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料理をワンパターン化するのはよくないのか?〜もうレシピ本はいらない/稲上えみ子

著者の稲垣さんを初めてみたのは、情熱大陸でした。
特徴的なボンバーヘッドで電気に頼らずたくましく生活する姿が印象的でした。

ちなみに、アマゾン記載の著者紹介はこんな感じ。

1965年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社入社。大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめ、2016年1月 退社。夫なし、子なし、冷蔵庫なし。仕事したりしなかったりの、フリーランスな日々を送る。その生活ぶりを紹介したテレビ番組『情熱大陸』が話題に。日本酒好き。著書に『魂の退社』『寂しい生活』(共に東洋経済新報社)ほか。

元新聞記者。夫と子供と冷蔵庫を並列してもよいものか、というツッコミどころ満載のプロフィールで、興味がそそられますね・・・w

本書はそんな面白い?生活を送る彼女の主に食生活を綴ったもの。
ある種、禁欲的にもみえるような食生活を通してたどり着いた境地とは?

料理に認知資源を使うべきか

食事と料理は密接に結びついているのは周知のこと。
で、人間は生存していくためには食は欠かせません。

生命維持のための食事という観点から考えると、必要最低限のカロリーと栄養素が摂取できればよいわけです。
ディストピア小説で描かれたりするように、場合によっては食事という行為から楽しみや幸福感、コミュニケーションツールとしての要素を完全に抜き取り、点滴による摂取、でも良いわけです。

しかし、人間はその生存に必要な行為に彩りを加え、より美味しいもの、食べてて気分が良くなるものを追求し続けています。
人によっては、道や芸術と認識し、日々技術を磨かれていたりもするかと。

もちろん、そういった観点で”究極”を追求すること。
それはそれで非常に素晴らしい行為だと思います。

ただ一方で、美味しい料理を食べることが当然となり、ルーティン的に同じ食事を摂ることに抵抗なり罪悪感を持つと苦しくなる部分もあるのかな、と思います。

自分も
・昨日あれ食べたから、今日は違うもの
・先週は麺類を食べたから、今日はご飯にしよう
なんて決定をすることも多々ありますが、これも考えてみると「食事は毎日いろんなものを食べるべし」という暗黙のルールに縛られた発言、とも言えるかもしれません。

稲垣さんがたどり着いた境地(?)

作りおき不要! 準備10分!
誰でも作れるワンパターンごはん、
でも、これがウマいんだ!
アフロえみ子の
1食200円
驚きの食生活を大公開
アフロで無職で独身の、稲垣えみ子52歳。
朝日新聞退社後、激変したのは食生活。
メシ、汁、漬物を基本に作る毎日のごはんは、なんと一食200円。
冷蔵庫なし、ガスコンロは一口、それでもできる献立とは!?
何にしようか悩む必要すらない、ワンパターンごはん。
でも、そのバリエーションは無限で自由。
料理は、自由への扉だ!
だから自分で自分の人生を歩みたければ、
誰もが料理をすべきなのである。
男も、女も、子供も。
自分で料理をする力を失ってはいけない。
それは自らの自由を投げ捨てる行為である。

冷蔵庫を捨てた彼女がたどり着いたのは、ワンパターンの食生活、でした。
でも、そんな食生活に一般の人が忘れかけている大きな幸せを感じているのが印象的でした。

とかく、現代人は目新しい海外の料理や新しい調理方法などに目を奪われがちです。自分も含めですが。
けどワンパターンな毎日の食生活に幸せを感じることができるのであれば、それ以上に日常の幸福感が上がることはないかもしれません。

ルーティン化すること

スティーブ・ジョブスが毎日同じ服を着ていたのは有名な話。
この理由として語られるのは、意思決定に必要な認知資源の量というのは限られていて、資源を無駄遣いしないためにというもの。

ある意味、稲垣さんの生活にはこれに通ずるところがあるかと思います。

人によっては食生活に認知資源を割くことが幸福の向上につながる、という方もいるかもしれません。
一方で、日々の献立を考えることが苦しかったり、重荷になっている主婦・主夫の方などには考え方として参考になる部分もあるかと思いました。
家族がいる方はそんな簡単には行かないかもしれませんが、苦痛の度合いによっては一度話し合ってみるのもよいかもしれません。

料理と服はルーティン、他のことに頭を使うぞ!
というのも1つの生き方な気がします。

エッセイとして読んでも面白い一冊でした。

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