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【第1話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

社会人になって初めて、4連休が取れた。今までの最高は3連休。

3連休のときは、タイのバンコクとアユタヤに行って、現地では1泊。文字通りの弾丸旅行だった。

さて、4連休だとどこまで行けるのだろうか。全く想像がつかない。

早速、GoogleMapを開いて旅先を探し始める。先に申し上げておくと、自分の旅はだいたいGoogleMapを眺めるところから始まる。

「トルコって行けるのかな」

そう思ってトルコ周辺にピンを合わせる。深夜便をうまく使って、中東乗り継ぎならば4日間で行けるらしい。けれど、せっかくトルコに行くのであれば見に行きたい景色がたくさんある。現地滞在1泊では足りない…そう考え、今回は見送ることにした。

「ん?なんだこの国」

トルコ周辺を見ていた時に、今回の旅先である、ジョージアに初めて出会った。

トルコの南側にある小さな国。調べてみると、大きさは日本の5分の1くらい。人口は約400万人。もともとはソ連共産圏の一部、現在は独立してジョージア語が公用語のキリスト教国家。

日本人は年間で約5000人しか訪れない国。

年間出国者数が約2000万人なので、その中の0.00025%しか訪れることのない国。

たった、0.00025%である。

「…ここに行きたい!!」

もう、ここまで来たら直感なんだと思う。すぐに航空券を調べて、国を”発見”してから1時間後には、往復のチケットの予約が完了していた。

一応、位置をおさらいしておくと、この辺。

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確かに、「普通ここには行かないよな…」という位置にある国だった。

それから出発までは3週間ほどあったので、ジョージアという国について調べてみることに。

主な見どころとしては、2箇所。バトゥミというリゾート地と、ステパンツミンダという山の麓の村。前者の方は、ヨーロッパ系の旅人には人気で、日本から訪れる人も最近は増えてきたという。ただ、”リゾート地”にあまり興味がなかったので、今回は後者、ステパンツミンダに行くことに。

お目当ては、『天国に一番近い教会』と呼ばれる、「ゲルゲティ三位一体教会(ツミンダサメバ協会)」という場所で、どうやら首都のトビリシという街から車で3〜4時間ほど掛かるらしい。

ただ、そこからの景色は素晴らしい!ということで、せっかくジョージアというわけもわからない国に行くのであれば、と其処を目的地として設定し、旅の計画を立てた。


僕は、旅行に行く時は決まって「その国の歴史」を調べてから行くようにしている。というのも、その方が自分の見る景色に深みが増すし、その街の文化背景を知った上で吸う空気は一味違ったものになると考えているからだ。

ジョージアという国は、もともとソ連共産圏の一部だったこともあり、ロシアとの確執は今もなお続いている。周りにも南オセチア地域、アブハジア自治共和国など、治安が安定していない国や地域が点在しており、旅をする際は少し気をつけた方が良い場合もある。

ただ、自分が訪れる予定の首都トビリシやステパンツミンダの治安は比較的安定していて、置き引きやひったくりはあるものの、他のヨーロッパ諸国とあまり変わらないようだった。

旧ソ連国に行くのは2018年の東欧周遊以来だったので、どんな街並みが見られるのか、心が躍っていた。

そして迎えた旅当日。

羽田空港でカタール航空の深夜便に乗り、ドーハで一度乗り継ぎ。約16時間30分の空旅を終え、ジョージアのトビリシ国際空港に到着。

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今回の旅も、このバックパック1つで海を越えた。

空港のロビーにはお土産屋や両替所、レストランなどがあり、小綺麗な印象。セキュリティも常駐していて、入る時には航空券を提示する必要があるので、ロビー内は怪しい人もおらず、治安の良さを物語っている。

世界の空港の中には、空港内で置き引きやスリ、詐欺まがいの客引きがあることも少なくない。そう考えると、この環境は恵まれているのだと感じた。

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空港を出て、市内に向かうバスに乗る。

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市内までのバスチケットは0.5ラリ(約15~20円)だった。タクシーで向かおうとすると20ラリ(約650円)なので、約20倍の差がある。タクシーなんて眼中になく、真っ直ぐバス停に向かい、乗車。

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バスの中は意外と綺麗で、ゴミもそこまで落ちていなかった。

市街地までの約30分間、ガタガタと揺れながら向かう。

ちなみに、車内アナウンスはジョージア後で流れるため、前方の電光掲示板を見て自分が今どこにいるのかを把握するしか方法がない。が、頼みの綱の電光掲示板も色が薄く、ところどころドットが欠けているのでなかなか読み取れない。

乗り合わせたインド人のおじさんも「どこで降りれば良いんだ…」と困っている様子で、揺れるバスの中で、目が合う。片眉をあげて、少し首を傾げる。手を少し上げて、口が少し、結ばれる。”困ったなあ”のジェスチャーは、万国共通なのか、と思った。

一瞬のアイコンタクトでなんとなくの意思疎通。ホテルの場所を聞くと、どうやら自分の降りるところの1個手前だったので、そこで一緒に降りて、道案内をすることにした。

もちろん、僕も初めて訪れる土地だ。GoogleMapを頼りに、拙い英語で案内をしたあと、「Thanks! Have a good trip!」とお別れをして、自分も泊まるホテルへ向かうことにした。

おじさんと別れて一人になると、今だ、と言わんばかりに観光地の写真がたくさん載っているプレートを持ったお兄ちゃんたちが声をかけてくる。だいたいは「No」と言ってもしつこく声をかけ続けてくることが多いのだけれど、ジョージアの場合は違った。

「No」と一言言うだけで、スッと離れていく。とっても諦めの早い客引きに、どこか物足りなさを感じてしまう僕は、もう普通の感覚ではないんだとその時に実感した。

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トビリシの街は地下道が多く、一本路地に入るといきなり灯りが無くなったりする。道にはホームレスの方々が座っている。物乞いも多く、歩いているとお金を求められることも多い。客引きやタクシー勧誘をする人の近くで、ボロボロになった服を着て寝ている人たちがいるのを見ていると、不思議な気分になる。

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日本から16時間、今まで知らなかった国、ジョージア。

きっと、知らないこと、知らないものだらけの3日間。

ホテルに荷物を置いて、青空が映えるトビリシの街を周ってみることにした。


【第2話へ続く】


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