何かに、迷った。

土日休みは車かバイクか作曲か、たまにガーデニングとお菓子作り。 投稿内容は、絵本の中の…

何かに、迷った。

土日休みは車かバイクか作曲か、たまにガーデニングとお菓子作り。 投稿内容は、絵本の中のお伽噺風の世界観で書いた曲(インスト)を投稿する予定です。 BASEで自作曲の販売もしています。 BASE:https://nanikanimayo.base.shop

マガジン

  • 月と猫と友の国

    同じ世界観で書いた曲の纏めです。それぞれの曲たちにちょっとあれなフレーバーテキストが付いてます。夢に見るようなちょっとふわふわした世界観を感じて楽しんでくれたらうれしいです。

  • 赦免の城のサルトル

    絵本の中のファンタジーな世界をイメージした楽曲、物語集です。物語に沿ったいインスト曲を乗せていきます。他のマガジンと世界観を共有していますが、このマガジンだけ読み聞いた頂いても大丈夫です。

  • 此岸のラボラトリー

    絵本の中のファンタジーな世界をイメージした楽曲集です。 イメージが伝わりやすいようにそれぞれの曲には物語風のフレーバーテキストが付いています。他のマガジンと世界観を共有していますので、お時間があれば合わせてお読みください。

  • 御伽噺は人形たちの前日譚の雪の花

    同じ世界観で作った曲たちのまとめです。 学生時代に書いた物語(自分で読んでてキュッとなるタイプのやつ)をフレーバーテキストとして入れたりしています。絵本の世界のようなちょっと子供っぽくぼんやりとした曲たちが多いです。

  • おぼろげな寵愛を受けて

    絵本の中のファンタジーな世界をイメージした楽曲集です。イメージが伝わりやすいようにそれぞれの曲には物語風のフレーバーテキストが付いています。他のマガジンと世界観は共有しているので、お時間が合わせてお読みください。

最近の記事

Re01,絵描き猫ニルギリ

過去に書いた曲『絵描き猫ニルギリ』のアレンジです。 音源が変わってちょっと豪華になりました。絵を描くことを生業にしている猫をイメージして書いた曲です。わちゃわちゃガチャガチャと楽しそうで、どことなく繊細な曲になりました。特にループ前の盛り上がりはガチャガチャさせ過ぎて一部ドラム音がノイズのように聞こえる…。 以下、『絵描き猫ニルギリ』の物語。 「道行く猫を目で追いながら散策を続けていると、小さなの画廊を見つけた。 外にまで絵画や彫刻が飾られた画廊の入り口に一匹のエプロン姿の猫が佇んでいた。 "おや、猫以外がいるのはめずらしい" 猫はこちらに目を向け微笑む。 何となく相手にしてはいけない相手に声をかけられたような気がした。 飾られている小さな木彫りの鳥を手に取ると、猫はこちらに歩み寄ってきた。 "初めましてではあるけれど、君たちの話を聞かせてほしい。君たちは何をしにこの国に?どこから来たの?君たちは何処で生まれたの?今は何を感じているの?この彫刻、どう思う?" 猫は名乗りもせず口早に質問を投げかけてくる。 あぁ、本当に相手にしてはいけない相手に声をかけられたようだ。」

