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小説「HIPHOPブ―ギ―」

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MCワールドとDJサーバイブが東京ヒップホップライフを駆け抜ける! 無謀なフリースタイルバトル。くそムカつくパイセンとの軋轢。 B-BOYPARKでの戦い。恋。そしてまさかのメジ…
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HIPHOPブーギーについて

本日、小説「HIPHOPブーギー」全話の投稿を終えました。拙い文章だったと思いますが最後まで読んでいただいた方にはお礼を申し上げたいと思います。 この小説は僕の実体験を元に書かせていただいております。18歳から20代後半まで、僕は音楽活動をしていました。DJから初めて、途中で友人とHIPHOPユニットを組み、楽曲制作とラップを担当していました。主人公のワールドはその時に組んでいた友人をモデルにしています。彼は本当にHIPHOPが好きで、常にノートにラップを書いていて、紛れも

HIPHOPブーギー 最終話 リアルってなんなんだ?

 武道館公演まで一週間を切ってた。スタッフはみんなピリピリよ。連日のライヴリハ、加えてセカンドアルバムのレコーデイングも同時進行。  「次のアルバムの後はアリーナを目指すぞ」  プロデユーサーの今井はそう言って、ファーストよりも厳しく俺らを指導した。 ま、やるだけやった。今井の真面目さは音楽好きあっての事さ。それはすげー理解してた。生活もかかってるしな。 それにこの時点でいろいろ言うとめんどくせえってのもあった。だからとりあえずあいつの気に入りそうな歌詞をバンバン書いてやった

HIPHOPブーギー 第13話 俺達のHIPHOP

その日はMTVミュージックアワードの授賞式だった。俺らWAVはPOPS部門でノミネートされてた。緊張したな。それは授賞式への緊張じゃあなかった。HIPHOP部門でクレイジーとフープラがノミネートされてたからだ。  なんか微妙だった。俺らはやっぱりHIPHOPじゃねえんだって。あの二人はメジャーに行ってもHIPHOPだと認知されてる。  「HIPHOP捨てたのか?」  顔を合わせて、そう言われるのかと思うと憂鬱だった。  ノミネートされたアーテイストはLIVEを一曲ずつ披露し

HIPHOPブーギー 第12話 夢のカケラ

 流石のNET社会。俺がフリースタイルバトルできなかった映像は次の日にYOU TUBEにアップされた。当然レコード会社の人間が削除したが、B‐BOY PARKに出てたって経歴も相まってすぐに噂は広まった。それくらい有名になってたって事だが、TVやラジオの出演後の出待ちのファンの中に混じって俺を詰る奴もちょくちょく現れる様になった。  「おいワールド。俺と勝負しろよ」  「フリースタイルもできねえでラップしてんのか?」  バッチリ耳には入ってきたが俺は言い返す事はできなかった。

HIPHOPブーギー 第11話 成功の代償

 CMが流れ始めると、俺らの曲はなんと次の週にはトップ10に入り、週ごとにどんどんその順位を上げていった。それを契機にコンビニの有線でも曲が流れるようになると、とうとう一位になっちまった。  YEAH。シンデレラストーリーの始まりさ。俄かに周りが騒がしくなった。TV出演のオファーもガンガン来るようになった。取材もハンパない。怒涛の如く俺らの日常は変わっていった。  これは舞い上がった。今まで画面でしか見た事がなかった有名人と一緒に子供の頃から見てた番組に出演。司会者はサングラ

HIPHOPブーギー 第10話 WAV結成

 プロデユーサーの今井はすげえ細かく厳しかった。もう五十代だって言ってたな。さすがに長く音楽業界にいるだけあって妥協を許さなかった。ただの偉そうなおっさんかと思ってたがとんだ勘違い。ちょっとしたピッチのズレ、歌詞の言葉使い、喝舌、感情の入れ方。すべてにおいて要求があった。  俺らは黙って言う事を聞いた。もちろん、始めのうちはムカついたがやってやるって決めてたし何より時間が経ってくるとこの人も音楽が好きで、スゲー真面目に取り組んでいるって伝わってきたんだ。ついでに、90年代のH

HIPHOPブーギー 第9話 デビュー

 バイブはトラックをすでに十曲以上用意してた。さすがだぜ。もしかしたらこうなる事を見据えてたのかもしんねえ。  だけど、聴いてみるとそのトラックはすべて純粋なHIPHOPと呼べるものではなかった。ラテン、ジャズ、ハウス、ロック。そりゃいろんな音楽を混ぜるのがHIPHOPとも言えるが、俺らが今まで求めていたものとは違うビートが多かった。  NWA、モブデイープ、パプリックエネミー。オールドスクールの匂いのあるトラックは皆無だったな。どっちかって言うとPOPSって感じだった。  

