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脚本解説『虹が色づくまで』

 一年中、美しい虹の架かる橋・霓ヶ橋(げいがきょう)で、二人の少年少女が出会う。そして、僅かに言葉を交わしたその一年後、二人は同じ高校、同じ部活で再会する。
 そこで明らかになったのは、互いが抱える色についての秘密。主人公・白墨恭一は《全ての色がモノクロに見える》、そして少女・虹野有架は《全ての色が支離滅裂に見える》。秘密を打ち明けたことで距離が縮まる二人だが、同時に二人が抱える大きな悩みにも直面する。世界を正常に認識することが出来ない二人、その根本の原因は果たして何なのか?
 これは、虹を見たいと願う二人の少年少女が、色の見えない世界で自分だけの色を探す物語―。

【作品リンク】

https://drive.google.com/file/d/1nZLVskAM8cLVbostsibqETLtwcQ74btb/view?usp=sharing


*以下、解説になりますが、ネタバレを過分に含んでおりますので、ぜひシナリオの方をご一読してからご覧くださいませ

1. 概要

・作成日:7月1日
・ページ数:62ページ
・文字数:16509文字
・所要期間:約1ヶ月

 『第49回創作テレビドラマ大賞』に応募いたしました、ドラマ作品を想定したオリジナル脚本になります。

2. タイトルの秘密

『虹が色づくまで』タイトルロゴ

 このタイトルが表しているのは、作品の終盤、恭一と有架が互いの色を元に戻すために付き合い始めるところ、です。虹が色づくまで=自分の色も有架の色も正常に戻って、かつ有架の恋心が自分に向くように努力する、という恭一の目的、心情を表しています。

 まぁあとは、やはり一番印象的な「虹」と言うワードは確定で入れたいな~と思いました。ほぼ、このタイトルは執筆初期から決まっていましたね。

 タイトルロゴは、とてもシンプルかつ、恭一と有架の視界を表現しました。
 恭一はわかりやすく灰色の文字、有架はロゴ後ろの虹色で表しています。ちなみに、綺麗な虹色ではなく、よく見ると霞んだ色になっているのがわかると思います。有架は色が見えると言ってもちゃんとした色ではないので、その部分もしっかり表現しました。

3. 着想

 ふと、虹が頭に思い浮かんできて(大学のキャンパスを歩いてる時だったかな……)。虹って綺麗だけど、色が見えなかったらどんな風に見えるんだろう、みたいなことを考えていました。そこから、色が正常に見えない二人の登場人物と、その対比を思いつきました。
 なので、特に何かにインスピレーションを受けて思いついた、という訳ではないですね。

4. 描きたかった物

 一つ目は、周囲の目を気にせず自分を曝け出せ、ということです。有架が恭一を勇気づけるときの言葉ですね。
 これは、私が大学時代に演技を経験したことで培われた考えです。やはり、人前に出ると緊張するんですよ。それで、少しでも目立たないように、注目を集めないように、当たり障りない周りと同じようなことをする。けど、演技をやり始めたことで、その考えが払拭出来ました。自分なりの演技を、堂々とお披露目する……、それに気づいてから演技がとても好きになりました。
 この経験は、今のシナリオの執筆にも役立っています。少しでもオリジナリティを出そうとするのは、モノカキとしては至極当然のことですが、この考えが培われたおかげです。もし演技に触れていなければ、今も当たり障りのないことを書いていたことでしょう。というか、モノカキなんてそもそもしていなかったかも?

 二つ目は、似たようで違う問題を抱えた二人の登場人物、です。恭一と有架は、それぞれ色に関する問題を抱えています。
 また、構成として恭一の悩みを解決したと思ったら、実は自分を勇気づけてくれた有架がそれ以上に重い悩みを抱えていた、という風になっています。似たような問題を抱える二人だからこそできる構成、上げて落とす、に近いような気もします。

5. 推しキャラ

 やはり、ヒロインの虹野有架が推しキャラですね。いつでも元気で明るく、自分を照らしてくれるような、引っ張って行ってくれるような存在。もし現実に居たら絶対に好きになるだろうな~、高嶺の花だけど~、って考えながら、そして夏祭りのシーンは「恭一、そこ代われっ!」って思いながら書いていました。

 このキャラで一番大事なのは、恭一よりも重い悩みを抱えている、という点です。そこに関して、夏祭りのシーンで唐突に明かす、というどんでん返しはとても大切に描きました。
 また、有架の過去で、色が支離滅裂に見え始めた頃、その視界に慣れずに嘔吐してしまうシーンも、力を入れて書いたのでお気に入りです。