    • 13,賢者メターニア

      シリーズもの13曲目です。 特にひねりもなく、純粋に聞きやすいメロディアスな曲を目指しました。 イメージは影のある賢者です。凛と澄んだ聡明さを感じさせる雰囲気を纏いつつも、語るその言葉の端々に感じるものは過去にあった罪を感じさせるものばかり。そんななんとも言えない雰囲気を表現…できているでしょうか。 以下この曲の物語。 「あぁ、こんな所でお会いするなんて…。 お久しぶりです。私がここに来てどのくらいになるのでしょうか、貴方は私を覚えていらっしゃいますか。 …貴方が此処に降りてくる事なんて今まで一度もなかったのに、そんな貴方が何故ここに…。あぁ、なるほど。あの町について調べていらっしゃるのですね。私もあの町の出身です。話せる事は何でもお話しますよ。 そうですね、私について改めて話しましょうか。かつてあの町で医者をやっておりました、私の名前は…忘れました。此処に落ちてから暫くは私も周りの人たちと同じように意識がぼんやりしておりまして…。こうやって会話できるほど自身を意識できるようになったのも最近なんですよ。だからか記憶が少し曖昧でして。 町の話をしましょう。ある日を境に病人が増えたことを覚えております。確か、行方不明者の噂が広まり始めた頃からだったような…。皆同じような病状でした。そうですね、なるべくわかりやすくお伝えするなら…最初は風邪のような症状で、徐々に意識が薄れていくんです。病状が悪化すると完全に意識が無くなって眠り続けるような状態に…最期は静かに息を引き取ります。病気はあっという間に町中に広まって…私の最後の記憶通りだとするならあの町にはもう誰もいないのではないでしょうか。 …私も、きっと病気にかかったから此処にいるのでしょうね。」

      • 12,焦がれ集まるマリュス

        シリーズもの12曲目です。 可愛く、ちょっと不気味な曲を目指しました。無邪気な悪意がテーマです。聞きやすく、少し爽やかな空気も出ていて、色々の側面が見える曲ではないでしょうか。 以下この曲の物語。 「此処は相変わらず臭う。城の地下に広がる此処を、僕は牢獄のようだと思っている。 至る所に人がいる。…座り込んだり、立ち尽くしたり。皆何かを常に呟いている。後悔だったり、懺悔だったり。そんなものじゃ此処を抜け出す事は出来ないのに。後悔、懺悔のその先。自身の想いや願いを持てれば、此処から引き上げる事も出来るのに。 今はその後悔、懺悔の物語を集める事の集中しなければ。きっとそこに知りたい事があるはずだ。」

        • 11,燻り続けるフォティア

          シリーズ11曲目です。 かなり自由な曲調の曲となりました。テーマは夢と焦りです。明るいような、少し物悲しいようななんとも言えないメロディになった気がします。 以下この曲の物語。 「すまなかった…許してくれ…そんなつもりじゃ、俺は優柔不断なんかじゃ、ない。あれは偶然だったんだ…。 最近は売れる物を手に入れるのも一苦労で…森を、彷徨っていたら倒れている野兎を見つけて…。そこの森は、妙に弱っている獣が多くて…そこ獣たちを拾っては捌いて売る事で、何とか生活を繋いでた。家の子供たちの為にも、稼がなきゃいけなかったんだ…売れるものは何でも売った…。 …あの日、森に子供が落ちていた。まるで眠るように地面に蹲っていて…。それを見て、思った。これは高く売れると。人買いに売ってもいいし、薬師に売れば材料として買い取ってくれるだろう。俺は迷わず、その子に抱えて家に帰って…。家のいつもの解体場に子供を寝かせて…。 そこで俺は怖気付いた。人なんて売った事も捌いた事もない。他人の子とはいえ、その幼い顔を見ていると躊躇いを感じた。バレて捕まればどうなるか分かったものじゃない。…森に返せば、自ら目を覚まして家に帰るかもしれない。けれど、そんな事をすれば大金を得る機会を逃す。迷いに迷っているうちに、子供の呼吸が荒くなっていることに気が付いたんだ…。 俺は何もしていない!子供がっ!勝手にっ!弱ったんだ!俺が手を下したんじゃない。…あの子は勝手に死んだんだ。」

        Re01,絵描き猫ニルギリ

        Re01,絵描き猫ニルギリ

        マガジン

        • 月と猫と友の国
          14本
        • 赦免の城のサルトル
          13本
        • 此岸のラボラトリー
          11本
        • 御伽噺は人形たちの前日譚の雪の花
          19本
        • おぼろげな寵愛を受けて
          10本
        • 玩具箱の中、魔女探し
          11本

