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ヒーローは魚屋さん

子供の頃、住んでいた町に魚屋さんがあった。
当時、住んでいた家から右に曲がって徒歩10分でスーパー。
左に曲がって徒歩10分で魚屋さん。といった感じの立地。
魚屋さんの横に薬局があるだけで近くにお店は床屋くらい。
他の買い物と一緒に魚屋さんに。とはいかず利便性は良くなかった。

スーパーでも当然、魚は扱ってたけど港町で生まれ育ったおばあちゃんは

「スーパーの魚は新鮮やない」

と、夕飯に魚を考えている日は野菜などは前日に買って、魚だけをその日に買いに行っていた。

魚屋さんへの買い物についていき、おばあちゃんが欲しい魚を店の大将に伝えると、

「へい、毎度!」

大将は威勢よく言い、ぶら下がっているビニール袋を1枚取って、袋の中に手を突っ込み、袋越しに魚を掴むと、もう片方の手でビニール袋の裾を掴み、魚の方へ向かってめくるとさっきまで内側だった方が外側になり、素手で魚を掴むことなく魚はビニール袋の中へ。
(この書き方で伝わるだろうか?)

大将はビニール袋の口の両端を親指、人差し指、中指でつまんでクルクルっと袋を回して封をしたのと同じ状態に。

その一連の流れの手際の良さ、魚を素手で掴まないので手を洗わなくていいその方法に衝撃を受けた。

家に帰ってから、おばあちゃんにビニール袋をもらって、大将の真似をして色んなものを掴んでは袋の中に入れまくった。

今、思うと何が面白いのかって、感じだけど、大将のあの美技は5歳の僕には戦隊ものに匹敵するカッコよさだった。

今も近所のスーパーで冷凍の切り身魚を買う時、トングを使わずに習得した技で切り身を袋に入れている。

大将の魚屋さんは僕が小学校高学年の時に閉店してしまったが、あの美技は僕が継承している。

今日の明け方、ウトウトしながら思い出した僕のヒーローのお話。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