 有架の明るい性格は、自分の内に秘める闇や後ろめたさを隠すためのカモフラージュです。恭一の問題を解決するために、励ますために言った言葉は、全ては自分の間違っていると自覚している行いを無理矢理正当化するため。後に全てが明らかになった時、恭一にも絶望を与えられるので、中々良い設定だったのではないかと思います。

 まぁ結論、何が言いたいかというと、「恭一、そこ代われっ!」ってことです。有架ちゃんの悩みなら、おじさんがどんなものでも受け止めてあげるから~、ウフフフフッ☆

6. この世界の色覚異常

 この作品を書くにあたって、実際の色覚異常がどのような物か調べました。色を感じる細胞が欠けている、または機能していない。そのせいで、「赤と緑」や「水色とピンク」など、極端に見えにくい色が生まれるとか……。ですが、この作品のこの世界の色覚異常は、そんな難しいものではありません。
 恭一と有架が正常に世界の色を認識できなくなった原因、それは―

与えられる「愛」の量です。

 この世界では、与えられる愛の量で色の見え方が変わります。恭一は母親からの愛情が欠落し色が見えなくなり、逆に有架は色々な人からの愛を受けてしまったことで色が混ざってしまった。

 99%の確率で、現実では起こり得ないことです。また、愛の量に不備があるのは、きっと恭一と有架の二人だけじゃないはず。他にも、愛情不足や不純な愛を受けている人間がいるかもしれない。この作品は、その中でも恭一と有架という二人の人物にフィーチャーしたお話し、と捉えることも出来ます。

7. 小話

 先ほど、私が推しキャラとして挙げた虹野有架ですが、実は名前が二転三転していました(笑)。
 お気づきかもしれませんが、登場キャラはそれぞれ、名前にイメージカラーが入っています。恭一は、モノクロに見えることから白と黒を表す「白墨」。サブキャラたちは「赤」「青」「黄」。援交相手は無色透明な「透」といった具合に。そして、有架の名前はとても悩みました……。その変遷をどうぞ↓↓↓

  1. 最初期は「金野 虹葉

  2. 「なんで金?」と思い、「虹野 虹葉

  3. 「虹が被り過ぎ!」と思ったところで、「霓」という感じがあることを知り「虹野 霓葉

  4. 「なんか堅苦しい!」と思い、「霓野 虹葉

  5. 「『げいの』って響きキモイな!」と思い、「虹野」は確定

  6. ある時、フランス語で虹のことを「アルカンシェル」ということを知る

  7. 「当て字で有架がいい!」となり、「虹野 有架

 になりました。
 因みに、アルカンシェルを知ったのは、当時『転生王女と天才令嬢の魔法革命』というアニメを、百合につられて見ていたからです。このアニメがなければ、今の有架の名前はないと思います。結果的に、歴代キャラの中でもトップクラスでお気に入りの名前になりました。百合、最高!

 この作品で最も謎な存在……、そう、『霓ヶ橋』です。一年中、綺麗な虹が拝める橋……、現実にはあり得ないですよね(笑)
 まぁ、一つのファンタジー要素といいますか、色がちゃんと見えない恭一と有架を嘲笑い、且つ二人が成長していることを実感できるような存在がほしい、ということで、実は一番最初に思いつきました。実際、恭一はこの霓ヶ橋で虹を見たことで、自分の有架への恋心を自覚するのです。
 特に大きな存在でないし、あまり物語の進行にとって重要な存在ではないけど、すぐそばで主人公たちを見守っている不思議で絶対的な存在、みたいな立ち位置でいて欲しいです(自分でも何言ってるのか分からない)。
 因みに、「霓」という字はここで使ってます。せっかく知ったのに使わないのはもったいないな、と思い。結構気に入っています。

 最初期では、実は恭一と有架の二人は高校で再会する予定はありませんでした。一週間に一度、霓ヶ橋に行けば会える、不思議な人、二人だけの秘密、みたいな雰囲気の作品にしようと思っていました。
 ですがそうなると、自由度が一気に損なわれてしまいます。会うためには絶対に一週間経っていなければいけないですし、有架の問題を知るにも霓ヶ橋でなければいけない……。時間と場所の制約に無理がありました。物語後半は、別に霓ヶ橋にこだわる必要もないかなと思いましたが、だとしたら今まで霓ヶ橋でやり取りしていたのは何だったんだ?という話になりかねません。結局、霓ヶ橋の要素を上手く使えなくなってしまう。
 ということもあり、より現実的に二人には高校で再会してもらいました。一応ドラマ脚本でもあるので、あまり現実離れすると放送してもらう時に大変かな~なんて思ったりして(笑)

8. 終わりに

 以上、『虹が色づくまで』の解説でした。

 果たして二人は、色の見えない世界で自分だけの色を見つけることが出来るのか。そして恭一と有架、互いの見える世界を正常に戻すという決意は、二人をどこへ導くのか―。

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