        記事

          10,目覚めを求め彷徨うアゴーリ

          シリーズもの10曲目です。 少しシリアスに曲になりました。夢の中、不安な気持ちを必死に抑えながら彷徨う幼子をイメージして書きました。ふわふわ漂いながらも、出口の見えない不安感と何となくどこかに希望がある気がして諦められない子供らしさが出せた気がします。 以下この曲の物語。 「僕は何で此処に居るんだっけ。…そもそも僕は何処から来たんだっけ。覚えている事…一番昔の思い出は、母さんと父さんと妹と。 そうだ、母さん言ってた。お前はよく食べるから困るって。せめてお前さえ居なければ、皆飢えずに済むのにって。…その言葉が、始まりだったような。 僕は、そうだよ。だから僕は考えたんだ。横でいつもお腹を空かせていた妹を見てたから。せめて森に行けば、何か食べられるものがあるかもしれないって。何度も森に連れて行ってもらって。ポケットに入るだけ、たくさん木の実を取って、妹と分けて。…少しでも皆の役に立ちたくて。でもそれは母さんには内緒。だって、母さん僕が何かする事を嫌うから。お前はいつも余計な事をするって、よく言われたから。森に行くのも、遊びに行きたいって言って連れて行ってもらってた。 そう、…そうだ。あの日もそうやって森に連れて行ってもらって、そしたら見つけたんだ。白くて丸いお菓子。小さい頃はよく買ってもらってたお団子を。一口食べて、口いっぱいに広がる甘さに涙が出そうになった。お腹がいっぱいになるのを感じるくらい食べて…そしたら、とても悲しい気持ちになって。どうして僕は、いつもお腹を空かせながら、母さんに嫌われながら、こんなに一生懸命に生きているんだろう。思えば思う程涙が止まらなくて。 だめだ…、考えてたら眠くなってきた。…考えなくちゃいけないのに。なぜかは解らないけど、せっかくここまで思い出したんだから、もっと考えたいのに。…もう眠い。」

          10,目覚めを求め彷徨うアゴーリ

          10,目覚めを求め彷徨うアゴーリ

          09,トゥロクティコの祝福が有らんことを

          シリーズもの9曲目です。 明るいような暗いようなよくわからない曲です。…いつもそんな感じな気もしますが。物語が新章に入ったようなそんなイメージで書いています。ループ前、少しだけ盛り上がるのはその所為です。この後の曲群は今まで雰囲気を変えてちょっとダークになる予定。 以下この曲の物語。 「己の願いを見失い、先を失った者たちは城の地下に迷い込む。暗く湿ったその場所で、いつか思い出すその日まで。 曖昧な意識の中で口から零れるその言葉。…次はそれらを集めてみようか。」

          09,トゥロクティコの祝福が有らんことを

          09,トゥロクティコの祝福が有らんことを

          08,深層世界のデリリウム

          シリーズもの8曲目です。 前回の曲を真面目に綺麗に纏められたので、今回は不真面目にぐちゃぐちゃに作りました。結果、なんかカッコ良い曲になったと思います。…どういう事。 以下この曲の物語。 「世界のどの国、地域にも属さない場所。  それは世界の果て、雪の降り積もる山の頂き。  そこにそびえ立つ城がある。  そこは誰もが許され、願いを叶えるに訪れる。  たどり着いたならば己の願いを見極めよ。  先に進みたければ、願いと共にある罪を自覚して懺悔せよ。」

