困難な地域のこと。
これは「生鮮食品供給体制の崩壊」「社会的弱者の集住」(岩間:2010)
を意味する。

ではこれらをローカルフードシステムの中にどのように位置づけるか
ローカルフードシステム構築の課題を下に列挙した。
①貧困、低所得者層の健康悪化の問題を解決していく視点
②ローカルフードシステムを担う主体
③ローカルフードシステムを担う農場が教育の場となること。
以下ではマサチューセッツ州におけるローカルフードシステムの実践事例を取り上げる。

JD農場

この農場の担い手は非農家出身のルーカスさん。
非家族経営で中規模農場で営農中。
農産物はほとんどが直接販売
販売先はレストランやCSAがメイン。

CSAは「Community Supported Agriculture」の略称で、日本では「地域支援型農業」と呼ばれています。これは、消費者が生産者に代金を前払いして、定期的に作物を受け取る契約を結ぶ農業のことを言います。
(引用:マイナビ農業/知ってる?農業キーワード〜CSA〜


栽培作物は野菜から果樹、畜産まで幅広い。
JD農場は貧困CSAに出資できない家庭貧困層支援非営利団体へ野菜供給を行っている。
また青少年に対する農業教育にも取り組んでいる。
食・農、環境保全への関心を養うための学習機会を提供している。
持続型農業学習新規就農支援事業にも積極的に参加。

雇用型法人経営-TM農場

経営主は非農家出身のマシューさん。
形態は大規模家族農場で妻と2人で作業をしている。
CSA会員が徐々に増えてきていることから、
販売額増加⇒経営規模拡大⇒販売額増加というプロセス
を可能にしている。
マシューさんは「アメリカでは食品は安価、高い食品は売れない
と考えており、JD農場は加工販売にも取り組んでいる。
日本でいう6次産業化に近い取り組みだ。
若い人に農業を理解してもらう」⇒「新たな就農者をつくる第一歩
という考えから、若手農業者の受け入れも行っている。

ザ・フード・プロジェクト

多種類野菜、ハーブ類、果実を栽培している非営利組織
日本語だと「食料教育計画」に近い意味になる。
自然保護に取り組んでもいる。
土地保全活動生物の生息地を含め、清潔な飲料水地場産の食料
自然を学ぶ場所の確保という目的も含まれている。
活動内容は生産物の4割を貧困救済団体に寄付、
6割は低所得者に向けて価格を抑えて販売している。
生産に高校生を関わらせて、
フードシステムに変革をもたらす次世代のリーダー育成に取り組んでいる。

ローカルフードシステムの構築に向けた今後の課題

ここまでローカルフードシステムの構築を目指す運動の事例を紹介してきた。これらをまとめると以下のようになる。
①消費者との結びつきは大規模な農場でも可能。
②血縁家族や農家出身でなくとも、農場を維持することは可能。
③ローカルフードシステム運動にとって非営利組織の存在


いかがでしたでしょうか。
日本はCSAをはじめ、農村コミュニティの存在が遠いように思えます。
ローカルフードシステムの構築を進めていく必要は遠くはないと思います。
私の中で疑問点は定食者層支援は行っているのにもかかわらず、
この支援に対して中所得者はどのように感じているのか
またどうして低所得者は低所得者層から抜け出せないのか
そのような疑問を抱いてしまいました。
とはいえ興味深い内容で勉強になりました。
次回はニューイングランドの酪農協同組合と小規模酪農について
取り上げますので、お楽しみに!!

参考文献・HP

岩間信之「フードデザート問題 無縁社会が生む食の砂漠」農林統計協会、2013年

マイナビ農業/知ってる?農業キーワード〜CSA〜
(https://agri.mynavi.jp/2018_10_01_41429/)

村田武「新自由主義グローバリズムと家族農業経営」筑波書房、2019年

United States Department of Agriculture National Agricultural Statistics Service/Census of agriculture (https://www.nass.usda.gov/Publications/AgCensus/2017/Online_Resources/County_Profiles/Massachusetts/index.php)





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