HIPHOPブーギー 第8話 1バースから

 そんな俺と対照的にYOSHIは絶好調だったな。MIXCD出して、シンガーをデビューさせて、HASEGAWAと並んだような顔してんだ。まあ、確かに集客は増えたよな。二人も名の売れたDJが出るイベントなんてそうないからな。  けど俺はそれを全然喜べなかった。YOSHIの顔見る度に明子を思い出して、あのVIPルームの光景が目の前掠めてムカついちまって。  「ひでえ顔すんな」  バイブによく怒られた。そんな顔したら気に入らないのがバレちまうってな。俺もわかってたんだ。だけどどうしよ

HIPHOPブーギー 第7話 彼女の夢

「またオーデイション落ちたよ」  シンガー志望にはクラブで歌う以外の道がある。俺らラッパーにはオーデイションなんかねえが、日本人はメロ好きだからな。シンガーの需要は多い。レコード会社が毎月の様に新人の歌の上手い奴を求めてる。ま、だけどどいつもこいつもドングリの背比べよ。同じ様な歌い方してソウルがねえ。  明子は毎月の様にオーデイションを受けてた。だけど、あいつはいい線行きながらいつも不合格。そりゃそうだ。アイドルしかミリオン売れない時代。レコード会社だってパツンパツンで即戦力

HIPHOPブーギー 第6話 Love@first sight

そっからすぐ、俺には彼女ができた。MY BABY。マジ熱い女さ。 ハーレムでの最初の俺のマイクパフォーマンスを見てたってんだ。名前は明子。ちなみに俺の本名は明人。間違いねえ。二人で迎えようぜあの夜明けってなもん。初めて話したのは週末のいつものイベントだった。  俺はクレイジーに負けた日から変わった。まずはイベントのスタッフに受け入れられ、このイベントをでっかくすることから始めようって思ったんだ。 だから必死にフライヤーも配ったし、人も呼んだ。盛り上げる為に普段はやらねえオー

HIPHOPブーギー 第5話 B-BOYPARK

週末。土曜。渋谷のクラブ顔パスでスルー。イェエ。VIPルームで知れた顔してシャンパンガンガン。どのフライガールも俺に注目。そんで自慢のライヴアクト。この界隈じゃ一番のルーキー。キングにも認められた俺に怖いもんはなし!  って思ったのはあの日の夜だけだった。マジ現実は甘くねえ。フープラクルーに入ったはよかったが、俺らは一番の下っ端。  俺はイベントの集客係り。バイブはDJのカバン持ち。ニューヨークのゲットーのマファイアだったら完全にヤク捌くかポン引きするかのチンピラよ。  だ

HIPHOPブーギー 第4話 VIPルーム

 だけど俺はけっこうついてる男。そん時はマジ死んだと思ったけど、意外な展開に事が進んでった。  ビギーみたいな取り巻きはフープラのマネージャーだった。そんでそいつは俺を抱えながら言ったんだ。 「なかなかクールだったぜ。途中まではな」  鼻水垂らしてた俺もそれ聞いた時にゃちょっと蘇った。んで、連れてかれた先を見ると完全復活。ていうか、逆にちびっちまうくらいビビった。まさかのVIPルーム。そんで放り込まれたら有名人達が俺を迎えたんだ。  「こいつマジクレイジーだ」  「生意気な鼻

HIPHOPブーギー 第3話 フリースタイルバトル

 初めてのクラブでの記憶はねえ!アガリまくってテキーラガンガン。成人式なんてブッチしてバッチリ決めてったパブリックエネミーのTシャツが朝になったらゲロまみれ。あきれ顔のバイブだってさすがに顔色悪かった。 だけどモチ、音の記憶は鼓膜に残ってたぜ。胃がひっくり返るような重低音。ハーコーな曲に呼応する歓声。いやマジ、やっと自分の場所を見つけたって感じ?  確かその日のハーレムには重鎮のおっさんDJがきてたが、俺は奴よりバイブのDJの方がハートにキタぜ。それを奴に言ってやったらこう言

HIPHOPブーギー 第2話 ユニット結成

 大学のHIPHOPサークルはクソだった。どいつもこいつも何とかザイルみたいにメロばっか歌いたがって、どこもHIPHOPしてなかった。HIPHOP舐めんなって感じよ。  フリースタイルだってできる奴は皆無だった。俺がバトルやろうって言っても誰もついてきやしねえ。お坊ちゃん達が恋だの愛だのきっちしノートに書いててな。モノホンのB‐BOYなんて一人もいなかった。  それに比べて、俺はいつだって臨戦態勢。目の前のあらゆるものでライムできるぜ。このスキンヘッドの中にはいつでも韻がこだ