多くの人が気づいていない経済学部が持つ裏の顔【発達障害御用達学部】

経済学部と言えば、一般的にはどういうイメージを持たれるだろうか?
筆者が在学中に持っていたイメージとしては、リア充、陽キャ多い、就活に強い、ゼミが盛ん、まともな人が多い、勉強はしない、一応文系の王道。こんなところだろうか。
筆者はこのイメージ通りの経済学部生だったかというと、実は全くもってそんなことはなかったというのが正直なところであるが。

上記で挙げた点は経済学部が持つ表の顔つまり光の側面であり、実は裏の顔としては、割と発達障害御用達学部という闇の側面も有するのではないかと言う独自理論が今回のテーマだ。

一般的な意見としては、コミュ障や発達障害を抱えた学生は理系に行って医師、技術者や研究者になるべきと言うのが定説で、筆者が学生だった頃も恐らく殆どの人はそれを一種の暗黙知として受け入れていたと思う。
医師になった方が良いという意見は間違いなく、それは今現在でも筆者自身も同意しているのではあるが、果たして本当に発達障害を抱えていたりして社会適合度が高くない方が理系の技術者や研究者になるのが正解なのか?という疑問を以前から筆者は抱えていた。

話は変わるが、東大の経済学部は10何単位かを他の学部の単位で埋めることが出来る(今はどうなっているか分からない)。筆者は経済学部だけで埋めるのも勿体ないと考え、後期教養学部、文学部、教育学部、農学部の単位も一応履修はしていた。
文学部と農学部はいずれも底割れ学科の授業を履修したこともあり、めちゃくちゃ緩かった。文学部の方はまだ皆最低限授業には来てレポートも出していたが期末テストはなく、レポートの負荷もかなり軽かった。
酷かったのは農学部の方で、こちらは明らかに体育会の格好をした屈強な男たちが授業に来ては開始10分くらいで睡眠タイムに入り、しかもスウェットでやってくるので教室が汗臭かったのを覚えている。テストも正直とても簡単で、経済学部の筆者でも一夜漬けで行けるようなレベル感であった。出席も取っていたのか取っていなかったのか覚えていない。この文学部と農学部の底割れ学科であれば、筆者も無事卒業することが出来たのではないかと考えている。
その一方で予想以上に厳しかったのが、教育学部と後期教養学部の授業である。どちらも出席は必須な上、毎回授業後にレポートを提出する必要があったし、更に期末試験もそこそこ難しかったのである。後期教養学部の授業は、「国際関係論」(通称コッカン)と言う花形学科の授業であったこともあり、履修している学生も明らかに優秀そうで、授業開始とともに居眠り開始という事は全くもってなかった。
履修した授業が悪かったのかもしれないが、この二つの学部であれば筆者は卒業できなかったかもしれない。
しかもこれらの学部の授業は外の学部からでも受講できるだけマシで、本当に厳しい学部(工学部や医学部、理学部、薬学部等)はぽっとでの経済学部生が履修して単位を取れるような代物ではないのでそもそも選択肢から外れていた。

本題に話を戻すが、外の世界を見て思ったのが、筆者は恐らく経済学部(や先ほどの底割れ農学部や文学部)でなければ卒業は厳しかったのではないか?という事だ。筆者がなぜ特段不快な思いをすることが無く卒業出来、大卒と言う資格を得ることが出来たのだろうかという事を割と真面目に考察してみると、答えの一つとして経済学部が有する裏の顔、つまり発達障害御用達学部と言う側面が浮かび上がってくるのである。

今回は経済学部がどのような点で発達障害を抱えた学生に向いているのか、そして出口戦略に関しても考えてみたい。
注意点としてはあくまで筆者は東大の経済学部しか経験していないので、他の大学の事情はよく分からないが、聞くところによると京大の経済学部も割と同じような感じらしく、上位大学の経済学部は割とどこも似たような雰囲気なのではないかと思う。
尚、もう一つ注意点として、発達障害として今回はASD傾向の強いものを想定しているが勿論ADHDにとっても経済学部は相性の良い学部だと筆者は考える。

1.出席必須、参加型、実験の講義が殆ど無い
他の大学の仕組みはよく分からないが、東大の経済学部の多くの授業は出席が不要で基本的にはテスト一発勝負であった。仮に授業に出席したとしても結構大き目な講堂で一方通行で授業を受けるだけなので、仮に内職していようと寝ていようと注意されるような環境ではなかった。参加型の授業もあるにはあるが、それらを避けて卒業することも十分可能であり、殆どの授業では発言やその他のアクションが要求される訳ではない。正直授業の選び方さえ間違えなければTACと殆どやっていることは変わらない。唯一差異があるとすれば、録画授業が無いという点くらいだと思う(笑)。
この点は先ほど述べた文学部の底割れ学科と比較しても優位にある。文学部の底割れ学科の授業の場合は、そもそも履修者が少ないという事もあり、さすがに授業中に内職したり寝たりと言ったことは出来ない環境であったし、確か出席も取られていたので、授業に出席しない選択肢が無かった。
このことからも分かる通り、経済学部であれば、朝早くに起床して授業に出席し、大人しく講義を聞くことが苦手な発達障害者でも何の問題もなくやっていける。