          08,深層世界のデリリウム

          08,深層世界のデリリウム

          07,貴方の為のドミキリウム

          シリーズもの7曲目です。 キャッチーな曲を目指しました。結果いつも通りの曲になりました。ちょっと不気味で、それでいて切なくなるような曲を目指しました。 以下この曲の物語。 「おや、貴方が部屋を出ているなんて珍しい…、何処かへ向かわれているのですか。私は変わらず此処に訪れる人達の話を楽しく聞いて回っております。 どうも昔から好奇心を抑えられないものでして…。丁度あなたにも話を聞いてみたい事があったのですよ。 貴方もご存じの通り、私は此処に来た日から色々な人へ様々な話を聞いているのです。"此処"へ何をしに来たのか、どのようにして"此処"へやってきたのか、"此処"に来るまでに何か見たか。…今の私の興味は"此処"に向いているのですよ。 それで話を聞いていくうちに、いくつか気になる点が出てきました。 一つ、皆此処へは願いを叶えにやってきたと言いますが、私が今まで見てきたこの城を去る方の中に何かを得たと言って去った人を見た事がありません。去る方は"もう振り返らない"だとか"今度こそは大丈夫"だとか、どちらかというと過去のしがらみから解放されたような事を言う人ばかりでした。 一つ、此処辿り着くまでの記憶を持っている方に私は会ったことがありません。皆気が付くとこの建物の前にいたらしいです。…でも皆自分の足で此処に来たって必ず言うんですよね。 一つ、この建物の外観。皆が話すこの建物の外観が誰も一致しないんです。古い古城のようだと言う人もいれば病院のように見えたと言う人もいて…私にはかつてお仕えしていた方の屋敷に見えました。皆同じ建物の中にいるはずなのに皆が語る建物の外観が全然違うんです。 此処は一体何なのでしょうか。そして貴方は一体誰なのでしょうか。…何故かはわかりませんが、初めて会った時から懐かしさのようなものを強く感じるのです。」

          07,貴方の為のドミキリウム

          07,貴方の為のドミキリウム

          06,不動のエレヴニティス

          シリーズもの6曲目です。 どっしり構えているイメージで書きました。最近ハマっているゲームの影響を感じる曲です。 以下この曲の物語。 「…ここまで集めた情報を整理しようか。 まずは初めの彼女。二児の母で息子を探しているようだ。 息子はおそらく攫われたのだろう。二人目の猟師の話からそこは予測できる。おそらく猟師が見た抱えられた子供は彼女の息子だろう。 その後立て続けに失踪が起きたようだ。三人目と四人目の食事処の客と店主の話からそれはわかる。二人の関係者の店員の女性も犠牲者のようだ。 …まだまだ情報が足りない。 僕は知りたいんだ。あの町で何があったのか。なぜ人々は消えたのか。…良い暇つぶしになりそうだ。」

          06,不動のエレヴニティス

          06,不動のエレヴニティス

          05,木製のシンヴォレオ

          シリーズもの5曲目です。 物語が動き出したようなワクワク感をイメージして書きました。出だしのアコギっぽい音が、これから何か重要な話が始まる感出せている…気がします。 以下この曲の物語。 「おぉ、あんたから声をかけてくるなんて珍しいじゃないか。 …聞きたい事?あぁ!あの卑屈な男の話だな。確かに彼はうちの常連だ。頻繁に顔を出してくれてたから覚えているよ。まぁ、目的は料理じゃなくてうちの店員だろうがな。…目を見りゃわかるさ。口でいくら誤魔化したって、あの獲物を狙うような眼はごまかせねぇよ。 うちの店か?…店を閉めたのはあんたの言う通り、食材が手に入らなくなったからだ。材料が無けりゃ料理なんて作れないんでね。店を畳んだ後は土地を売って得た金で何とか今の今まで生きてきたよ。 青年のお目当てのアイツが姿を眩ませたのも確かうちの店を閉めたときだったな。…なんだ、そこは知らないのかい。アイツは俺が閉めると伝えた後、急に姿を消したんだ。誰も行方を知らない。 …心当たりが全くないわけじゃないがな。食事処みたな人が集まる店をやってると自然と噂も集まってくるのさ。 最近俺たちの町では人攫いの話が広まっていてな。なんでも森に入った女子供が次々に姿を消してるんだそうだ。最初は小さな少年が。次いで街の娼婦共が。 役人共はどこかにいる犯人を必死に探しているようだが、見つかるわけもない。 …いいか、俺が聞いた噂はこうだ。人攫いは確かにいるだろうよ。ただしそれは街の中だけ探しても見つかるわけがない。やつらは各地を転々としているからな。 続きが知りたけりゃ、いい加減俺の願いも叶えてくれよ。」

