号泣する準備ができるまで

春は出会いと別れの季節だと、誰かが言っていた。


この1年間でずっとお世話になっていた1つ上の部活の先輩が、急に退部することになった。

突然のことだった。
2週間前の土曜日。LINEの個人チャットで連絡が来たのだ。

「幹部になったばかりなのに急にごめんね。色々あって、退部することになりました。あと2回は練習に来ます。また何かあったら連絡してね」

彼女からの長いメッセージは、要約するとこんな感じだった。

ずっと、変わらないと思っていた。
このままの日々が続いていくと。変わらないでいられると思っていた。

そんなものはありはしないと、知っていたはずなのに。
人はいつもなぜかそう、思い込んでしまうのだ。


2つ上の先輩方が辞めるときは泣かずにいられたのに。
先輩がいなくなると知らされて、号泣してしまった。


先輩はまだ卒業する訳でもないし、永遠の別れもないのに、大げさな話だけど。

だってこんなにいきなり別れがくると思わなかったから。あと1年間、今までのように部活で会えると当然のように考えていたから。

号泣する準備が、私はまだできていなかった。


始めてあったとき、窓から見る桜がとてもきれいだった。
これからはしばらくずっと、桜並木を見るたびに思い出してしまう。

そしたらきっと泣いてしまう。


私のくだらない話に笑ってくれるのが好きだった。
上手くいかなかったときに照れて誤魔化す癖も好きだった。
クールな性格かと思えば意外とよく喋るところも好きだった。


寂しいな。
寂しいなあ。

ふとしたときに、先輩との思い出が沢山蘇ってくるのだ。


それにしても、最後に先輩と撮った写真は、ほんとうに酷かった。

先輩はきれいに映ってるのに、私の髪の毛はボサボサだし、半目になってるし。
みんなには「50代の疲れた主婦じゃん」とか言われるし。
初めて先輩と撮った写真なのに。それがこんな出来なんて、私ってばどうなのよ。

でも、そんなところも最後まで私らしい。
最後まで先輩にとって、面白い最高の後輩であって欲しい。


次に桜を見るときも、また新しい出会いと別れがやってくるのだろう。


そのときもいい思い出だけを残せるように。
笑顔が素敵な後輩、先輩でいられるように。

残りの1年間で、号泣する準備をしよう。

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