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天風の剣

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右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 …
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#創作大賞2023

【創作長編小説】天風の剣 第2話

【創作長編小説】天風の剣 第2話

第一章 運命の旅
― 第2話 旅の始まり ―

 冷たい風が吹きすさぶ。荒涼とした大地には、風の道を遮るものがなかった。
 流れる黒い雲のすき間から、時折月が顔を覗かせる。月は、果てしない荒野の中にある、男と少年――キアランとルーイ――を静かに照らしていた。
 キアランは、持っていたテントを設置していた。長年使いこまれ、すっかりくたびれてはいたが、持ち主の最低限の安全は守るという機能は果たしている

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