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06,忘れ去られたフラグメント

何かに、迷った。
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シリーズもの6曲目です。
怪しげなピアノから始まり、幼さと寂しさを感じるメロディへつながっていく曲です。断片化した記憶、または記録です。微かに残っている小さい頃の思い出が、過去に己が書いた手紙や日記を見つけて急に鮮明化していく…そんなイメージで書いています。
以下この曲の物語。
「05-25
興奮が収まらない。想像していたよりも大きな収穫を地底湖のそこで見つけてしまった。裁定機が世界の構造の解明を決めた理由がこれではっきりした。私もそれを考えていなかったわけではないが、こんな事実を突きつけられて落ち着いていられるわけがない。こんな状態ではまともに報告書もかけない。一度落ち着こう、この雑記はその為のものでもあるのだから。
落ち着く為にも、報告書にまとめる前に見つけた事実を此処に書き出してみよう。
・湖底にたどり着くまでに50ほどかかった。計ったから間違いない。
・湖底は完全に平らに均されており、明らかな人工物で覆われていた。
・祭壇の跡地を複数見つけた。
・石碑を7つ見つけた。書かれている内容は全て同じだった。
・私たちによく似た遺体を見つけた。
・磁気テープを見つけた。
・日記を見つけた。
この日記が今回見つけたものの中で一番大きな収穫だ。水に浸かっていたにも関わらず崩れることなく、読むことが可能な日記。間違いない。あの字を見間違えるはずがない。父の日記だった。内容も父から聞かされた事のある過去の話ばかりだ。そして問題なのは、日記に書かれた私たちの知らない過去の話だ。この世界の成り立ちと、父の思いと、御伽噺の様な記録の数々と。
それが御伽噺ではない事を私は知っている。父がそういう存在だと、最初から私たちは知っているじゃないか。
だめだ、文章がまとまらない。見つけた事実がいくつも抜け落ちている。
落ち着く為に一度眠ることにする。この分厚い日記は私たちにとって大きな発見であり、絶対に父に見つけたことを知られてはならない。」

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