清水正浩

生まれ持った反骨精神、でも、併せ持ったポンコツエンジン

清水正浩

生まれ持った反骨精神、でも、併せ持ったポンコツエンジン

最近の記事

読書録134 真山仁著「ロッキード」

週刊文春に連載中から気にはなっていたのだけれど、なんとなく読んでなかった作品。 文庫版もなかなかの大ボリュームで、さらになんとなく躊躇してたんだけど、思い切って読んでみたら面白いこと!! 物心ついた頃には田中角栄は悪い的な世論ではあったのだけれど、演説をする姿のカリスマ性がすごくて、後に早坂茂三元秘書が語り、書いた「田中角栄」に大ファンになっただけに「ロッキード」とは何なのか?というのは気になってたんで、本当に面白かった。 キッシンジャーという稀代の謀略家の仕掛けも、日

    • 読書録133 神立尚紀著「決定版 零戦最後の証言1〜3」

      読み終えてしまったなぁ…というのが1番最初に来る感想だ。 文字に書かれている部分も素晴らしいのだけれど、戦後世代である著者が、取材を通じて知遇を得た元搭乗員の方々と交流し続けてきた約30年の月日と信頼関係の重みが作る独特の世界観は、類似の他作品には作り得ないリアルがある。 「特攻の真意」あたりから読み始めて、「祖父たちの零戦」旧版の「零戦最後の証言」「零戦隊長宮野善治郎の生涯」と読み進めていくうちに、角田和男さんをはじめとする元搭乗員の方々の人柄がとても魅力的で、文字の上

      • 読書録132 ファンキー加藤著「未完声」

        見出しの画像は我が家のリビングの一番いい場所に展示されている家宝で、「サヨナラじゃない」の発売を記念したレコチョクの「最近、あなたが友情を感じた瞬間」というTwitter企画で選ばれてもらったサイン入りポスターなのだけれど、 これ、選んでくれたの加藤さんじゃないか?と、ずっと思っている。 不器用でうまくやり過ごせずに、いちいち壁にぶつかり、躓いても転げ回りながらも前進しつづける強い男。 とはいえ強さばかりではなく、弱さも迷いも隠さない優しい男。 BABY'Sを名乗る俺

        • 読書録131 ティムラズ・レジャバ著 「日本再発見」

          本作の著者であるティムラズ大使を知ったのは、グルジア改めてジョージアが耳に慣れたあたり、ジョージア料理の「シュクメルリ」が「松屋」で販売された事を喜ぶ呟きだったと思う。 今回改めて著作を読んだのだけれど、日本で長く暮らされていた経験に基づいた知識の豊富さや、ジョージアの文化に根ざした視点の鋭さが楽しく、あっという間に読んでしまった。 少年時代の回想は共通する所もあって懐かしく感じたし、ラーメンや弁当も含む日本文化への造詣の深さには舌を巻いた。 特に奥様が「弁当」に目覚め

        読書録134 真山仁著「ロッキード」

          読書録130 髙橋安幸著「暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代」

          著者の「伝説の野球選手に会いに行く」シリーズとか、「根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男」は、愛読していて、特に「根本陸夫伝」は文庫化記念のイベントに参加し、著者の髙橋氏や「根本一家」の「必殺仕事人」大田卓司さんにお会いできたりと思い入れが強い。 本作は、待ちに待った待望の続編で、前作が「人間根本陸夫」を深掘りするような作品だったのと比べると、やや視点を俯瞰にして「組織人 根本陸夫」に注目しているように感じた。 西武時代に根本氏の更に裏で暗躍したとされるプリンスホテ

