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虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜

人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?

第五話

奈津「ママ、ナツうちで飼ってもいい?私ずっとナツの面倒見るから」

母親「だーめ。生き物を飼うって奈津がおもってるほど簡単な事じゃないんだよ」

十月の秋晴れの日の里親探しのイベントだった。

奈津「ご飯も寝る時も奈津が全部やるから。ママお願い」

母親「...だめ。」

佳子はこのやり取りを微笑みながら見ていた。

山岸佳子「奈津ちゃんは本当にナツの事が好きなんだね!ナツも私も凄い嬉しいよ。だけどね、動物を飼うって家族が増えるのと一緒だから、毎日朝起きて決まった時間にご飯あげて、トイレのお世話、散歩、体を洗ってあげたり、一人で寂しい思いをさせないように一緒にいてあげたり、本当に大変なんだよ!」

奈津「...分かるよ。でもさ、ナツとずっと一緒にいたいんだもん。」

奈津は泣き出した。

母親「奈津、かわいいだけじゃ動物は飼えないんだよ。命を預かるって本当に大変な事なんだよ」

奈津「分かるよ。分かってるよ、じゃあどうしてらナツを飼ってくれるの?」

母親「...」

山岸佳子「奈津ちゃんの気持ち凄い分かるし、私としてもナツを奈津ちゃんの家族に迎えいれて欲しいって気持ちが凄いある。奈津ちゃんはただ今目の前のナツが好きって思うだけじゃなく、ナツが亡くなる日までずっと一緒にいてあげる自信はある?」

奈津は即答で答えた。

奈津「うん!約束する」 

山岸佳子「お母様、本当に身勝手な事を言ってしまいますが、なんとかナツを自宅に迎え入れて頂く事はできないでしょうか?ナツがこの施設にきてから、今もまだ私達に心を開いてくれる事はありません。人間からの虐待を受け、本当に心に大きな傷を負ってしまい辛い犬生を歩ましてしまっています。そしてこれから先もナツは人に心を開いてくれるかは分からないけど、奈津ちゃんに初めて会ったときに勝手ながら、ナツはきっとこの家族の一人になると私は思っていました。奈津ちゃんならナツの事を本当に思ってくれナツの犬生を変えてくれると。」

母親「...分かりました。まずは夫にも話してみてよく考えてから、お返事しても良いでしょうか?」

山岸佳子「もちろんです!今すぐじゃなくても大丈夫です。」

奈津と母親は帰って行った。

山岸佳子「ナツ、新しい家族に迎え入れてもらえたらいいね!」

後日、保護センターへ連絡が入った。

「ナツを我が家で迎え入れたいです」

山岸佳子「ナツ、やったよ!奈津ちゃんの家族になれる事になったよぉ!」

佳子は涙を流しながら喜んだ。保護センターの職員全員でナツと佳子を祝福した。

一週間後、奈津と母親が保護センターへやってきて里親になるための説明を受けていた。

山岸佳子「この度はナツを迎え入れてくれる事に了承して頂き本当にありがとうございます。正直なところ今までこちらから里親になって下さいと頼むような事は絶対にあり得ませんでした。奈津ちゃんと会うたびに、本当にナツの事が好きなんだなぁと感じていました。このようなお願いをしてしまいすみませんでした。」

母親「奈津が面倒見ると帰ってからも聞かなくて、夫に相談したら了解してもらえたので。」

奈津「約束するよ!」

山岸佳子「奈津ちゃんもありがとうね!それでは里親になって頂くにあたって説明させて頂きます。」

里親になり譲渡するには、人間と同様に動物にも色々な課題がある。その家の家柄、家系図なども調べ、動物が逃げ出す事のないように窓にしっかりとゲージの設備を整えたりと簡単なものではなかった。

山岸佳子「それでは、また書類などご用意出来ましたら連絡お待ちしております。奈津ちゃんもうすぐナツが家族になれるね!」

奈津「ヤッター。早くナツを家に連れて帰りたいなぁ」

それから二週間後、ナツの譲渡の日がやってきた。奈津ちゃんの家族をセンターの職員全員で迎え入れた!

山岸佳子「おはようございます。この日になる事を今か今かとお待ちしておりました!」

奈津「おはよー。今日から毎日ずっとナツといられるんだね。毎日ご飯一緒に食べて一緒に寝るんだ」

山岸佳子「うん。毎日一緒にいてあげてね!ナツは立ち上がる事がまだないけど、奈津ちゃんが一緒に遊んであげたら立てるようになかもね!ずーと優しくしてあげてね」

奈津「うん!」

山岸佳子「それでは、お母様これからナツの事を宜しくお願い致します。何かありましたらすぐにセンターに連絡下さい、私達が全力でサポートさせて頂きますので。ナツのこれから先の犬生をきっと幸せにしてくれると私達は信じております。宜しくお願いします」

「ナツ、良かったね!一生懸命に幸せに生きるんだぞ!」

ナツは最後に佳子の事を見続けていた。別れが来る事を分かったかのように。

第六話へ続く


「ど・ヤンキーホームレス中村君」

2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
…………………………
実際に暴走族だった作者の体験をもとに書かれた血湧き肉躍る青春フィクション。




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人に虐待され生きる気力すらも失った犬。生きたいと思う少しの可能性にかける動物保護センターの佳子と犬の人生と犬生を描いた物...


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