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08,羊頭狗肉な放浪者

何かに、迷った。
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シリーズもの8曲目です。
コミカルで掴み処のない曲です。一見接しやすく親しみやすそうなのに、その実態はなんだかよくわからないなにか。でもなぜか傍にいると落ち着くような、そんなイメージで書きあげました。
以下この曲の物語。
「部屋に戻ると"それ"はまるで当然のように部屋の真ん中に立っていた。白い部屋の真ん中に佇む甘い赤色のローブを羽織った者。それが誰か、すぐにわかった。私の手の中にあるこの本を書いた張本人。私が捧げられる相手で、私が生まれた理由。名乗られた訳でもないが、その異様な存在感と私の中の何かがそうだと確信させた。
"自惚れが全ての原因だとしても、認めたくなんてない"
"夢見がちな僕が得た答えがどんなものか君には想像できるかい"
"もがこうにも足が絡まってうまく動けない"
あまりに突然声を発した所為でそれが誰の声なのかわからなかったが、それは部屋の真ん中で佇む彼の声。その声に抑揚はなく、まるで物語を読んでいるかのようだった。
意味の分からない事を突然言われて、何を返せばよいのかわからない私はただ彼のほうを見つめる。彼はゆっくりと視線を動かし、部屋を見渡すと一言
"ここまでするなら、最初から僕が迷う必要はあったのか"
と呟くと静かに消えてしまった。
突然現れ、意味の分からない事を言い、最終的には何もしないで姿を消した。
どうやら、私の生きる理由である彼を理解する道のりはとても長そうだ。」

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