          読書録130 髙橋安幸著「暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代」

          読書録129 高鳥都著「あぶない刑事インタビューズ「核心」

          小学生の頃、日曜の夜といえば「西部警察」だった。多士済々の刑事達の中で、俺のご贔屓は舘ひろしさん演ずるポッポこと鳩村刑事だった。アメリカ帰りでダンディかつスマートそしてちょっとキザ。華麗なバイクアクションに痺れまくったのである。 時は流れ、中学生の時に始まった「あぶない刑事」は、「鳩」村から「鷹」山にグレードアップした舘ひろしさんに加え、柴田恭兵さん演ずるフリーダムなユージ、トオルにカオルに中条静夫さんの近藤課長などなど、楽しくてかっこいいメンバー達が、我が街横浜を舞台に暴

          読書録129 高鳥都著「あぶない刑事インタビューズ「核心」

          読書録128 清武英利著「アトムの心臓」

          著者の清武氏といえば、読売巨人軍のGMとかフロントの人という印象が最初にくる。 キレ者のGMで、革新的なチーム改革を情熱的にしようとする姿には他チームファンから見ていても好感が持てたのだけれど、「寝業師」とか「仕事師」タイプが暗躍するのを良しとする世界においては、あまりにもピュアに過ぎるかなと思ったりした。 案の定というか何というか、惜しくも志半ばにして球界を去った清武氏を再び目にしたのは「サラリーマン球団社長」という作品で、自身の球界体験も活かした素晴らしい作品で、書き

          読書録128 清武英利著「アトムの心臓」

          読書録127 中川裕著「ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化」

          基本的に、「フィクションは上手くだましてくれれば良い」と考えている。 「ゴールデンカムイ」という作品は、知ってる「史実」に知らなかった「知識」や「文化」を織り込む事で、「上質なフィクション」かつ「優れたエンターテイメント」に昇華させた「エンタメのカムイ」が作り上げたんじゃないか?という素晴らしい作品で、というか要はめちゃくちゃ面白くてどハマりした作品なのである。 著者は、「ゴールデンカムイ」の肝である「アイヌ監修」を務められた方なのだけれど、「文化や風習」に関して資料類に

          読書録127 中川裕著「ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化」

          読書録126 樋口季一郎著「陸軍中将樋口季一郎回想録」

          樋口中将といえば「オトポール事件」とか「アッツ島玉砕・キスカ島撤退」「樺太・占守島の戦い」と、帝国陸軍の将軍には珍しいタイプのエピソードを持つ人で、以前から興味があったのだけれど、たまたま復刻版の回想録を見つけたから飛びついた次第。 かなりのボリュームで、そこそこ時間をかけて読み進めてきたのだけれども、海外赴任や地方の師団へ赴任した時のエピソードがメインで、上記の有名なエピソードに触れてる部分は少なく、さらっとしたものだったりする。 これは、手柄誇りをするタイプではない上

          読書録126 樋口季一郎著「陸軍中将樋口季一郎回想録」

          読書録125 丹波哲郎・ダーティ工藤著「大俳優 丹波哲郎」

          のっけから濃厚な「丹波哲郎節」が全開で最高なのである。 サービス過剰かつ、あちこちに話が飛んだり跳ねたり暴走しかけたりするのだけれど、ダーティ氏が絶妙にツッコんだり、合いの手を入れたり、事実関係を補足していきつつ、丹波さんの語り口を完全に再現しているので、目の前でワンマンショーが繰り広げられてるのかと錯覚するくらいだった。 直前に読んだ「丹波哲郎 見事な生涯」が、丹波哲郎評伝の傑作だとすれば、本作は丹波哲郎インタビューの最高傑作と言っても過言ではないと思う。 前もって丹

          読書録125 丹波哲郎・ダーティ工藤著「大俳優 丹波哲郎」

          読書録124 野村進著「丹波哲郎 見事な生涯」

          圧巻の取材力と読ませる文章で、結構ぶ厚い本なのにあっという間に読み切ってしまった。 取材対象である「丹波哲郎」自体が、おそろしく魅力的である事に加えて、あまり深掘りされてこなかった「霊界研究」を含めた私生活への洞察も含めた内容が新鮮で、とても面白かった。 貞子夫人と長男義隆氏の家庭に、江畑絢子氏と正樹氏との別宅の関係は、「真田太平記」に於ける昌幸の家族関係に酷似していて、丹波さんが自ら池波正太郎先生に直訴してまで昌幸役を獲得したとされる伝説にも、個人的に納得した。 読み