また当然理系のような実験なども無いので、何か実験器具を扱う必要性も無い。実験中にチームプレイを要求されるなんてことは当たり前になかった。これは手先が不器用で協調性が無く、言語性IQと比較して動作性IQが低いという特徴を有する発達障害者と極めて相性が良い。何せ経済学を学ぶには、基本的に紙と鉛筆とPCさえあれば事足りるのだから。

2.レポートの提出も殆どなく、テスト一発勝負
発達障害を抱えた方は基本的に視覚優位にある傾向が高くペーパーテストに比較的強い。その点、経済学部は殆どの授業が前述した通りでペーパーテスト一発勝負形式であるので、発達障害を抱えていたとしても何の問題なく単位を取得することが出来る。
また発達障害者は定期的にやってくるレポートを計画的に提出することは難しいが、さすがに3か月に一回しかやってこない(従前は更に少なく半年に一回)ペーパーテストに対応できないという事は無いだろう。
この点からも、ペーパーテスト一本で勝負してきた発達障害者にとって経済学部はむしろ普通の定型発達の学生と比較しても好成績が取れる環境なのではないかと考える。
現に筆者は、経済学部に進学してからの方が前期教養時代と比較して明らかに成績が良く、また自分で確りと教科書を読み、テスト対策を行ったことでその時に学んだ内容が確りと頭に残っているのである。

3.多くの国家資格試験と相性の良い授業内容
実は経済学部で学ぶ内容は、多くの国家資格と相性が良い。
例としては、会計士、アクチュアリー、不動産鑑定士、簿記、統計検定、証券アナリスト、CFA(米国証券アナリスト)等多くの資格で必要な内容(勿論触りの部分だけではあるが)を網羅的に学習することが出来る。
筆者の周りの東大経済の会計士受験生は、会計士試験に関係がありそうな授業を取得して会計士試験と大学の講義で生み出されるシナジーを享受していた。そして彼らは在学中、もしくは卒業後1~2年以内に確り会計士試験に合格していた。
また民間就活に失敗したが、そこから奮起して会計士に方向を切り替え、卒後に無事合格し、蘇生したものもいる。
筆者の場合は会計士試験取得までは行けなかったが、証券アナリスト、CFA(米国証券アナリスト)、簿記、統計検定のいずれを受験する際にも学部で学んだ内容は役に立った。
資格はやはり一定程度は自身の身を守ることにつながる。
特に拘りの強い発達障害者は士業と基本的に相性が良い(相性が良いというよりは、他の選択肢とは相性が悪い)。普通に民間就職するよりは、何らかの国家資格を取得した方が発達障害者の場合は有意義な人生を送ることが出来るだろう。
後述するが、発達障害を抱えた学生は敢えて経済学部に進学して、有り余る時間と試験に直結する授業内容を利用して何らかの士業に就くというのも一つの有効な(もしかしたら最も有効な)戦略なのではないかと考えている。

4.希薄な人間関係
経済学部の場合は、前述した通りで参加型の授業が少ない。それゆえに人間関係が希薄になりがちである。350人ほど経済学部生はいたが、その中で実際に話したことがあるのは多くても2割程度に収まるのではないか。
理系の研究室や文系でも文学部や教養学部、教育学部のように学科ごとに細かく分かれているところでは必然的に人間関係を断ち切ることは難しいし、更にこれらの文系学科では女子学生も多いので、人間関係は濃密になりがちである。
これは考えようによっては、デメリットともなりえるが、発達障害を抱えていて、留年生でもあったアウトロー東大生の筆者にはとても居心地が良かった。言ってしまえば前者のような少ない学科は地方の村社会、経済学部は人数が多すぎて一人一人が希薄化される大都市のような有り様だ。村社会で噂になるよりかは、大都市で希薄化された存在として生きる方が楽と言う事と似たような現象であろう。

筆者の場合は、ゼミも異端児系であったので、濃密な人間関係は当然要求されなかった。一部のキラキラゼミはゼミ合宿などのイベントも催していたようであるが、筆者のゼミの場合は、勿論毎週開催自体はされるが、確り時刻通りに終了していたし、ゼミ参加後の拘束時間も殆ど皆無に近かった。女子学生が殆どいなかったことや集まっている学生も異端児系が多かったことが、この人間関係の希薄さに拍車をかけていたのかもしれない。
これが理系の場合は、こうも行かないと思う。工学部を含めた多くの学部では研究室に配属されることになるが、聞くところによると、結構濃密な人間関係を要求されるみたいで、苦しんでいた学生もそれなりにいた。
教授との関係性に悩んでいる学生もいたし、研究室がうまくいかず、大学院を中退している方もいたので発達障害者は本当に理系が最適解なのだろうか?と言うのは当時よく考えたものである。適切な学部選択と研究室選びが出来ればこのような苦境に陥ることはないのかもしれないが、そこには運の要素も絡んでくると思う。

