年収186万・下層階級へ転落☠930万人の「アンダークラス」になる人は?
『アンダークラス』のレビュー
本書は、日本における新たな下層階級である「アンダークラス」の実態を、豊富なデータと分析に基づいて明らかにする社会学的な著作である。アンダークラスとは、非正規労働者のうち、パート主婦や専門・管理職以外の人々で、約930万人にのぼるという。その平均年収はわずか186万円で、貧困率は高く、女性では5割に達するという。
著者は、アンダークラスに属する人びとの生活状況や苦悩を、若年・中年、女性、高齢者というケースに分けて詳細に描き出す。また、アンダークラスの形成過程や背景にある社会的要因についても、歴史的・経済的・文化的な観点から考察する。本書は、現代日本社会の深刻な問題である格差や貧困について、客観的かつ具体的に理解するための重要な一冊である。
☠キャラクター解説
本書には、アンダークラスに属する人びとの声や体験が多く引用されている。それらは、彼らの人生や感情を生き生きと表現しており、読者に強い印象を与える。例えば、非正規労働者として働きながら、子どもの教育や老親の介護に奮闘する女性の苦悩や葛藤、結婚や離婚を機にアンダークラスに流入した女性の悲哀や後悔、いじめや不登校といった暗い子ども時代を送った男性の孤独や怒りなどが、生々しく伝わってくる。これらのキャラクターは、アンダークラスの多様性や複雑性を示すとともに、彼らの人間性や尊厳をも描き出している。著者は、彼らを単なるデータや統計としてではなく、生きる主体として扱っており、読者に共感や理解を促す。
☠執筆のスタイル
本書の執筆のスタイルは、社会学的な専門書としては比較的平易で分かりやすいと言える。著者は、専門用語や学術的な議論を避けることはないが、それらを適切に説明したり、例示したりして、読者の理解を助けている。また、データや分析の裏付けがしっかりとしており、論理的で説得力のある文章になっている。さらに、本書の構成も工夫されており、各章でアンダークラスの異なる側面やケースを取り上げることで、全体的な像を徐々に浮かび上がらせている。本書は、社会学に詳しくない一般の読者でも、アンダークラスの問題について深く学ぶことができるように書かれていると言える。
☠全体的な影響
本書は、日本社会におけるアンダークラスの存在とその実態を、徹底的に明らかにした点で、大きな影響を与えると考えられる。アンダークラスという言葉は、本書の出版以前からメディアや議論の中で使われていたが、その定義や範囲はあいまいで、具体的なデータや分析も乏しかった。本書は、アンダークラスを明確に定義し、その規模や特徴を科学的に検証し、その生活状況や苦悩を具体的に描き出した。これにより、アンダークラスは、社会学的な概念としてだけでなく、社会的な現実としても、より認識されやすくなったと言える。本書は、アンダークラスの問題に対する関心や理解を高めるとともに、その解決策や対策を考えるための基礎となると考えられる。
☠本のメリットとおすすめ度
本書のメリットは、以下のように挙げられる。
アンダークラスの問題を、データや分析に基づいて客観的に理解することができる。
アンダークラスに属する人びとの声や体験を通して、彼らの人間性や尊厳を感じることができる。
アンダークラスの形成過程や背景にある社会的要因について、歴史的・経済的・文化的な観点から考察することができる。
アンダークラスの問題に対する関心や理解を高めるとともに、その解決策や対策を考えるための基礎となる。
本書のおすすめ度は、5段階中4としたい。本書は、現代日本社会の深刻な問題である格差や貧困について、客観的かつ具体的に理解するための重要な一冊である。社会学に興味のある人はもちろんのこと、日本社会に関心のある人、自分の社会的な位置や役割について考えたい人にもおすすめできる。
ただし、本書は、専門書としての性格が強く、データや分析が多く、読みやすさや面白さという点ではやや劣ると言える。また、本書は、アンダークラスの問題を明らかにすることに主眼を置いており、その解決策や対策についてはあまり触れていない。そのため、本書を読んだあとに、どのような行動や変化が必要なのか、自分で考える必要がある。
☠転落の危険の隣り合わせの主婦
最後までご覧頂きまして、ありがとうございます。よかったらスキ、フォロー頂けると幸いです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?