          05,木製のシンヴォレオ

          05,木製のシンヴォレオ

          04,濁る瞳のカーリタース

          シリーズ04曲目です。 隠しきれないくらい膨らんだ恋心を必死に隠そうとしながら助言を求める…そんなイメージで書きました。ちょっとたどたどしいメロディが心の揺れを表現できている気がします。 以下この曲の物語。 「お時間を頂きありがとうございます、今日もよろしくお願いします。 …はい、今朝の朝食も頂きました。とても美味しかったです。こんなご時世に肉や野菜を使った料理を毎日食べられるとは思いませんでした。 今は中々食べ物が手に入らないんですよ。親や兄弟の為にいくつかの町をまわったこともありましたが、食べ物を置いている店を見つける事すら難しくて…あっても高額で買う事はできませんでした。どうしようもなかったので野草や野鼠を獲って食べていたんですよ。…それも腹を満たすには足りませんでしたが。 …そういえばこの間まで居た方…猟師の方なのでしょうか。何度かお話したんですが、良く狩りの話をしていたので…。今は動物を狩る事も難しいでしょうに…ここに来たのもそういった理由でしょうか。 はい、今日も話をさせてください。何度も聞いて頂いているうちに私の願いを整理できた気がします。 …あれは1年くらい前ですね。ちょうど19歳の誕生日でしたのでよく覚えています。当時は今ほど食べ物に苦労することもなくて、…近くの小さな食事処を貸し切って友人たちが祝いをしてくれたんです。普段は皆忙しいので中々揃う事もなくて…、今ではもう叶わないひと時ですね。 その時に居た店員が…はい、彼女です。面識のない客だった私を彼女は誕生日だと知るとまるで友人のように喜んでくれて…。彼女から小さなケーキを頂きました。一口サイズのカップケーキです。上にクリームとイチゴの乗ったケーキでした。その印象が強くて、彼女に会いにその後何度も店に会いに行きました。とても明るくてまるで昔からの知り合いのように接してくれた彼女は、次第に掛け替えのない友人になったんです。小説が好きで、稀に街に来る商人から知らない本を見つけるのが楽しみだと言った彼女…。 食べ物が手に入らなくなって店が閉められてから会うことも出来なくなって…彼女の家に行ってみましたが既に引き払われた後でした。 私は…もう一度彼女に会いたいです。出来るなら、今の関係を続けていきたいんです。 …恋仲になりたいなんて言いませんよ、確かに…叶うなら望んでしまうかもしれませんが。」