5.拘束時間の圧倒的な短さ
前述した通りで、経済学部の場合は拘束時間が圧倒的に短い。そもそも授業に参加しなくてもレジュメが手に入り、教科書さえ読めば単位を取得することも出来るので、拘束時間をゼロにすることも不可能ではない。
筆者の場合は、朝が弱かったので、授業は基本的に2限からしか入れず、夜はバイトがあったので、遅くとも17時には大学を出ていた。

途中の時間は図書館で勉強していた。なので自学自習の時間だけは他の東大生にも負けなかったと思う。(むしろ結構上位に入っていたかもしれない)
実験が終わらなくて授業が長引く心配も当然ない。しかも必修の授業が無いので、自分の裁量で授業を選択できるのが何より大きい。出席が必要な授業であったり積極参加が必要な授業だと分かれば履修選択期間に外してしまうことも可能だ。このことから自分の好きなように授業を選択して、残りの時間は資格試験や自分の興味がある学問の勉強に注力することが可能なのが経済学部の強みである。
発達障害者は基本的にマイペースな方が多いので、自分自身の裁量であらゆる選択を行える経済学部のメリットは大きいと思う。社会人的に言うと、リモート勤務が可能で、フルフレックスの環境が年中続く感じである。これなら発達障害者でも何とかやっていけるのではないだろうか。

6.発達障害と相性の良い数学的な要素が強い
経済学部の授業内容は大雑把に以下の通りに分けることが出来る。
・伝統的な経済学(マクロ経済、ミクロ経済)
・経営学
・ファイナンス
・会計
・金融工学
・統計学
・経済史
である。この中で、経済史と経営学は数学的な要素が強くないが、残りはいずれも確りと内容を理解するには数学的な素養が必要である。発達障害を抱えている学生は比較的数学に強い傾向があるので、ここも苦労しない。
そもそも理系から来る学生も多いし、東大文系入試で安定して50〜60近く取れ、世界史の記述に耐えれるような学生であれば問題なく単位を取得することが出来ると思う。

7.卒後の進路で都会に残る可能性が理系と比較して高い
これは卒業する大学の格にもよるかもしれないが、上位大学の経済学部で確り勉強していたような学生であれば基本的に都市部(含む大阪、愛知、福岡)で勤務できる可能性が高い。
そもそも士業であれば、自分で勤務地を選択できる。
これも従前から述べてきたことではあるが、発達障害は都市部のほうが圧倒的に生きやすい。発達障害にはどうしても少人数の濃密な人間関係は厳しいと思われる。
その一方で、理系の場合は勤務地は地方の工場とかになる可能性も十分にある。これは発達障害者にとっては厳しい環境かもしれない。閉鎖的な環境で逃げ場がないかもしれないからだ。
そのため、上位大学の経済学部に進学できるのであれば、将来も都市部に残れる可能性が高まる。

ここまで経済学部がどのような観点で発達障害者と相性が良いかを述べてきた。これだけであれば、おいしい話ばかりのように思えるが、最大の問題点として出口戦略が見えにくい点が挙げられる。つまり大卒と言う資格を得ることは出来るが、発達障害者に限って言えばその後の将来が見えにくいというデメリットがある。
発達障害の程度によるが、あまりに特性が強いと就活の際の面接が一つも通過しない可能性があり、卒業後定職がない可能性もゼロではない。(とはいえ、上位大学であればどこかJTCに引っ掛っている可能性も十分にある。現に筆者のように、結構発達障害の程度が強い者であっても、普通のJTCに引っかかることは「東大パワー」で何とか出来た。)

上記のような事態を回避する上で有効な戦略としては学生時代の有り余る時間を有効活用して何らかの国家資格、できれば会計士あたりを取得することだと思う。今の人手不足を見るに学生時代に合格していればクセが強くてもどこかの事務所から内定を取るのは難しくないだろう。
またこれは欲を言えばの話にはなるが、専攻は会計やファイナンス、統計、金融工学等の経済学部生が避けがちな分野が良い。経済学部の王道はマクロ経済や経営、マ―ケティング等だが、これらは皆が選択するので差別化が難しいし、何より実務で使いにくい。皆が敢えて避けるような分野に進むことはそれ自体が差別化につながる。
また時間がたっぷりあるので、プログラミングや英語を勉強するのも手かもしれない。

発達障害は理系にいき、メ―カ―の技術職や医療関係職に就くというのが定説だったが、考え方によっては経済学部も1つの選択肢になり得るのではないかと思う。(それでもベストは医学部かもしれないが、マクロな観点で見たときに発達障害者が医師になるのは本当に最適解なのかと言う疑問は残る)
ちなみに法学部の話は今回は持ち出さなかったが、経済学部と殆ど似たような側面があるし、こちらも弁護士という出口戦略があるので、十分に選択肢の一つとなり得る。結論として、勿論経済学部がベストな選択肢かと言われると、ベストだと断言することは出来ないが、それでも数多くある学部の中で相当上位に来ることは間違いない。