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【農業】イギリスの家族農業経営

こんにちは。新小樽少年です。
最近は将来についてよく考えます。私はどのような生活を送りたいのかなど考えます。やはり海外で暮らしたいですね。自然に囲まれた生活が理想です。すごく落ち着くんですよね。

でも動物がめちゃくちゃ苦手なんです(笑)
かわいいとは思うんですけどね、、、

それはさておき今回のテーマは【農業】です。連載記事の第7回ということで、第1回から第4回まではアメリカにおけるローカルフードシステムなど、小規模農業経営帯が地域においてどのような役割を果たしているのかを考察しました。


そして第5回からはヨーロッパ編ということで、EUの共通農業政策から、前回はポーランドの農業について取り上げました。

今回はイギリス農業について取り上げます。今年1月にBREXITが成立しました。それがイギリス農業にどのような影響を与えたのか。イギリス農業の特徴について説明した上で、考察をしていきたいと思います。

イギリス農業における家族経営の位置

考察に入る前の前提条件を確認する。
家族農業経営定義は、その労働力供給源家族であること
②分析の焦点はイングランド
イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成る連合王国である。土地制度や営農形態、歴史的経緯、地理的条件が大きく異なるため。

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(上画像はryugaku-uk.comより引用)

イギリスにある農場の内78%は家族労働力に依存している。この数値はフランスやドイツと肩を並べる。

イギリスの平均農用地面積94haで、フランス、ドイツの1.5倍にもなる。その要因は土地生産性が低い永年牧草地が大きく影響している。

イングランドにおいて、「営農小規模層」は配偶者家族で労働が賄えるレベル、「中規模層」はギリ雇用労働者を必要とするレベル(基本は家族労働力)、「大規模層」は雇用労働力中心の経営群になる。

それゆえイングランドの農場は中小零細家族経営85%前後を占める。小規模や家族経営農家がいかに英国農業を支えているかが分かる。

家族農業経営の苦境

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上の図は溝手(2019)を参考に筆者作成

イングランド農業は2010年から2015年にかけて大きく変化したことが上の図から分かる。第1に家族労働力が中枢となっている小規模・中規模農家の減少、第2に「大規模層」の農場数が微増した。これに伴い、パートタイムを雇う農場が増えたことである。

なぜ家族労働力が主な小規模・中規模農家は苦境に立たされているのか。それは収益力の差、つまり所得格差が大きく影響している。その要因は3つ考えられる。

①小・中規模農家の経営赤字
⇒所得補償型直接支払い(CAPの基本支払い)が必要。
②農業関連所得が低い
⇒農泊やファーマーズマーケットのような事業収入が低いということ。
③そもそも農業収入が低い

ここから農政は小・中規模農家への考慮が足りず、営農環境の悪化、大規模経営の格差拡大が高いといえる。農業の工業化が背景にあると考えられる。

圧迫される家族農業経営

CAP改革による直接支払いは大規模経営農家に集中している。これを裏返して言えば、大規模経営を推奨しているとも読み取れる。所得分配の不公正は農業投資力の格差拡大要因となっている。

直接支払いは農業経営規模において支払額が変動する。大規模なほど、支給額も上がる。それゆえ、大規模農家と小・中規模農家の間で設備投資の差経営効率の差が顕著となる。

また移民による労働力の流入が大規模農家のシェア拡大につながった。その結果、移民は農業労働力の確保に大きく貢献したが、雇用労働力に依存する大規模農家と家族労働力に依存する小・中規模農家の市場喪失につながった。

これらに加えて食品アグリビジネスによる生産効率競争、品質や形状、トレーサビリティなどについての「民間規制」が中小家族経営を不利な立場に追いやっている。

BREXIT農政改革と農業者団体の対応

大きな農政の枠組みは、直接支払いを環境保全、動物福祉、営農環境整備、農村開発などに限定し、将来の農業部門の育成、食品サプライチェーンの公正取引の確保、国際競争力の強化の支援が掲げられている。
(BREXITは可決されたが、何も定まっていないのが現状)
(また具体性が欠如しているのも問題である)

農業団体はどのような反応を示しているのか。
大規模農業経営の利害を代表するNFU
①所得補償型直接支払いの廃止に反対
②環境規制の緩和(生産活動に支障が出るため。儲けに歯止めがかかる。)
③安価な労働力(移民)を確保し、競争力の維持・強化
④国内市場を確保しつつ、輸出の拡大を目指す
⑤農業生産者に不利なビジネスの回避
を主張している。

これに対して中小家族農業経営者等の利益擁護を主張しているLWA
生産性の向上環境改善の同時追及する生産方法の確立
②直接支払いの上限を定めて、余剰分を中小経営の財源に回す
③農業者自身のスキルアップ(NFUとやや共通)
④地域支援型農業などの国内供給の優先
を主張している。
ここからLWAは「食料主権論」を軸として考えをまとめていると考えられる。

まとめ

イギリスもアメリカと同様に「農業の工業化」が進み、中小農家や家族経営農家の存在が低く見られていると考察できました。その上で、イギリスにおける中小農家が直面している赤字経営、農業の低所得といった問題を抱えていることが明らかになりました。

直接支払いによる所得補助制度は大規模農業経営者がその恩恵の多くを享受しているため、所得分配制度の盲点が鋭く指摘されていました。

イギリスを代表する2つの農業団体のBREXIT以降の農政への主張を明らかにすることで、今後のイギリス農業政策への指針を検討することができます。より具体的な政策、EU加盟時とは異なる国内農業刺激政策が求められます。

イギリスでも「新自由主義グローバリズム」が取り巻いている影響は大きく、この章では述べられてはいなかったイギリスの中小規模農家の地域貢献性はどのようなものなのか、また大規模化を優先させたときと、家族農業経営の支援・保護を優先させたときの経済的な利潤はどちらが大きいのかという議論がなされていればより良かったと思います。

新小樽少年

参考文献

この記事は『村田武「新自由主義グローバリズムと家族農業経営』筑波書房、2019年を参考にして書いています。
溝手芳計(2019)「第6章イギリスの家族農業経営とブレグジット農政改革」
p179-210



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