          04,濁る瞳のカーリタース

          04,濁る瞳のカーリタース

          03,ディーワ・クアエダムの秘薬

          シリーズもの3曲目です。 妖精たちに伝わる秘薬作りをイメージして書きました。神秘的かつちょっと物悲し気なメロディになって満足です。 以下この曲の物語。 「失礼するよ、…今日もすまないな。 さすがに10日も経つと家が心配になってきたよ。…あぁ、大丈夫だ。俺は独り身なんでね。家で飢えているやつはいないさ。ただ、何か盗まれていないか心配なだけだよ。 此処が寒いとは噂で聞いていたが、ぶっ倒れる程とは思ってもいなかった…。あんたに拾われなければあのまま凍り付いて死んでいたかもな。 お、その手にあるのは酒か。…悪いな、頂くよ。しばらく酒も煙草も控えろとここの医者に言われていたからな。今は大丈夫だ。体力も戻っているよ。 …随分と甘い酒だなぁ。あんたの故郷の酒なのか。あんた強いんだなぁ、すぐ酔っちまいそうだよ。 そういえばこの間来た女。ほら、あのカーディガンを羽織った女だよ。昨日城から出ていくのを見たんだよ。随分良い顔してたじゃないか。来た時は今にも死にそうなほど憔悴しきっていたのに、生まれ変わったようだったよ。それもあんたの力なのかね。…なぁ、その力で俺の事も救ってくれないか。俺もあの噂を頼りに此処に来たんだ、知ってただろ。 俺は猟師だったんだ。毎日狩りをして売って暮らしていた訳だ。 だが、毎日必ず狩れる訳じゃない。良い獲物が見つかっても逃げられる事なんてしょっちゅうだ。運が悪けりゃ数日狩れない日だってある。俺は考えた訳だ、何かいい方法は無いかってな。手間なく獲物が獲れる確率を上げる方法。 答えは旅人が教えてくれたよ。うちの近辺じゃよく取れる雑草を使った痺れ薬だ。あれが薬になるなんて、俺は知らなかったよ。乾燥させたら適当な食用粉に混ぜて固めて団子にするだけで良いんだ。量もなにも考えなくていい、簡単だろ。乾燥した状態の草が口に入ることが大事なんだそうだ。 俺はそれを大量に作って狩場に撒いた。効果はすぐ出たよ。数年は食事に困らない程度の稼ぎを得たんだ。…暫く、あの近辺で動物を見なくなったがな。 そこまでは良かった。…問題はその後だ。俺の狩場の森で子供が行方不明になったんだ。最初は家出か何かだと思ったが、どうやらそうじゃない。消えた子供の母親がいろんな奴に聞いて回るもんだから俺も消えたときの状況を詳しく知れたんだ。 …被るんだよ、俺が痺れ薬を撒いた場所とさ。直感したね、子供はきっと痺れ薬を食べたんだ。あれは菓子の団子にも見えるからな。俺がせっせと獲物を漁っている間に、子供は落ちている団子を拾い食いしたんじゃないかな。…考えすぎじゃないんだよ。…見たんだよ、倒れている子供を抱えてどこかに消える人影を。最初は死んだ子供を森に埋めに来た貧しい家のやつかとも思ったが、子供の行方不明の話を聞いた途端はっとしたんだ。 やっちまった、って思ったよ。このまま役人に俺が森に撒いた痺れ薬の事がばれれば…俺は捕まるんだろうなぁ。俺はきっと子供を誘拐した変態と決めつけられて牢屋に入れられるんだろうよ。そういうやつが看守にどう扱われるか知ってるか。 …あいつ等、子供に対して罪を犯した奴には容赦がないからな。苦しめられて殺されて、自殺か何かとして処理されて終わりさ。 なぁ、俺を助けてくれよ。まだ、死にたくないんだよ。」

          03,ディーワ・クアエダムの秘薬

          03,ディーワ・クアエダムの秘薬

          02,城に集まるスレイシープ

          シリーズもの2曲目です。 ゲームシナリオ中の汎用会話BGMみたいなイメージで書きました。抑揚は少なめに、けれど雰囲気は出るように…なってますよね、たぶん。 以下この曲の物語。 「失礼します。 …突然すみません、どうしてもお礼が言いたくて。 こんな私を受け入れて下さっただけでなく、着替えや食事まで頂いてしまって、どうお礼をすれば良いのか…。 …はい、お陰様で…大分体調はよくなりました。使用人の方もよくして下さって、、本当にありがとうございます。外は凍える寒さでしたけれど、お城の中はとても暖かいですね。すみません、お渡しできるものは何もないので…もしお手伝いできる事があれば是非仰ってください。 はい、はい、…私の話…ですか。 つまらない話しかもしれませんが、よろしいでしょうか。…わかりました。 貴方様のおっしゃる通り、私も噂に縋って此処に来たのです。 私には家族がいます。娘と息子が一人ずつと、そして夫。決して裕福ではなかったですが、とても幸せな生活を送っていました。 写真もあるんですよ、、これです。…はい、そのぬいぐるみは息子のお気に入りで…よく娘と取り合いになって喧嘩をしていました。 今は…私は一人で暮らしています。娘は夫と共に…息子は、少し前から行方が分からないのです。 息子は森で遊ぶのが大好きで…その日も遊びに行きたがる息子を私は森へ連れて行きました。…目を離した隙に…姿が見えなくなって…。 夫は私を疑っています。私が息子を人買いに売ったんじゃないかって…。愛する息子を売るなんて…そんなことするはずないじゃないですか。でも夫は信じてくれなくて…。夫から見れば口うるさく節約を押し付ける私がとんでもない守銭奴に見えていたのかもしれません。 私がどんなに家族を愛しても、その愛は伝わっていなかったのです。 私…考えてしまうんです。…息子にも私の愛は伝わっていなかったんじゃないかって。だから息子は私の元を離れて戻って来ないんじゃないか、私は良き母ではなかったのではないか…。私…母として尽くしてきたつもりだったんです。でも…もう自信が持てなくなってしまって。 …私がここに来たのは、息子を探すためです。 息子に、もう一度会って…また昔みたいに暮らしたいんです。 私なりに息子の事を探し続けました。…でも、見つからなかったんです。 森を探しました。街を探しました。旅人や商人に話を聞きました。役人に依頼も出しました。けれど見つかりませんでした。 …ここまで良くして頂いて、更にお願いをするなんて…私は本当にどうしようもない母です。それでも、どうか力をお貸し頂けないでしょうか。」

