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彼女を変えたのは〜人生を変える!「コーチング脳」のつくり方/宮越大樹

コーチング、を考える上で非常に示唆に富むエピソードがあったのでご紹介。

現在、縁あって会社の中で自部門の教育に携わっています。
企業研修は、職場での学習、いわゆるOJTと集合して座学などを通して学ぶ教育とに大別されるのは、多くの社会人が経験から知っていることかと思います。

大抵の企業では、その絶対的な時間比率からもOJTによる学びがメインかと。
で、教育というとどうしても講師をどうするとか、教育のカリキュラムをどうするとか集合教育の方に目がいってしまいがちですが、その時間比率からも、OJTで良い指導者に巡り合い指導を受けた方がより成果が出やすいことに異論を挟む余地はないかと思います。
そういう背景もあり、最近、コーチングなるものについて色々調べています。

その中で出会った1冊が本書。
1つ1つのテクニックは置いておいて、本書の中でコーチングを考える上で示唆に飛んだエピソードが紹介されていたので、共有したいと思います。
ある程度の年齢になれば、
・部下がなかなか成長してくれない
・指導の方法がわからない
・部下にやる気がなくて困っている
といった悩みを抱えている人も少なくないかと。
そんな方々にとっては改善策を見つけるにあたって有益な情報になることを期待しています。

困ったアルバイトの女子高生

エピソードは、著者の宮越さんがコーチングに出会う前の話。
20代の前半、彼は居酒屋でマネージャー業務をしていた頃、アルバイトに商業高校に通う女子高生がいました。
彼女は宮越さんに対してのみならず、お客さんにも笑顔を見せない。
オーダーも声が小さくて聞き取れない。
それに対し、改善を図るべく笑顔を作るように朝礼で鏡を彼女の顔の前に持っていったり、駐車場に連れていって大声を出す練習をさせたり。
まあ、今だとパワハラ認定をされてもおかしくないような指導をしていたわけですね。ただ、当時の宮越さんの気持ちもわからないでもない気がします。
何度行ってもだめ、じゃあ、もっと強くいってみよう。
そんな単純化された思考と行動が見えてきます。

「変えようとするな、知ろうとせよ」

カウンセリング業界にはこんな格言があるそう。
詳しくは本書に譲りますが、コーチングも基本的には同様な考えをとっています。
解決策・改善策はすでに彼・彼女の中にあり、コーチはそれを指導する(タテの関係)のではなく、そこに行き着くサポートをしてあげる(ヨコの関係)のがコーチングの本質。

ある時宮越さんは、感情的にならずに彼女の言葉を冷静に受け止めようと考えます。すると、彼の中に「彼女はこんなつまらない(そうに見える)バイトをしてお金をため、何に使うのだろうか。」と。

そこで、彼女に色々質問をします。
バイト代どうするの?貯金してどうするの?なんの専門学校に行きたいの?
すると、徐々に彼女への解像度が上がってきます。

なんと、彼女は実家が美容院をやっていて、すごく雰囲気が良いのに加え、みな綺麗になって帰っていく。そんな素晴らしいお店を継ぎたいという思いに気づくのでした。
で、気がついたら彼女に対し「(そのお店でやろうとしていることを)このお店でもやろうよ!」と言っていたそうです。

彼女の変化

翌日から、彼女は変わります。
・お客さんに説明したからとキッチンに調理マニュアルを見せてくれるようお願いする
・小さな子供の手を引いて席に案内する
・会社の売上人件費率のために自分が早退すると提案する
・早退したと思ったら、お客さんへのクーポン付きのハガキにメッセージを手書きしている
側から見ると、別人じゃないか?というくらいの変化ですよね。


数冊、コーチングの本や動画を見ましたが、コーチングの本質はこのエピソードに集約されている気がします。
・人は皆、意識している・していないに関わらず価値観がある
・価値観と自分の行動が合致するとものすごいパワーが生まれる
・その価値観を一緒に見つけ、意識するのを手伝うのがコーチング
・変えよう、教えようとすることは不要で、知ろうとすることがコーチには一番大事なこと
OJTを含む教育や指導というと、一つ一つの専門的な知識や、クライアント(生徒)がわからないことを解決してあげることに重点が置かれがちですが、特に自分の目標や価値観が明確化していない人に対しては、まずはそれに気づいてもらうところから始めること。遠回りに見えて一番の近道なのかもしれませんね。

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