          読書録124 野村進著「丹波哲郎 見事な生涯」

          ゴールデンウィークに観た映画達

          とはいえ、家で配信で観たんだけれど、観た順に感想なぞ。 ①柳生一族の陰謀 ただただ萬屋の錦ちゃんが素晴らしすぎるし、千葉ちゃん率いるJACのアクションも圧巻! ②必殺3 裏か表か 昔は楽しく観たのだけれど、前期必殺を知った後だと、マンガチックで物足りないかな。 ③拝啓天皇陛下様 個人的に渥美清のハマり役は、「車寅次郎」よりも本作の「山田正助」だと思う位に好きな作品。笑って泣ける活劇でありながら、訴えかけてくるメッセージも強い名作。 改めて見返した時に、コミカルな

          ゴールデンウィークに観た映画達

          読書録123 鈴木理生著 「江戸の都市計画」

          タイトルは「都市計画」とは言うものの、水運を中心にした「港湾史」と言った方が正確かなと思う。 予想とはちょっと趣きが違う内容ではあったが、港湾系の短大を出て、港湾企業で30年近く働いてきた自分的にも、なるほどと思う事が多く面白く読めた。 北日本から太平洋沿いに、東京湾に向かう航路の場合、現在運行しているような10,000トンクラスの貨物船でも荒天時に犬吠埼を越えるのは結構難しいのだけれど、当然小型の帆船時代には難しいわけで、手前の常陸那珂港で荷卸しして、江戸まで川船で運ぶ

          読書録123 鈴木理生著 「江戸の都市計画」

          読書録122 喜瀬雅則著「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」

          待ちに待った本作なのである。 https://note.com/jrc43z/n/n1e859f34c495 https://note.com/jrc43z/n/nbad207cdcb77 阪神タイガース、オリックスバファローズ、福岡ソフトバンクホークスと、著者の本は踏み込んだ取材でタブーにも斬り込むところが面白い上に、書かれたチームは必ず優勝するという縁起の良さもあって、次はドラゴンズを書いて欲しいと願っていたので、発売の報を聞くや書店に駆け込んで購入した次第なのであ

          読書録122 喜瀬雅則著「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」

          読書録121 井端弘和・西尾典文著「日本野球の現在地、そして未来」

          落合博満さんの講演会に行くと必ず名前が挙がるのが「井端、荒木、森野」の3選手で、彼等は「地獄の落合ノック」をクリアし、ドラゴンズ黄金期を象徴する選手達なのである。 中でも本作の共著者である井端氏は、年長者でもあり、野球頭脳に優れ、万事に抜かりの無いスマートなプレーをする名ショートだったし、引退後もアマチュア球界に食い込みつつ、指導経験を積んでいるのは知っていたけれど、まさかここまで深くアマチュアも含めた「野球」に取り組んでいるとは驚いた。 井端氏にはいずれドラゴンズに指導

          読書録121 井端弘和・西尾典文著「日本野球の現在地、そして未来」

          読書録120 高鳥都著「必殺シリーズ始末 最後の大仕事」

          大好きな「必殺シリーズ」を深掘りする素晴らしいシリーズの3作目(別出版社の仕置人大全も入れたら4作目)なのである。 「最後の大仕事」とサブタイトルにあるのが寂しくて、読むまでに時間がかかってしまった。 今回は「仕事人」以降、いわゆる「後期必殺」の話がメインとなる。 リアルタイムで視聴していた頃の話が多く楽しかった。 演者の村上弘明さんは、デビュー作の仮面ライダーが直撃する世代だった事もあり、朝ドラ「都の風」大河ドラマ「武田信玄」「秀吉」他にも「腕におぼえあり」「柳生十

          読書録120 高鳥都著「必殺シリーズ始末 最後の大仕事」