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読書録126 樋口季一郎著「陸軍中将樋口季一郎回想録」

樋口中将といえば「オトポール事件」とか「アッツ島玉砕・キスカ島撤退」「樺太・占守島の戦い」と、帝国陸軍の将軍には珍しいタイプのエピソードを持つ人で、以前から興味があったのだけれど、たまたま復刻版の回想録を見つけたから飛びついた次第。

かなりのボリュームで、そこそこ時間をかけて読み進めてきたのだけれども、海外赴任や地方の師団へ赴任した時のエピソードがメインで、上記の有名なエピソードに触れてる部分は少なく、さらっとしたものだったりする。

これは、手柄誇りをするタイプではない上に、「敗軍の将兵を語らず」を実践する将軍の人柄ゆえなんだろうと思う。

とはいえ、当時のロシアやポーランドやドイツ等の欧州の状況や、陸海軍内部の複雑な人間関係が詳細に描かれていて面白い。

また、執筆当時(冷戦が始まったばかり)の政治情勢を卓越した戦略眼で分析してみたり、曖昧に成立しかかっていた自衛隊や国防についての提言は深くて、将軍の戦略眼への興味が尽きない。

北満に赴任していた際に、寒冷地での兵達の健康管理を、ものすごく丁寧に考えて実行している所に、名将ほど兵士を大切にするんだなぁと改めて感心した。

多少の読みづらさはあるものの、とても面白い作品でした。

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