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想いだけでは乗り越えられないこともある

 トライフルは、生活や就労を支援する機関である。重度の知的障がいがあって行動問題のある方への対応から、知的な遅れはない発達障がいの方まで、その対応は多岐にわたる。難しい対応に追われ、正直なところ毎日苦しいことも多い。しかし、それと同じくらいおもしろいから不思議だ。なぜか、難しいケースであればあるほど「燃え」てしまうのが私の性分だ。

 それが「優れた支援者」というマウントを取りたいという意識ではないことを説明するのは難しい。しかし、現場に立っていると、そのような支援者マウントよりも、「なんとかしたい、力になりたい」という気持ちが湧き、純粋に、「燃え」ていることがほとんどだ。といえばかっこいいが、実際には自分が動けなかったことによって状況が悪化してしまうことを多く経験してきたからこそ、悪化するのを避けるために、いま頑張ってなんとか状況を好転させたい、という考えが原動力になっていることも正直多いのも事実だ。ただ、いずれにせよ、「自分が関わった全ての障がいのある人に、幸せに生きてほしい」という想いだけは変わらない。

 でも、そんな「想い」だけでは乗り越えられないこともある。どんなに自分の主張が正しいか、正論を振り翳しても、苦しい現場は確実に存在し、正しいやり方を実行してもうまくいかないことも多い。それがとにかく苦しいのだ。

「本当にやるべきことを全てやったのか」
「もっとできることがあったのではないか」
「今からできることはないのか」

 毎日毎日、生き苦しさに悩む青年たちやそのご家族の相談に乗り、ただそのことだけを考えて最善と思う関わりを続ける。息苦しさに悩む青年たちやそのご家族の苦悶の表情に向き合う度に、こちらも不安になる。最善策がうまくいかないと、当然落ち込む。途方にも暮れる。体調も悪くなる。ある方の状況が改善したと思えば、また別の方の苦しい状況と向き合うことになり、それはそれで苦しい日々が続く。でも、だからといってそのような状況から逃げたいかというと、そうでもないから不思議なのものだ。やはり、そういう状況になればなるほど「燃える」性分なのだ。そして、自分のことは後でもいいから、目の前の苦しそうにしている人が好転していく状況に遭遇することが何よりも嬉しくてたまらないのだ。

 このように、想いだけでは乗り越えられないことがたくさんあるからこそ、これから先、私はそういう自分の性分を最大限に活かして、自分が関わった全ての障がいのある人の人生を好転したと思ってもらえる支援を実行していきたいと思っている。そのためには今の自分ではまだまだ実力不足だ。実力と実行力をもっともっと高める努力が必要だ。もしかしたら成し遂げることができないかもしれない。それでも、できる限りは頑張ってみたいと思っている。

 

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