          02,城に集まるスレイシープ

          02,城に集まるスレイシープ

          01,トラーディティオの城

          シリーズもの1曲目です。 物語のプロローグ風の曲です。空想や物語上で語られる城に思いを馳せるイメージで書いています。行ったことも見た事もないからこそ、混じり気の無い綺麗なイメージが強くなるような気がします。…時には見ない知らないからこそ、魅力を感じるものってありますよね。 以下この曲の物語。 「世界のどの国、地域にも属さない場所。それは世界の果て、雪の降り積もる山の頂き。そこにそびえ立つ城がある。誰が言い出したか…そこはあらゆるすべてを赦し、悩みの一因を断ち切り、願いを叶える強い力を授けてくれるという。たどり着く事自体が困難な地にあるその城は、必要な者へは静かに道を示す。心の底で救いを求める彼らの為に、今日も持成す準備をしよう。」

          01,トラーディティオの城

          01,トラーディティオの城

          11,彼岸のイニティウム

          シリーズもの11曲目です。 エンディング風のつもりです。 『研究者とメランコリー』のアレンジになります。 テンポ遅めに感情の抑揚も少なく淡々とした始まりから、急に『研究者とメランコリー』のメロディが入ってくる所がお気に入りです。 元々はシリーズ全曲のお気に入りメロディ全て詰め込んだエンディング風の曲を考えていたのですが、収拾がつかなくなったのでやめました。 以下この曲の物語。 「拾ったボロボロの本は辛うじて数ページだけ読むことが出来た。長い間波に打たれ、この海岸に打ち上げられた後も日光に焼かれたであろうその本は乾燥してページを捲る度にばらばらと崩れる。脱落し散らばったページも可能な限り集めて鞄にしまった。 この駅で降りたのは気まぐれだったのだけれど、こんな再会を果たすとは思いもしなかった。掠れて読めないページは可能な限り復元を試みてみよう。海を漂った割に妙に状態が良いのは製本に使われた素材のお陰か、はたまた書き手の思いが強く乗っていた所為か。 かつて父と呼び慕ってくれた彼を思いながら、僕は海岸を後にした。」

          11,彼岸のイニティウム

          11,彼岸のイニティウム

          10,海岸に流れ着くメモリア

          シリーズもの10曲目です。 『花と記憶の林道』より『猟奇的メモリア』のアレンジです。 といっても、フレーズを流用しただけですが…。 何にも左右されない波に流されて揺蕩うイメージで書きました。今はただ波に運ばれて、どこかに流れ着くその日まで身を任せて眠りたい…。眠い。 以下この曲の物語。 「書き手を失った1冊のノートが海の中をただ流されていた。かつて書き手の居た場所は今は海の底で瓦礫の山。旅の途中で拾った貝と藻類を栞代わりに本は何処までも流される。やがて本は海岸にたどり着く。小さな駅がある、とある海岸に。」

          10,海岸に流れ着くメモリア

          10,海岸に流れ着くメモリア